膵臓
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29 巻, 2 号
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ガイドライン
特集 急性膵炎の診断と治療:新しい動向
  • 竹山 宜典
    2014 年 29 巻 2 号 p. 149-150
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
  • 菊田 和宏, 正宗 淳, 濱田 晋, 下瀬川 徹
    2014 年 29 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の予後はその重症度や病態により異なっており,致命率を改善するためには,正確な重症度診断と予後予測を行う必要がある.今回,本邦の全国調査で得られたデータを用いて,年齢,発症48時間以内のCT所見(膵外炎症進展度,膵造影不良域),発症72時間以内の臓器不全(循環不全・ショック,腎不全,呼吸不全・呼吸困難のいずれか)の有無,膵炎合併症(敗血症,膵膿瘍,腹腔膿瘍)の有無を評価し,膵炎関連死との相関を検討した.単変量解析では,これらのいずれもが急性膵炎の予後と相関していたが,ロジスティック回帰モデルを用いて多変量解析を行ったところ,年齢,発症48時間以内のCTにおける膵造影不良域の存在,発症72時間以内の臓器不全の存在が,膵炎関連死の危険因子として抽出された.急性膵炎発症早期に,これらの因子を評価することが急性膵炎の重症度診断,予後予測に有用であることが示唆された.
  • 真弓 俊彦, 遠藤 武尊, 染谷 一貴, 神谷 行宣, 中野 和歌子, 大坪 広樹, 高間 辰雄, 城戸 貴志, 亀崎 文彦
    2014 年 29 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の診断や重症度判定は厚生労働省(厚労省)の基準が使用されているが,近年,尿中trypsinogen-2や血中procalcitonin(PCT)が,急性膵炎の診断に有用であることが報告され,また,重症例では,高値であることが示されている.trypsinogen-2は保険収載されたが,厚労省が提示した保険点数が低すぎて採算が合わず,市販に至っていない.trypsinogen-2は尿一般テストテープ検査と同様に容易に判定でき,急性膵炎,特に重症膵炎を一般クリニックなどでも早期に診断/除外可能である.重症膵炎の早期診断・治療,予後改善の観点から,trypsinogen-2の保険点数の再評価と早期の市販化が切に望まれる.また,PCTは感染時の保険適応となっているが,急性膵炎での保険適応も視野に入れた検討が必要である.
  • 飯澤 祐介, 安積 良紀, 伊佐地 秀司
    2014 年 29 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎85例(軽症44例,重症41例)を対象とし,医療資源の投入量を,重症度や重症と判定された理由(予後因子のみ:S群,CT Gradeのみ:C群,予後因子+CT Grade:SC群)別に検討した.死亡率は軽症0%,重症7.3%と両群で有意差はなかった.重症例では入院日数,ICU滞在日数は有意に延長し,医療費も有意に高かった.重症例では人工呼吸,CHDF,経皮的ドレナージを要した例が有意に多かった.重症41例を判定理由別にみると,S群7例,C群16例,SC群18例であった.医療量でみると,C群,SC群はS群と比較して多い傾向にあった.治療内容の比較では,人工呼吸,CHDF,動注療法,経皮的腹腔ドレナージを要した症例は全てC群,SC群であった.医療資源投入量からみると,集中治療を要する症例やCT Gradeを含めた基準で重症と判定された症例は,超重症として扱う必要性が示唆された.
  • 阪上 順一, 片岡 慶正, 保田 宏明, 十亀 義生, 加藤 隆介, 土井 俊文, 伊藤 義人
    2014 年 29 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎が疑われた場合にまず取得すべき画像情報は腹部超音波である.パルスドプラ法による血流解析の結果,重症急性膵炎では固有肝動脈流速が増加し,上腸間膜動脈のpulsatitity indexが低下する.造影超音波検査では重症急性膵炎では膵実質の灌流が低下している.また,膵虚血部位の判定では,perflubutaneを用いた血流出現時間に着目したparametric imageが視認性に優れた超音波画像であり,subtraction color map(CT画像)などをリファレンスとすることで,さらに精度向上が期待できる.重症急性膵炎の初期に末梢血管抵抗上昇や腸管循環時間延長を伴わない腸管血流量の低下が起こる可能性がある.
  • 辻 喜久, 児玉 裕三, 吉田 司, 千葉 勉
    2014 年 29 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    1993年のアトランタ基準では"重症急性膵炎"は,膵壊死か多臓器不全をきたした場合と定義された.一方,近年,欧米のガイドラインが改訂され,膵壊死合併膵炎は中等度重症,膵壊死の合併にかかわらず48時間以上継続する臓器不全を有した場合を重症急性膵炎とした.発症早期の膵壊死は,多臓器不全を予測するための予後因子の一つということになり,初療時に壊死診断・予測を行うことの重要性は決して損なわれてはいない.こうした観点から,本稿では,重症急性膵炎における初期病態,とくに発症早期の膵壊死の形成と,その背景としての循環不全・血管内皮障害の関係について,新しいModalityであるPerfusion CTで得られた知見を交えながら概説する.
  • 武田 和憲
    2014 年 29 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    1996年に急性壊死性膵炎に対する動注療法の有用性が報告されて以来,randomized controlled trialも含めて実験的または臨床的に多数のエビデンスが集積されている.急性壊死性膵炎においては,蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬の膵局所動注療法により壊死への進展抑制,感染予防の効果,救命率の改善が期待される.膵局所動注療法は発症早期(72時間以内)において,造影CT所見で明らかな膵の造影不良すなわち膵虚血または壊死を示す重症膵炎が適応となる.
  • 亀井 敬子, 竹山 宜典
    2014 年 29 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎は,死亡率が20%に達する重篤な疾患で,感染合併の有無がその生死に大きく関わる.軽症膵炎では予防的抗菌薬は必要なく,重症急性膵炎での予防的抗菌薬投与はImipenemなどのカルバペネム系抗菌薬が推奨されているが,その開始時期,投与期間などは各施設で統一されておらず,抗菌薬の過剰投与により新たに多剤耐性菌や真菌感染を惹起し,治療に難渋するケースもでてきている.現在検討されている抗菌薬使用指針案では,予防的使用において,その投与は最小限とすることを前提とし,最大でも5日間で投与終了,全身投与よりも動注による局所投与を推奨している.予防的使用と治療的使用を使い分け,適正な抗菌薬を使用することにより膵炎の感染合併による重症化の阻止が期待できる.また,経腸栄養などを併用した,至適プロトコールの確立が重要であるが,この課題における今後の進展が切望される.
  • 横江 正道, 真弓 俊彦, 竹山 宜典
    2014 年 29 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎のおよそ10%の症例では感染合併例があり,そのうちの50%が予後不良になる.重症急性膵炎の二大合併症である早期の臓器障害と後期感染を合併する症例に対しては,その病態に基づいて適確に特殊療法を施行する必要があり,栄養補充法のみならず,Bacterial Translocation対策,感染対策としての経腸栄養が注目されている.急性膵炎に対する経腸栄養と経静脈的栄養に関するメタ分析では,統計学的有意差を持って,経腸栄養の方が,感染症発生率が低下することなどが報告されている.急性膵炎,特に重症急性膵炎の予後を左右するのが感染症である点からみれば,早期からの経腸栄養は極めて重要な診療行為であり,ほぼ必須の感染対策である.今回,われわれは全国のNST稼働施設にアンケート調査を行ったが,入院後何日目に経腸栄養を開始することが多いかという問いに対しては7日目と答える施設が34%と最多であった.経腸栄養に不慣れな医師へのNSTチームからのサポートがうまく機能すれば,さらなる急性膵炎の予後改善にも繋がる可能性があると考えられる.
  • 伊佐地 秀司, 種村 彰洋, 安積 良紀
    2014 年 29 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    感染性膵壊死に対する経皮的・内視鏡的ドレナージなどの進歩に加えて,経時的な造影CT所見の蓄積から,急性膵炎の形態分類の再検討が行われ,2012年に改訂アトランタ分類が発刊された.1992年のアトランタ分類の膵膿瘍という用語は廃止され,新たな概念としてwalled-off necrosis(WON:被包化壊死)が定義された.WONとは,「膵壊死巣は早期は固体状であるが,時間の経過につれて壊死巣が液状化し,液状化した周囲が肉芽性・線維性の皮膜で覆われるようになったものであり,発症後4週以降にみられる合併症で,時期により固体状と液体状のものの比率は異なる.」とされている.新分類の特徴は,膵・膵周囲の貯留を,液体貯留と壊死性貯留に区別したところにあり,さらに壊死性貯留を,発症後4週以内の急性壊死性貯留(ANC)と4週以降のWONに分類している.なお,感染性(膵)壊死とは,ANCあるいはWONに細菌・真菌の感染が加わったものを指す.
  • 向井 俊太郎, 糸井 隆夫, 安田 一朗, 佐田 尚宏, 森安 史典
    2014 年 29 巻 2 号 p. 210-222
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    急性膵炎後のpancreatic pseudocyst(PPC)/walled-off necrosis(WON)は代表的な晩期合併症であり,感染等の有症状例はドレナージが必要となる.EUSガイド下ドレナージによる経消化管的内視鏡治療が普及しPPCに対して良好な治療成績が得られている.しかし,壊死組織を含むWONに関しては内視鏡的ネクロセクトミーを含めた侵襲的追加治療が必要となる症例も多い.専用の大口径金属ステントを用いる方法や追加内視鏡ドレナージテクニック,経皮的アプローチを追加するhybrid approach法が報告され,その進歩は著しく,ほとんどのWONに関しては内視鏡治療で治癒可能となってきた.しかし内視鏡治療に固執することなく,外科手術も考慮する広い視野でWONを治療していく姿勢が必要である.
  • 佐田 尚宏
    2014 年 29 巻 2 号 p. 223-228
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    2012年Atlanta分類が改訂され,膵炎の局所合併症としてみられる限局した液状物質貯留は,壊死のあり・なし,発症からの経過時間によりAcute peripancreatic fluid collection(APFC),Acute necrotic collection(ANC),Pancreatic pseudocyst(PPC),Walled-off necrosis(WON)の4カテゴリーに分類された.治療法(intervention)について,今後はドレナージとネクロセクトミーを明確に区別する必要があり,ネクロセクトミーの適応は感染を合併したWONにほぼ限定される.感染を合併したWONに対する外科的アプローチとして,2000年以降従来の大開腹によるネクロセクトミー以外に経皮的ネクロセクトミー,経腹腔鏡的ネクロセクトミー,経後腹膜ネクロセクトミーが報告されている.これら低侵襲interventionの位置づけについて今後十分に検討し,適応・手技についてコンセンサスを形成する必要がある.
原著
  • 松田 正道, 渡邊 五朗, 橋本 雅司, 佐々木 一成
    2014 年 29 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    【はじめに】JASPAC-01試験の結果をうけ,現在本邦では膵癌の術後補助化学療法としてはS-1単独療法を行うことが推奨されている.当科では2005年よりadjuvantとしてS-1の投与を行ってきたが,今回はその有効性について無再発生存率(RFS),生存期間(OS)をretrospectiveに解析した.【対象と方法】投与後5年以上経過した浸潤性膵管癌切除19例を対象とした.2週連続・1週休薬を1コースとし,24週(8コース)以上の投与を目標とした.【結果】全19例における2年/5年RFSは42.1/26.3%であった.また2年/5年OSは63.1/36.8%,生存期間中央値(MST)は30.1ヶ月であった.【考察】JASPAC-01では4週投与・2週休薬が選択されていたが,2週投与・1週休薬でもほぼ同等の治療完遂率・有効性・毒性であり,実臨床においてもJASPAC-01を支持する結果が得られたと考えられた.
症例報告
  • 佐々木 一樹, 高橋 秀典, 秋田 裕史, 大東 弘明, 杉村 啓二郎, 三吉 範克, 本告 正明, 後藤 邦仁, 岸 健太郎, 丸橋 繁, ...
    2014 年 29 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    60代女性.背部痛を主訴に受診し,精査にて膵体尾部癌(径15mm,cT4N0M0 cStage IVa)と診断された.術前化学放射線療法(gemcitabine 1000mg/m2,50Gy/25Fr)施行後,膵体尾部切除術,及び,術後肝潅流化学療法(LPC:gemcitabine 600mg/body×4回)を施行した.病理組織診断ではpCRであった.膵切除後30ヶ月目に右肺S8に22mm大の腫瘤影を認め,膵癌肺転移(Adenocarcinoma)と診断された.全身検索にて局所・肝などに再発を認めなかったので,胸腔鏡補助下右肺下葉部分切除を施行した(膵切除後33ヶ月).しかし肺切除後5ヶ月で縦隔リンパ節再発・胸膜播種を合併し,膵切除後47ヶ月,肺切除後14ヶ月で原病死した.進行膵癌は潜在的systemic diseaseであることを踏まえた治療戦略が必要である.
  • 岡本 雄貴, 藤井 雅邦, 金藤 光博, 齋藤 玄哲, 山本 久美子, 伊藤 守, 石山 修平, 藤原 明子, 吉岡 正雄, 塩出 純二
    2014 年 29 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代,男性.アルコール常用者.主訴は腹痛.腹部CT検査で膵体部に約5mm大の膵石があり,この部位から横隔膜まで連続する膵嚢胞を認めた.慢性膵炎急性増悪による膵仮性嚢胞を疑い,内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)を施行し,膵体部から造影剤の漏出を認めた.内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)チューブを留置し,泥状の排液を認めた.チューブ留置後第7日目に膵管ステントで内瘻化した.約2ヶ月後に嚢胞は消失,膵管ステントを抜去し,経過観察中である.膵管と交通を有する膵仮性嚢胞に対しては,膵管ステント留置は有効な治療法である.
  • 石田 潤, 松本 逸平, 新関 亮, 浅利 貞毅, 後藤 直大, 田中 正樹, 山下 博成, 岡崎 太郎, 武部 敦志, 田中 基文, 蔵満 ...
    2014 年 29 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.1999年,右腎癌に対して右腎摘出術,肺転移に対してインターフェロン療法を施行した.2003年,2004年にそれぞれ脳転移に対して開頭腫瘍切除術及びガンマナイフ治療を施行した.2008年,孤立性膵転移を指摘され膵中央切除術を施行した.2012年5月,CTで尾側残膵に多血性腫瘤を指摘され腎癌残膵転移と診断した.他に遠隔転移を認めず,同年7月脾動静脈脾臓温存尾側残膵摘出術を施行した.病理組織診断にて腎淡明細胞癌の膵転移と確定診断した.腎癌膵転移は病変が多発することが少なくないが,異時性残膵転移切除報告例は本邦で3例のみである.我々は腎癌膵転移に対して2度の縮小手術を行い良好に経過している1例を経験した.腎癌膵転移では切除により良好な予後が期待でき,根治性とQOLに配慮した術式を選択すべきである.2度の縮小手術により残膵全摘を回避し得た示唆に富む腎癌膵転移の1例と考え報告する.
  • 奥村 晋也, 吉村 玄浩, 藤田 久美
    2014 年 29 巻 2 号 p. 253-262
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性で,直腸癌(Ra)に対して腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術(D3郭清)を行った.病理組織学的検査では乳頭腺癌,se,ly0,v2,N0,P0,H0,M0,Stage IIであった.直腸癌術後1年6か月後に右肺転移,2年9か月後に左副腎転移をきたし,それぞれ切除術を施行している.初回手術より4年8か月後にCTにて膵鉤部に3cm大の腫瘤を認め,転移性膵腫瘍が疑われた.他に転移を疑う所見は認めず,4年10か月時点で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には免疫染色でCK7(-),CK20(+)であり,直腸癌の膵転移と診断した.術後1年9か月が経過した現時点で再発を認めていない.直腸癌の膵転移は比較的まれであり,さらに外科的切除が可能である症例はまれと考えられるが,切除により予後の改善が期待できる症例も存在すると考えられるため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 加藤 新, 本部 卓也, 座喜味 盛哉, 知念 健司, 久保田 富秋, 新城 雅行, 菊地 馨, 村上 隆啓, 国島 文史
    2014 年 29 巻 2 号 p. 263-270
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    55歳男性.近医にて膵腫瘤を指摘され紹介となった.CTでは膵体部に被膜様構造を有する径5cmの境界明瞭な腫瘤を認めた.MRI T2強調像で腫瘤の一部は高・低信号がモザイク状に混在し,新旧の出血壊死が疑われた.超音波内視鏡では腫瘤内部に嚢胞変性を認め,辺縁に充実成分が残存していた.超音波内視鏡下穿刺吸引組織診を施行.偽乳頭状間質を認め,solid-pseudopapillary neoplasm(以下SPN)と術前診断し膵体尾部切除を行った.切除病理組織でも辺縁の腫瘍細胞集塊に偽乳頭状間質の痕跡を認め,Vimentin,CD10も陽性であり,SPNと最終診断した.SPNの男性例は稀であり,しばしば女性例と異なる画像所見を呈するため,他の膵悪性腫瘍との鑑別が問題となることも多い.SPNの術前診断における超音波内視鏡下穿刺吸引組織診の果たす役割は大きいものと考える.
  • 小林 裕幸, 野嵜 英樹, 清水 稔, 榊原 巧, 岡田 学, 梅田 晋一
    2014 年 29 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/21
    ジャーナル フリー
    退形成癌は浸潤性膵管癌の1組織型で比較的稀な疾患である.今回極めて稀な骨形成を伴った破骨細胞型退形成性膵管癌を経験したので報告する.症例は61歳男性で吐血のため外来を受診した.腹部CT検査にて膵尾部に7×5cm大の充実性腫瘍を認め,腫瘍の辺縁ならびに内部に石灰化も認めた.MRI検査にて腫瘍内部に出血,壊死を認めた.膵腫瘍の診断にて手術を施行した.膵尾部に非常に固い腫瘍を触知し,膵体尾部切除,脾臓摘出術を施行した.病理組織検査では,腫瘍は核異型が強い未分化な細胞で構成されており管状構造はほとんど見られなかった.また破骨細胞類似の巨細胞を散見し,成熟した骨組織の形成も認めた.免疫組織化学検査では腫瘍の広い範囲でvimentinが陽性であった.骨形成を伴った破骨細胞型退形成性膵管癌と診断した.塩酸ゲムシタビン,S-1による術後補助化学療法を施行した.
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