膵臓
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29 巻, 5 号
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コンセンサス
  • 厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究班
    2014 年 29 巻 5 号 p. 775-818
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2015/05/08
    ジャーナル フリー
    2009年厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究班(以下,難治性膵疾患班会議)において「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン2009」が作成され,その後の治療法の進歩に対応すべく2011~2013年難治性膵疾患班会議で「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン改訂」(分担研究者:糸井隆夫)が計画された.一方,近年実施頻度が増加している「感染性膵壊死に対する低侵襲治療について指針作成」が,難治性膵疾患班会議において同時に計画された(分担研究者:佐田尚宏).この2研究は当初それぞれワーキンググループを組織して別々に進行していたが,2012年に発表された改訂アトランタ分類で従来頻用されていた「膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst)」が壊死を含まない限定した定義で使用される用語になったこと,「感染性膵壊死」で表現されていた病態に対する新たな用語として「感染性被包化壊死(infected walled-off necrosis)」が定義されたこと,「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン2009」が想定していた対象の多くは「膵仮性嚢胞」ではなく「感染性被包化壊死」であることから,両ワーキンググループは合同で「膵仮性嚢胞の内視鏡治療ガイドライン2009」の発展的改訂版として,本コンセンサス「膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス」を作成した.この研究は,平成25年度において厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業 難治性膵疾患に関する調査研究班 研究代表者:下瀬川徹)を受け,実施した研究の成果である.
原著
  • ―術前悪性度評価における膵管像の役割―
    秋山 泰樹, 西原 一善, 肥川 和寛, 松永 浩明, 阿部 祐治, 中野 徹, 光山 昌珠
    2014 年 29 巻 5 号 p. 819-827
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    PNET(Pancreatic Neuroendocrine Tumor)を2010年WHO分類および2013年診療ガイドラインに沿ってGrade,予後を検討し,膵管像の変化についても検討した.男性14例,女性9例,平均年齢は63.4歳.平均観察期間は68ヶ月.G1 15例,G2 8例,TNM分類IA期,IB,IIA,IIB,IVが12,7,1,2,1例であった.G1 1例,G2 3例が再発し,G2で再発が多く(P=0.06),予後も悪い傾向であった(P=0.06).Stage別生存曲線では有意差を認めた(P=0.02).2cm以上の腫瘍は未満に比べ生存率が低い傾向があり(P=0.09),リンパ節転移例は有意に予後不良であった(P=0.01).膵管像に変化の見られる症例はセロトニン陽性腫瘍か悪性度の高いG2症例であり(P=0.03),膵管像に変化のある場合には悪性度が高い可能性が示唆された.
症例報告
  • 馬淵 正敏, 安田 一朗, 土井 晋平, 小澤 範高, 上村 真也, 岩下 拓司, 森脇 久隆
    2014 年 29 巻 5 号 p. 828-832
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,女性.生体腎移植後でミコフェノール酸モフェチルを含む複数の免疫抑制剤を内服していた.流行性角結膜炎を発症し,眼症状が残存したまま1ヶ月が経過したのち急性膵炎を発症した.絶食のみでは膵炎症状が治癒しなかったため,ミコフェノール酸モフェチルを中止したところ眼症状,膵炎症状の軽快を得たため,ミコフェノール酸モフェチルによるアデノウィルス感染の遷延が膵炎に関与していたと考えられた.免疫不全患者におけるアデノウィルスによる急性膵炎は稀であるが治療に難渋することがあるため貴重な症例と考えられた.
  • 藤野 泰宏, 千堂 宏義, 大原 忠敬, 杉本 武巳, 大山 正人, 長谷川 寛, 安田 貴志, 押切 太郎, 富永 正寛, 梶本 和義
    2014 年 29 巻 5 号 p. 833-839
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    子宮頸部小細胞癌由来の転移性膵癌の1切除例を経験したので報告する.症例は40歳代女性.子宮頸癌フォロー中にCTにて膵腫瘍を指摘された.血液生化学検査では,Pro GRP 54.8 pg/mlと上昇を認めた.MRIでは膵頭部にT1でlow intensity, T2では淡いhigh intensityを示す2.5 cm大の腫瘤がみられ,PET-CTでも同部位に軽度の集積を認めた.転移性膵腫瘍ないしは膵管癌を疑い開腹術を施行した.膵頭部に弾性硬の腫瘤を認め,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行.子宮頸癌術前には膵病変を認めずに急速に出現し膵切後は全身に再発を来した臨床経過や,両病変の病理組織学的類似性などから,子宮頸癌膵転移と診断した.転移性膵腫瘍は稀な疾患で,原発巣としては腎癌が最も多い.手術適応については,原疾患の治療指針をもとに転移巣切除が予後延長に寄与するかを慎重に検討する必要がある.
  • 岡田 和幸, 八木 真太郎, 木下 裕光, 阪本 裕亮, 山本 健人, 姚 思遠, 井ノ口 健太, 貝原 聡, 細谷 亮
    2014 年 29 巻 5 号 p. 840-844
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.2012年1月の検診でCA19-9の軽度高値(82U/ml)を指摘され,同年4月にさらに上昇を認めたため当院紹介となった.腹部造影CTで空腸起始部に造影効果の乏しい腫瘤性病変を認め,腹部MRIで同部位にT1強調像で大部分が低信号,T2強調像で低信号等信号が混在し,拡散強調画像で高信号を示す腫瘤性病変を認めた.鑑別診断の上位に異所性膵の膵癌を考え,2012年5月に開腹空腸部分切除術を施行した.開腹所見は空腸起始部の壁在性に4cm大の白色弾性硬の腫瘤を認めた.術後病理組織学的検査では異所性膵に発生した腺癌であった.術後にCA19-9値は正常化した.同年7月よりadjuvantとしてgemcitabineを6ヶ月施行.翌年3月に多発肝転移で再発.その後TS-1内服を継続している.異所性膵由来の膵癌は極めて稀であり報告例も少ない.また,本邦にて術前に診断されたという報告はない.術前MRIが診断に有用であった異所性膵の膵癌の1切除例を経験したので報告する.
  • 本定 三季, 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 石井 健太郎, 栗原 俊夫, 辻 修二郎, 土屋 貴愛, 池内 信人, 梅田 純子, ...
    2014 年 29 巻 5 号 p. 845-851
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は40歳代女性.他院にて膵炎症状を契機に膵尾部に嚢胞性病変を指摘され,当院に紹介された.CT,MRI,EUSにて膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)が疑われ精査予定となっていたが,その後来院せず約10ヶ月後に再診された.このとき,腫瘍は壁在結節の増大がCT,MRIで認められたが嚢胞径は縮小傾向であった.EUSで腫瘍内部は低エコーと高エコーが混在する充実性腫瘍を示唆する所見を呈し,経静脈性超音波造影剤ソナゾイド®を用いた造影超音波内視鏡検査をさらに施行したところ,バブルの混入により壁在結節と思われる腫瘍成分とその他の壊死成分や粘液成分とを明確に区別し評価することができた.膵体尾部切除術を施行し膵粘液性嚢胞腺癌と最終診断した.本症例は経時的な壁在結節の増大を認めたものの嚢胞径は縮小したという興味深い変化を示した.
  • 水谷 泰之, 田中 浩敬, 片山 雅貴, 石川 英樹
    2014 年 29 巻 5 号 p. 852-862
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/11/17
    ジャーナル フリー
    患者は61歳,女性.主訴:右上腹部痛.生活歴:飲酒歴なし.2013年5月,十二指腸潰瘍・嘔吐症状で入院し,PPI投与し症状軽快したため翌月退院された.退院後に除菌を行った.同年10月,上記主訴で再入院された.上部消化管内視鏡検査・UGIで十二指腸球部から下行脚は広範に狭窄しており,内視鏡は通過しなかった.腹部造影CTで,十二指腸の全周性壁肥厚・groove領域に遷延性に造影される低吸収域を認めた.内視鏡的膵管造影で主膵管,副膵管に異常を認めなかったが,症状・画像所見からgroove pancreatitisを第一に疑った.内科的治療に抵抗性であることから幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理結果は十二指腸潰瘍,groove pancreatitisであり,偶発的に膵内分泌腫瘍を含んでいた.十二指腸潰瘍が原因と考えたgroove pancreatitisの一例を経験したため報告する.
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