膵臓
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31 巻 , 1 号
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会長講演 2015年膵臓学会
特集 膵疾患の分子病態
  • 清水 京子, 古川 徹
    2016 年 31 巻 1 号 p. 9
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
  • 谷内田 真一, 髙井 英里奈
    2016 年 31 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    膵臓がんは「がんの王様」に君臨している.膵臓がんは他のがん種と比較し特異的ながん腫で,4つの遺伝子異常のみ(KRASCDKN2A/p16TP53SMAD4/DPC4)が高頻度に認められる.その一方で,他のがん種と同様に低頻度ながらも治療標的となりうる遺伝子異常も有している.例えば,DNA損傷・修復パスウェイの遺伝子変異(BRCA1BRCA2PALB2ATMなど)である.これらの遺伝子異常を捉えるために,手術や生検検体を用いたClinical sequencingが行なわれている.しかし,がんにはHeterogeneityがあり,一ヶ所だけの生検材料だけでは,がんの全体像を把握できない.さらに,がんが生検困難な部位に存在する患者や全身状態の悪い患者には生検は躊躇われる.低侵襲かつ複数回の検査が可能で,その時々にドミナントながんクローンを検出する技術が開発されつつある.“Liquid clinical sequencing”である.血漿から遊離DNAを抽出して,治療標的となる遺伝子異常を探索する.未だ発展途上の技術ではあるが,今後の“Precision Medicine”には必要不可欠な検査法といえる.
  • 眞嶋 浩聡, 大西 洋英
    2016 年 31 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    急性膵炎はトリプシンの異所性活性化が中心的な役割を果たすと考えられてきたが,NF-κBの活性化,オートファジー不全,酸化ストレス,小胞体ストレス,細胞内カルシウムの異常などの多くの異常が同時に進行することが明らかとなってきた.これらにも進行の序列はあるはずだが,未だ明らかにされておらず,急性膵炎の発症のメカニズムの詳細は不明のままである.膵酵素の調節性外分泌は細胞内カルシウムによって制御されている.アセチルコリンやコレシストキニンの分泌刺激が基底膜側の受容体から入ると頂端側にカルシウムスパイクが生じて開口放出が起こる.過剰な分泌刺激などを加えて膵炎を発症させると細胞内全体に異常なカルシウム濃度の上昇がみられて遷延する.その異常な上昇をカルシウム結合蛋白やキレート剤,カルシウムチャンネルの阻害剤などを用いて制御すると膵炎発症が抑制されることが明らかになってきた.本項ではカルシウムシグナルに焦点をあてて膵炎との関係を概説する.
  • 秋元 悠, 能祖 一裕, 加藤 博也, 宮原 孝治, 水川 翔, 矢部 俊太郎, 内田 大輔, 關 博之, 友田 健, 松本 和幸, 山本 ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    糖鎖は,主として細胞表面に存在し細胞接着や情報伝達に関与している.癌に関しては,浸潤,転移の際に構造が変貌することが知られている.我々は,過去に膵癌,肝癌においてフコシル化多分枝糖鎖の高発現が診断や予後予測に有用であることを報告した.膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)は,ガイドラインの絶対的手術適応にて切除しても,癌でない症例が約3~4割含まれている.膵切除のリスクを考えると術前診断能は十分とは言えず,新たなバイオマーカーの開発が求められている.我々はIPMNの悪性度診断における網羅的糖鎖解析の有用性を検討し,invasive IPMNでフコシル化多分枝糖鎖の発現が有意に高いことを報告した.興味深いことに,最も診断能が高かったm/z 3195糖鎖は,過去に我々が膵管癌の診断や予後との関連を示した糖鎖と同一であった.フコシル化多分枝糖鎖の高発現は,IPMNの悪性度診断に有用である可能性が示唆された.
  • 高橋 賢治, 北野 陽平, 牧野 雄一, 羽田 勝計
    2016 年 31 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    近年,長鎖の機能性RNAであるlong non-coding RNA(lncRNA)が,癌を含めた疾患の病態成立に寄与する事が明らかとなっている.また,lncRNAの中には細胞外小胞(extracellular vesicle;EV)によって細胞間輸送されるものがあり,伝達先の細胞においてシグナルや機能に影響を与える事が分かっている.これらlncRNAとEVの膵発癌,進展における機能解析はほとんどなされていないのが現状であるが,いくつかのlncRNAが膵癌浸潤,転移に重要なプロセスであるepithelial-mesenchymal transition(EMT)を制御する事が示唆されている.膵癌におけるlncRNAの核酸本体としてのエピジェネティックな制御機構及び,EVを介した情報伝達機構を解明する事が,新たな膵癌診断,治療法の開発につながる可能性がある.
  • 高野 重紹, Basil BAKIR, Koushik K DAS, 西田 孝宏, 吉富 秀幸, 宮崎 勝, Maximilian REIC ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    膵癌克服には,高い浸潤転移能を有するその生物学的特徴を解明し,臨床応用することが肝要である.膵臓の発生・再生・早期癌化で共通する新規癌関連因子として同定されたPrrx1の2つのisoform(Prrx1a,Prrx1b)の膵癌進展形式への関与,さらにisoformをtargetとした新規分子標的治療の可能性を模索した.Prrx1b発現は原発巣細胞で最も高く,切除標本では癌浸潤の先進部や間葉系細胞の核に強く発現しており,過剰発現細胞では間葉系細胞へと変化し高い浸潤能を獲得した.一方,Prrx1a発現は肝転移巣細胞に強く発現し,原発巣では主に上皮性管状腺管細胞に発現していた.EMTを誘導するPrrx1b下流因子であるHgfを中和抗体ficlatuzumabで阻害するとin vitroで浸潤を抑制,in vivoではgemcitabineとのcombinationにより肝転移数を減少させた.Prrx1 isoformは膵癌浸潤転移メカニズムに関与し,有望な分子標的治療薬となり得ると思われた.
  • 今中 応亘, 大村谷 昌樹
    2016 年 31 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎発症過程におけるアポトーシスとネクロプトーシスの役割を解析する目的で,マウス膵分泌性トリプシンインヒビターSpink3遺伝子のプロモーター直下にヒトSPINK1遺伝子を置換し,慢性膵炎モデルマウスを作製した.さらに,このマウスから小胞体ストレスによるアポトーシス誘導に関与する遺伝子やネクロプトーシス実行因子を欠損した二重変異マウスを作製し,膵組織の病態変化を解析した.その結果,アポトーシスは慢性膵炎発症を抑制的に,ネクロプトーシスは病態の進行と炎症の重篤化に促進的に作用していることが示された.
  • 中野 絵里子, 正宗 淳, 新堀 哲也, 粂 潔, 青木 洋子, 下瀬川 徹
    2016 年 31 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    1996年に遺伝性膵炎の疾患関連遺伝子としてカチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子変異が同定されて以降,いくつかの膵炎関連遺伝子が報告されてきた.しかし,いまだ原因遺伝子が明らかでない遺伝性膵炎家系や,若年発症の特発性膵炎患者が存在する.近年,様々な疾患で遺伝的背景の検索が次世代シークエンサーを用いて行われるようになりつつある.従来の遺伝子変異解析法と比較し,次世代シークエンサーは大量のゲノム情報を高精度かつ安価に解析することが可能である.我々は,PRSS1遺伝子などの既知の膵炎関連遺伝子異常及び,小胞体ストレスなど膵炎との関連が示唆される69の遺伝子について,Haloplexを用いたターゲットリシークエンスにより網羅的解析を行っている.膵炎発症に関連する新たな遺伝背景が解明されれば,その病態解明のみならず新しい治療ターゲットの同定につながることが期待される.
  • 古川 徹, 髙城 克暢, 大村谷 昌樹
    2016 年 31 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    本稿では膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の臨床病理学的徴候,遺伝子異常,及び遺伝子改変マウスモデル(GEMM)についての現時点での知見を解説する.IPMNは粘液を入れた膵管拡張を主徴とする嚢胞性腫瘍で,硬く浸潤性の腫瘍を作る膵管癌とは異なる特徴を有する.一方で,IPMNは膵管癌の前駆病変に相当することも知られている.IPMNでは刺激性G蛋白αサブユニットをエンコードするGNASおよびKirsteinラット肉腫ウィルス癌遺伝子ホモログ産物をエンコードするKRASに高頻度の体細胞性変異を認める.我々は変異GNAS,変異KrasPtf1a-Cre依存的に膵臓において発現するGEMMを開発した.このモデルは拡張膵管内に乳頭状上皮増生をみる多発嚢胞性腫瘍を生じ,ヒトIPMNとよく類似していた.このモデルはIPMN発生進展の分子機序の解明と効果的な診療法開発に寄与するものと期待される.
  • 立石 敬介, 山本 恵介, 小池 和彦
    2016 年 31 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    エピゲノムとは,様々な細胞外環境に応答しつつ遺伝子の転写を調節している可逆的な発現制御状態の総称である.そのシステムはDNAメチル化修飾,ヒストン修飾,クロマチン構造変化などを担う数多くの酵素・分子群により複雑かつ巧妙に調節される.エピゲノム制御はゲノム変異のような塩基配列自体の変化を介さないことが前提だが,次世代シークエンス解析は「エピゲノムを調節する分子自体のゲノム変異」という一見逆説的な興味深い知見をもたらした.さらに“がん細胞特有なエピゲノム”が俯瞰できるようになって悪性形質との関連が解析され,膵がんにおけるエピゲノムの役割も着実に解明されつつある.本章ではヒストン脱メチル化酵素KDM6Bと膵がんの浸潤能・腫瘍形成能の関連に焦点をあてる.今後は膵がん特異的なエピゲノム制御メカニズムを明らかにすることで,診断・治療における新たな標的化戦略を提示することが可能になると考えられる.
  • 島崎 猛夫, 山本 聡子, 石垣 靖人, 高田 尊信, 有沢 富康, 元雄 良治, 友杉 直久, 源 利成
    2016 年 31 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    膵癌難治性の根底には腫瘍細胞の高い増殖能,強度の浸潤性,抗がん剤・放射線耐性と高転移性がある.このようながん細胞の生物学的特性にはepithelial mesenchymal transition(EMT)が関連していることが知られている.我々は膵癌細胞にゲムシタビン(GEM)を作用させるとEMT様の形態,機能変化が誘導されることを見出した.本研究では,GEMが癌細胞にEMT様変化を誘導する分子機構を検討することを目的として,膵癌細胞の培地のプロテオーム解析を行った.GEM投与により,培地中の多数種の蛋白質が減少したのに対し,熱ショック蛋白質90(HSP90)は増加した.HSP90の組み換え蛋白質を膵癌細胞に添加したところ,EMT様の形態変化とvimentin発現を誘導し,細胞遊走能は亢進した.以上の結果より,GEMが膵癌細胞からHSP90の分泌を誘導することでEMT様変化を来す可能性が考えられ,ひいてはがん治療戦略として,抗がん剤に対する細胞反応を考慮した治療方策が必要であることを示唆している.
症例報告
  • 路川 陽介, 中原 一有, 末谷 敬吾, 森田 亮, 北川 紗里香, 白勢 大門, 小林 慎二郎, 大坪 毅人, 土居 正知, 高木 正之, ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.背部痛を主訴に受診した.血中アミラーゼ(475IU/l)と尿中アミラーゼ(3945IU/l)の上昇を認め,腹部造影CTにて膵頭部に15mm大の低吸収腫瘤および膵体尾部の腫大がみられた.膵腫瘍疑いおよび急性膵炎の診断でPET-CT施行したところ,膵頭部にFDGの集積を認めたため,膵腫瘍精査目的にて入院となった.血液検査ではCA19-9 178U/ml,DUPAN-2 199U/ml,Span-1 71U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認め,内視鏡的逆行性膵管造影時に行った膵液細胞診はclass IIIであったが,画像所見から膵頭部癌と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見は,退形成癌(紡錘細胞型),pT2,pN3,M0,fStage IVbであり,術後化学療法を施行したが術後1ヶ月で局所再発,3ヶ月で多発肝転移,腹膜播種を認めた.
  • 志村 充広, 水間 正道, 岡田 恭穂, 片桐 宗利, 坂田 直昭, 中川 圭, 林 洋毅, 森川 孝則, 元井 冬彦, 内藤 剛, 江川 ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 93-100
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.父が膵癌の家族歴がある.2008年11月に背部痛で発症し,当院で精査を施行.膵鉤部と体尾部に複数の分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に併存する膵体部の通常型膵癌に対し,2009年4月に膵体尾部切除術を施行した.組織学的には分枝型IPMNに併存した高分化型管状腺癌(tub1)であり,膵癌取扱い規約では,T3N0M0,Stage III,R0であった.膵断端近傍にPanIN1A-1B相当の所見を認めた.術後37ヶ月からCA19-9の上昇を認め,精査で異時性発生膵癌あるいは残膵再発と診断し初回手術から46ヶ月後に残膵全摘術・門脈合併切除術を施行.組織学的に膵鉤部IPMNとの連続性は認めず,初回手術と同様にtub1と診断されたが,組織像がやや異なることや時間経過等から異時性発生と診断された.IPMNに併存し異時性多中心性に発生した膵癌に関して文献的考察を加え報告する.
  • 谷坂 優樹, 岩野 博俊, 田場 久美子, 佐藤 洋子, 原田 舞子, 勝倉 暢洋, 岡田 克也, 宮澤 光男, 山口 浩, 須藤 晃佑, ...
    2016 年 31 巻 1 号 p. 101-108
    発行日: 2016/02/25
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    42歳男性.膵体部腫瘤を指摘され紹介.CTでは膵体部に早期相で低吸収,遅延相で不明瞭な14mm大腫瘤を認めた.被膜や嚢胞を疑う像は認めなかった.FDG-PETでは膵体部腫瘤に一致する集積を認めた.確定診断と治療方針決定目的でEUS-FNAを施行した.1回目は断片化した腺房細胞を認めるのみであり,再度FNAを施行.SPNに典型的な偽乳頭状構造は認めなかったが,偏在性の核と淡好酸性の明るい細胞質を有し胞体の空胞変性が目立つ帰属不明瞭な均一な細胞からなる小集塊が散見された.SPNを疑い免疫染色を行った.β-catenin,CD10陽性所見が得られ,FNA検体でSPNと術前診断した.膵体尾部切除術を行い,切除病理組織においてSPNと最終診断した.典型的な偽乳頭状構造を認めなくても,細胞質空胞が目立つ帰属不明瞭な細胞がみられた場合はSPNを疑い,免疫染色を含めたさらなる検討が必要であると考えられた.
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