膵臓
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31 巻, 5 号
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症例報告
  • 菅原 弘太郎, 石田 隆志, 清水 崇行, 野村 幸博, 鈴木 良夫
    2016 年 31 巻 5 号 p. 711-719
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    症例は59歳女性と80歳女性.共に検診にて20mm大の多血性膵頭部腫瘤を指摘された.いずれもカテコラミン増多症状や血中カテコラミン値の上昇を認めず,非機能性内分泌腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除術を施行された.病理診断は膵原発のparagangliomaであった.膵実質内に発生するparagangliomaの報告例は少ない.今回2症例を経験したのでここに報告する.

  • 倉橋 真太郎, 駒屋 憲一, 大澤 高陽, 石井 紀光, 小林 佑次, 井上 匡央, 村上 秀樹, 佐野 力
    2016 年 31 巻 5 号 p. 720-727
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性.検診の腹部超音波検査にて腹腔内腫瘤を指摘された.腹部造影CTで膵尾部に主座を有する比較的境界明瞭な径9cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は早期相で強く濃染され,脾動脈は狭小化などを伴わず腫瘍内を走行していた.腫瘤と左腎は近接しており,浸潤が疑われた.MRIではT1・T2強調像で共に内部不均一な低信号,拡散期強調像で高信号を呈した.EUSでは血流豊富な低エコー腫瘤として描出された.細胞診では,腫瘍細胞は重積性を示し,一部極性の乱れを認めたが良悪性の鑑別は困難であった.非機能性膵神経内分泌腫瘍や膵腺房細胞癌を鑑別診断に考え,切除の方針とした.膵体尾部・脾・左副腎・左腎切除,横行結腸・胃壁部分切除により腫瘍を摘出し得た.病理組織検査で,偏在した核を有する形質細胞のびまん性増殖を認めた.免疫組織染色でCD79a,CD138,CD56,IgGがそれぞれ陽性であり膵原発髄外性形質細胞腫と診断した.術後6ヶ月無再発生存中である.

  • 山本 健治郎, 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 土屋 貴愛, 辻 修二郎, 池内 信人, 鎌田 健太郎, 田中 麗奈, 殿塚 亮祐, 本定 三季 ...
    2016 年 31 巻 5 号 p. 728-737
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,女性.嘔吐・腹痛を主訴に当院外来を受診した.血液検査にて膵酵素および炎症反応の上昇を認めた.また腹部造影CT検査にて周囲脂肪織濃度の上昇を伴う膵全体の腫大と,頭体移行部,膵鈎部に分枝型IPMNを認め,IPMNによる急性膵炎の診断にて入院となった.膵炎治療後に手術を勧めたが同意が得られず,6年3ヶ月に及ぶ経過観察を行った.経過観察中にIPMNは増大し,充実性成分も出現し,最終的に胃穿破を伴う粘液癌へと進展した.分枝型IPMNはmalignant potentialを有するが進行が緩徐であることが知られており,経過観察可能例と切除適応が存在する.しかし分枝型IPMNの自然史を記載した報告は少なく,分枝型IPMNの浸潤癌へと癌化する自然史を画像的に長期に観察し得た貴重な症例であり報告する.

  • 佐野 周生, 山本 有祐, 杉浦 禎一, 岡村 行泰, 伊藤 貴明, 蘆田 良, 松林 宏行, 佐々木 恵子, 坂東 悦郎, 絹笠 祐介, ...
    2016 年 31 巻 5 号 p. 738-745
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性.健診でCA19-9高値を指摘され当院に紹介となった.造影CT,MRIで膵頭部に乏血性腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺生検で腺癌と診断した.Gemcitabine+S-1による術前化学療法後の造影CTで,腫瘍は増大し,辺縁濃染と内部低吸収を示す腹側領域と境界不明瞭で乏血性の背側領域を認めた.上腸間膜静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,腹側領域には破骨細胞に類似した巨細胞を認め,破骨細胞様巨細胞型退形成癌と診断した.背側領域には管状腺癌が存在し,両成分の境界に移行部が認められた.化学療法期間に増大した退形成癌成分に出血壊死が出現し,初診時より混在する管状腺癌成分とのコントラストが生じた結果,経過でCT所見が変化したと思われた.退形成癌は豊富な腫瘍内血流と出血壊死を特徴とするが,腫瘍径が小さな時には通常型膵癌に類似した画像所見を示すことがある.

  • 大原 忠敬, 藤野 泰宏, 山下 博成, 杉山 宏和, 柿木 啓太郎, 千堂 宏義, 富永 正寛, 津村 英隆, 三木 生也, 梶本 和義
    2016 年 31 巻 5 号 p. 746-753
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    漿液性嚢胞腺腫(serous cystadenoma,以下SCN)は基本的には良性疾患であり経過観察される.今回我々は閉塞性黄疸を来たし切除を要したSCNの1例を経験した.症例は58歳,女性.膵頭部に嚢胞性腫瘤を指摘され,精査の結果SCNと診断しフォローアップしていたが,経過中に閉塞性黄疸が出現した.嚢胞の増大により下部胆管の圧排が増悪し閉塞性黄疸を発症したものと考えられ,内視鏡的胆管ドレナージにより減黄を図った後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘤は径3.8×3.4×3.0cmの漿液性多房性嚢胞で,充実成分を認めなかった.病理組織検査では下部胆管への圧排を認めるものの浸潤は明らかではなく,嚢胞内腔を裏打ちする上皮細胞の異型度は軽度でありSCN(macrocystic dominant type)と診断された.有症状のSCN症例は手術適応と考えられ,文献的考察を加えて報告する.

  • 田野 俊介, 井上 宏之, 山田 玲子, 作野 隆, 西川 健一郎, 濱田 康彦, 葛原 正樹, 田中 匡介, 堀木 紀行, 安積 良紀, ...
    2016 年 31 巻 5 号 p. 754-759
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/02
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代の男性.心窩部痛で当院を受診し,血液検査,CT所見から重症急性膵炎と診断した.保存的加療で軽快したが,成因は不明であった.4か月後に経過観察目的のEUSで膵体部に径8mm大の低エコー腫瘤を認め,EUS-FNAを施行し膵癌と診断した.造影CTで膵体部に径8mm大の造影不良な腫瘤とともに膵頭部に径7.5cm大の被包化された液貯留を認めwalled-off necrosis(WON)と考えられた.精査目的でERCPを施行し膵管非癒合を診断した.膵体尾部切除術を施行し,最終診断はpT3, s(+),rp(+),pv(-),a(-),pl(-),oo(-),moderately differentiated tubular adenocarcinomaで主膵管,分枝膵管に広範囲に異型上皮の進展を認めた.

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