膵臓
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32 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説 国際膵臓学会Palade賞受賞記念講演
  • ―予期しないことから道が開ける―
    大槻 眞
    2017 年 32 巻 2 号 p. 110-124
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    Palade Prizeは1974年膵腺房細胞のタンパク質輸送の研究でノーベル賞を受賞したGeorge E. Palade先生を記念して国際膵臓学会特別賞として2010年から設けられ,2016年に私が受賞しました.神戸大学大学院修了後から始めたアミラーゼアイソザイムの研究が膵臓に関する研究の第一歩です.その後,血糖値とアミラーゼ活性の関係,糖尿病の膵外分泌機能,ラット摘出膵灌流標本を用いた膵内外分泌機能相関,糖尿病の膵外分泌機能の特徴,急性膵炎とCCKの関係,慢性膵炎発症と線維化の進展機序の解明,厚生労働科学研究補助金難治性膵疾患克服研究事業「難治性膵疾患に関する調査研究」での急性膵炎重症化機序の解明と治療指針,超音波内視鏡の早期慢性膵炎診断への有用性,韓国との合同による自己免疫性膵炎の診断基準の提唱,可逆性膵炎と非可逆性膵炎の違いと膵線維化進展機序の解明と阻止に関する研究をしました.

総説
原著
  • 松本 奏吉, 渡邉 雄介, 倉田 加奈子, 西原 一善, 中野 徹
    2017 年 32 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    膵体尾部切除術後の膵液瘻は頻度の高い合併症であり,後出血や腹腔内膿瘍などの他の合併症の原因ともなり得る.今回我々は膵癌に対して膵体尾部切除術を施行した40例を対象に膵液瘻のリスク因子を後ろ向きに検討した.術前糖尿病非合併と膵切離部実質の厚さが14mm以上であることが膵液瘻の独立したリスク因子であった.膵切離法(リニアステープラーとfish mouth法)や術者(修練医と指導医)は膵液瘻発症に影響していなかった.指導医執刀例で男性が有意に多く,肥満例が多い傾向にあり,修練医執刀例は全例でリニアステープラーでの膵切離を行っていた.修練医の安全な執刀には,適切な患者選択と膵切離法を含めた術式の標準化が必要であると考えられた.術前の糖尿病合併と術後膵液瘻発症に関する報告は少ないが,本研究では術前糖尿病非合併が膵癌に対する膵体尾部切除術後膵液瘻のリスク因子と考えられた.

症例報告
  • 大塚 武史, 山本 龍一, 宮保 嘉津真, 須田 健太郎, 藤田 徹郎, 青山 徹, 高林 英日己, 加藤 真吾, 岡 政志, 名越 澄子, ...
    2017 年 32 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    膵十二指腸動脈瘤は腹腔内動脈瘤中2%と非常に稀な病態である.内視鏡的総胆管結石切石後に前上膵十二指腸動脈瘤破裂を発症した1例を経験した.症例は74歳,男性.主訴は心窩部痛,黄疸.入院時採血所見ではWBC 7400/mm3,T-Bil 5.3mg/dl,P型amylase 33U/l,CRP 5.0mg/dlであり,腹部造影CTで下部胆管に結石を疑ったため第2病日ERCPを施行した.EST小切開を施行し泥状の結石を除去後,経鼻胆管ドレナージtubeを留置.第3病日,出血性ショック状態となり腹部造影CTを施行したところERCP後の軽症膵炎及び後腹膜血腫を認めた.十二指腸動脈瘤破裂の可能性も考慮し血管造影を施行した.破裂部位に対しプラチナマイクロコイルを用い塞栓.以後十二指腸狭窄も合併せず第28病日に退院した.入院時の腹部造影CTでは動脈瘤の所見はなくERCP後膵炎が前上膵十二指腸動脈瘤破裂の誘因になった可能性が考えられた.

  • 金子 太一, 佐藤 高光, 栗田 裕介, 岩崎 暁人, 加藤 真吾, 香川 幸一, 細野 邦広, 梅田 茂明, 遠藤 格, 中島 淳, 窪田 ...
    2017 年 32 巻 2 号 p. 168-177
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    症例は54歳女性で,左乳癌の術後でホルモン治療中であった.経過観察中のCTにて膵尾部に嚢胞性病変が出現し,1年間で急激な増大を認めたため,膵腫瘍性嚢胞を否定できず膵体尾部切除術を施行した.切除断端の術中迅速病理診断にて腺癌が検出されたため,追加切除を施行され完全切除となった.

    膵尾部嚢胞はEpidermoid Cystと診断された.1回目の切除断端には微小浸潤癌,その周囲には膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)が数か所認められた.これらは術前に造影CT,超音波内視鏡(EUS),MRCP,PET-CTを施行していたが,指摘不能であった.画像と病理像の詳細な対比を行ったところ,MRCPでは病変の部位に一致して極僅かな膵管の不整と,EUSでは微小な低エコー領域を指摘可能であった.本症例における微細な画像変化は,今後の早期診断に有用な所見と考えられた.

  • 森田 亮, 中原 一有, 路川 陽介, 末谷 敬吾, 佐藤 純也, 藤野 節, 伊東 文生
    2017 年 32 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,男性.25年前に腎細胞癌にて右腎摘出術の既往があった.腹部超音波検査にて膵頭部腫瘤が指摘され精査目的に入院となった.腹部造影CT検査では膵頭部から膵体部に一塊となった複数の多血性腫瘤を認め,肝内にも同様の造影効果を有する腫瘤を多数認めた.画像検査から膵内分泌腫瘍または腎癌膵転移を疑い,治療方針決定のために超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を施行した.25G穿刺針を用いて穿刺し,セルブック法にて検体処理を行い,免疫組織染色による病理組織診断により腎細胞癌膵転移と診断した.腎細胞癌は,切除から長期経過した後に異時性転移を来す場合があり,膵の多血性腫瘤の鑑別の一つとして考慮する必要がある.多血性膵腫瘤に対し,細径の穿刺針にてEUS-FNAを行い,セルブロック法による免疫組織染色が診断に有用であった術後26年目に膵転移を来した腎細胞癌の1例を経験したので報告する.

  • 梶山 英樹, 鈴木 修司, 竹村 晃, 下田 貢
    2017 年 32 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    肝細胞癌由来の転移性膵癌の1例を経験したので報告する.症例は47歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診.CT施行され膵腫瘍と多発肝腫瘍を指摘された.血液生化学検査では,AFP 175020.7ng/ml,PIVKA-II 39374mAU/mlといずれも上昇していた.MRIでは膵尾部にT1でlow intensity,T2ではhigh intensityの5cm大の腫瘤がみられ,膵癌多発肝細胞転移と診断した.病理診断のため肝生検施行し肝腫瘍は肝細胞癌と診断され,膵癌との重複癌を疑い腹腔鏡下膵生検を施行した.膵腫瘍は肝細胞癌膵転移と診断された.転移性膵腫瘍は稀な疾患で,原発巣としては胃癌,肺癌が多い.今回肝細胞癌膵転移という極めて稀な症例を経験したので,文献考察を加え報告する.

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