膵臓
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32 巻 , 5 号
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総説
  • 山口 幸二
    2017 年 32 巻 5 号 p. 795-805
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    MCNは全例外科的に切除すべきか?との問題について,3つのガイドライン,大きな後ろ向き観察研究などのエビデンスをもとに,概説した.IAPガイドラインとヨーロッパ専門家コンセンサスはIPMNとMCNを別個のものとして扱っているが,AGAガイドラインは膵嚢胞性腫瘍でまとめて,臨床的取扱いはIPMN,MCなどを区別していない.IAPではMCNは全例切除すべきとの立場だが,その他の2つのガイドラインはMCNの症状の有無,腫瘍マーカー,嚢胞径,壁在結節,主膵管拡張などの悪性(浸潤性)予測因子により手術適応を考えようとの立場である.多数例の(多施設)後ろ向き観察研究でもMCNは全例手術すべきとの意見もあるが,最近の論文では悪性予測因子で手術適応を考えようとするものが多い.MCNの手術適応に関して,ガイドライン,多数例の後向き観察研究のエビデンスを検討し,概説した.

原著
  • 塩賀 太郎, 高山 敬子, 田原 純子, 長尾 健太, 清水 京子, 徳重 克年
    2017 年 32 巻 5 号 p. 806-811
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    重症急性膵炎の栄養療法として,近年早期からの経鼻空腸チューブ下経腸栄養(NJT-EN)が推奨されている.本研究では,重症急性膵炎治療における経鼻胃管チューブ下経腸栄養(NGT-EN)と中心静脈栄養(TPN)の有用性について後ろ向きに比較検討した.対象は2005年~2013年に当科で加療した重症急性膵炎96例.TPN群(14例),早中期NGT-EN群(発症後8日以内に開始,30例),後期NGT-EN群(9日以降に開始,35例),TPN(-)EN(-)群(12例)間で回復期間や合併症について比較検討した.結果,経口摂取開始病日,CHDF施行率について早中期NGT-EN群ではTPN群と後期NGT-EN群より有意に良好な結果が得られた.重症急性膵炎の回復期短縮,多臓器不全抑制に発症8日以内からのNGT-ENは有効と思われる.

症例報告
  • 冨嶋 享, 藤澤 聡郎, 金澤 亮, 三浦 寛子, 石井 重登, 伊藤 智康, 斉藤 紘昭, 福村 由紀, 椎名 秀一朗, 渡辺 純夫
    2017 年 32 巻 5 号 p. 812-820
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    症例は49歳,女性.背部痛を主訴に受診.造影CTで膵頭部に乏血性の腫瘤を認め,肝臓にも両葉多発の腫瘤を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引法による組織診の結果,退形成膵管癌と診断.化学療法目的に当院へ紹介となり80%doseのgemcitabine+nab-paclitaxelにて治療開始.治療後3か月で画像上,原発巣のわずかな縮小と肝転移巣の著明な縮小を認めたが, 食思不振とperformance status低下にて治療の継続は困難となった.S-1内服に変更するも急激なCA19-9の上昇と全身衰弱にて初診より約4か月で永眠された.病理解剖の結果,多形細胞型退形成膵管癌との診断となった.化学療法を施行した多型細胞型退形成膵管癌の報告は少なく,画像上奏功した症例はほとんどない.本症例は,切除不能多形細胞型退形成膵管癌の治療を検討する上で貴重な症例と考えた.

  • 金子 淳一, 松下 雅広, 田中 佑一, 長澤 真帆, 石橋 浩平, 渡邉 晋也, 金山 広和, 森下 宗自, 芦沢 直樹, 上村 和康, ...
    2017 年 32 巻 5 号 p. 821-828
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性,軽症の急性膵炎の診断で入院となった.造影CT,MRIで膵尾部の主膵管および分枝膵管の拡張を認めた.超音波内視鏡にて主膵管狭窄部の近傍に分枝膵管の拡張と思われる無エコー領域とそれと連続する約1cmの腫瘤とは認識できない低エコー領域を認めた.膵管造影で主膵管の狭窄部を認め,連続膵液細胞診にて異型細胞を認めた.以上の結果より,膵管癌を疑い,手術を施行した.病理組織で主膵管狭窄部近傍の分枝膵管に上皮内癌の存在が明らかとなり,膵上皮内癌の診断に至った.低エコー領域は膵上皮内癌の間接的な画像所見であると考えられ,同様の所見を認めた場合は,連続膵液細胞診を行うことで,膵上皮内癌を診断することができると推察された.

  • 酒井 新, 竹中 完, 池田 篤紀, 小林 隆, 塩見 英之, 増田 充弘, 有坂 好史, 岡部 純弘, 原 重雄, 全 陽, 東 健
    2017 年 32 巻 5 号 p. 829-835
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    症例は73歳男性.膵体部腫瘤の精査目的で入院した.造影CTでは尾側膵管の拡張を伴う境界明瞭な30mmの乏血性腫瘤であった.EUSでは境界が明瞭,辺縁はやや不整で,内部エコー均一な低エコー腫瘤として描出された.膵神経内分泌癌が疑われたが,通常型膵管癌との鑑別が困難であった.同腫瘤に対してEUS-FNAを行い,小細胞型神経内分泌癌と診断した.MRIで肝内に多発する結節を認めたため,多発肝転移を伴う膵神経内分泌癌と診断し,Irinotecan+Cisplatinのレジメンで化学療法を行った.原疾患の進行のため,化学療法開始より6ヶ月後に永眠された.

  • 佐藤 英昭, 石田 晶玄, 岡田 恭穂, 元井 冬彦, 坂田 直昭, 青木 豪, 大塚 英郎, 水間 正道, 中川 圭, 林 洋毅, 森川 ...
    2017 年 32 巻 5 号 p. 836-842
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    背景;慢性膵炎の手術は膵管ドレナージ術と膵切除術に大別され,それぞれ機能温存と根治性に利点がある.病態に応じた術式の選択が重要である.膵頭部の炎症が十二指腸に及ぶ慢性膵炎症例に対し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)と膵管空腸側々吻合術(LPJ)を併施したので報告する.症例;慢性膵炎の急性増悪で紹介された40代男性.術前検査で膵頭部の石灰化と膵頭部近傍の血腫を伴う嚢胞,さらに,十二指腸に狭窄と瘻孔形成,膵尾側に膵石が確認された.当科では慢性膵炎の外科的治療にFrey手術を第一選択としているが,本症例は炎症が十二指腸に波及しており,膵頭部の芯抜きだけでは不十分と考え,SSPPDとLPJを併施した.腹腔内膿瘍の合併が見られたもののドレナージで改善し,退院となった.結語;SSPPDとLPJの併施は,膵頭部の炎症が高度でFrey手術により治療効果が見込めない症例に有効と考える.

  • 村上 正俊, 李 倫學, 槇原 康亮, 板場 壮一, 上領 頼之, 中島 信能, 平田 文, 桒野 晴夫, 馬場 眞吾, 本田 浩, 河邉 ...
    2017 年 32 巻 5 号 p. 843-851
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    症例は60歳,男性.膀胱癌の術前CTにて膵のびまん性腫大を指摘されて当科紹介となった.びまん性の膵腫大や膵管の多発狭細像などの画像所見からは自己免疫性膵炎(AIP)が強く疑われたが,EUS-FNABの病理組織診断にて神経内分泌腫瘍(NET,Ki-67指数7%)と判明した.全身の転移検索として施行したソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)では,膵頭体部と膵尾部にびまん性の異常集積を認めたほか,CTでは指摘できなかった肝転移巣と多数の骨転移巣が明瞭に同定された.その後の病理所見の再評価にて,膀胱腫瘍もNETであることが判明した.以上より,最終診断を膵NETと全身への多発転移と確定した.膵NETは多彩な画像所見と臨床像を呈する疾患であるが,AIPに類似したびまん性膵腫大を呈し,膀胱にも転移を認めた極めて稀な1例を経験したので,文献的考察を加えてここに報告する.

  • 川口 真矢, 菊山 正隆, 佐藤 辰宣, 寺田 修三, 金本 秀行, 新井 一守
    2017 年 32 巻 5 号 p. 852-858
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    症例1は59歳女性,症例2は62歳女性.いずれも膵頭部膵管の限局性狭窄と上流膵管の拡張を指摘されたが,腹部造影CT,MRI,FDG-PET検査にて膵に腫瘤や高度脂肪化の所見は認めなかった.また,超音波内視鏡検査(EUS)にても狭窄部周囲に腫瘤や低エコー領域は指摘されなかった.内視鏡的逆行性膵管造影による連続膵液細胞診(SPACE)にて腺癌が疑われたため膵上皮内癌による膵管狭窄と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.それぞれ腫瘍径0.4×0.3cmと0.3×0.2cmのpT1a膵癌で主膵管内にはPanIN high gradeの所見を認めた.症例1はリンパ節転移を認めた.膵管の限局性狭窄と上流膵管の拡張所見を認めた場合,特に膵頭部病変においてはEUSにて狭窄部周囲に腫瘤や低エコー領域が指摘されなくても浸潤癌の可能性も念頭にSPACEの実施を検討する必要が考えられた.

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