膵臓
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34 巻, 1 号
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症例報告
  • 小塚 雅也, 里井 壯平, 柳本 泰明, 山本 智久, 小坂 久, 廣岡 智, 山木 壮, 道浦 拓, 井上 健太郎, 松井 陽一
    2019 年 34 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性.CA19-9高値と膵尾部に腫瘍性病変を認め当院へ紹介された.CT検査上,膵尾部に脾静脈浸潤を伴う34 mmの病変を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診で腺癌と診断.審査腹腔鏡で播種性結節を多数認め(P1,H0,CY1),S-1+paclitaxel(PTX)経静脈・腹腔内投与併用療法(S-1+i.v./i.p. PTX)を開始した.腫瘍は10 mmに縮小,治療開始約12ヶ月後の再度審査腹腔鏡で播種性結節は消失.根治切除可能と判断し,conversion surgeryとして膵体尾部切除術を施行した.病理結果では1.0×0.5 mmの病変を3ヶ所に認め,ypT1a ypN0 M0 ypStage IAと診断.補助化学療法S-1+i.p. PTXを行い,初回治療開始後48ヶ月,conversion surgery後36ヶ月経過した現在まで再発は認めていない.

  • 児玉 亮, 鎌倉 雅人, 三枝 久能, 牛丸 博泰, 牧野 睦月, 川口 研二
    2019 年 34 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性.食欲低下,体重減少,黄疸,糖尿病の増悪で入院した.血液検査所見ではIgG 2446 mg/dl,IgG4 232 mg/dlと高値を認めた.画像検査では総胆管壁肥厚と狭窄,膵頭部腫大,Capsule-like rim,主膵管のびまん性の不整狭細像を認めた.膵尾部には嚢胞様病変を認め,内部にはT1強調像・T2強調像で高信号の領域があり陳旧性の出血が疑われた.22GのFranseen針を用いて超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引生検を行い,膵体部の腫大した膵実質からの組織診で自己免疫性膵炎と診断した.膵尾部の嚢胞様病変からの組織診では膵壊死を認めた.ステロイド内服治療により肝胆道系酵素異常は改善した.ステロイド導入1ヶ月後のMRI検査では胆管狭窄・膵腫大の改善を認め,3ヶ月後には膵壊死は消失した.壊死を伴う自己免疫性膵炎の報告は過去になく貴重な症例と思われたので報告する.

  • 林 達也, 宅間 邦雄, 東原 琢, 井上 大, 森田 泰弘
    2019 年 34 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    大腸癌膵転移は全身転移の終末像としてみつかることが多く,このため手術適応となる症例は少ない.大腸癌膵転移の外科治療の際に問題となるのは,①他の全身転移を伴っていることも多いが手術適応があるか,②原発性膵癌との鑑別をどのようにするか,ということである.今回術前に原発性膵癌との鑑別を要した直腸癌膵転移症例を経験した.症例は72歳,女性.直腸癌肝転移切除準備中に膵腫瘤を指摘された.膵癌肝転移の可能性を否定できなかったため,肝生検,超音波内視鏡下穿刺組織診(EUS-FNA)での膵生検を施行し,直腸癌からの肝転移,膵転移の診断を得た.このため根治切除可能と判断し手術を行った.大腸癌膵転移は切除後長期生存の報告もあり切除適応はあると考えられるが,今回のように同時に肝腫瘍も認める症例では,根治性を検討するためにも術前にEUS-FNAを用いた病理学的診断が必須であると考えられた.

  • ―病変の術中検出限界,ピットフォールについて―
    竹村 裕介, 北郷 実, 板野 理, 篠田 昌宏, 八木 洋, 阿部 雄太, 大島 剛, 堀 周太郎, 藤田 優裕, 益田 悠貴, 久保田 ...
    2019 年 34 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は74歳男性.左甲状腺乳頭部癌の術前FDG-PET/CT検査にて膵鉤部にFDG集積を伴う腫瘍を指摘され当科紹介となった.CT検査にて7 mm大の早期濃染する腫瘤を認め,膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:PNET)と診断した.甲状腺摘出後に切除生検目的として膵部分切除術を施行するも永久標本で腫瘍を認めず,術後2か月目のCT検査にて腫瘍の残存を認めたため,4か月後に再手術を行った.その際3度の部分切除を施行したが術中に腫瘍を指摘できず,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理検査所見にて7×6 mm大の黄白色調の結節性病変を認め,免疫染色にてシナプトフィジン陽性,クロモグラニンA陽性,CD56陽性,Ki−67<1.5%であり非機能性のPNET(WHO分類Grade1)と診断した.今回,術中所見(超音波検査,肉眼所見,迅速病理検査)で腫瘍同定に難渋したPNETを経験したので文献的考察を含めて報告する.

  • 大野 彰久, 藤森 尚, 松本 一秀, 寺松 克人, 高松 悠, 三木 正美, 高岡 雄大, 大野 隆真
    2019 年 34 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は50代男性.肝転移・腹膜播種・十二指腸狭窄を伴う膵頭部癌に対して,胆管metallic stentを留置後に,化学療法を導入したが,急性膵炎を発症したため,胆管plastic stent(PS)へ交換,内視鏡的膵管ステント(endoscopic pancreatic stent:EPS)を留置した.EPS抜去後に,化膿性膵管炎を発症し,ENPDチューブを留置した.十二指腸下行脚狭窄があり,ENPDチューブを胃内でカットして内瘻化した.約1ヶ月後に胆管炎を発症し,胆管PSを交換したが,処置後7日目に突如ショックバイタルとなった.CT検査をしたところカットしたENPDチューブ近位端が十二指腸球部前壁を貫いており,free airと腹腔内膿瘍を認めた.腹腔内膿瘍に対して緊急CTガイド下ドレナージ後,上部消化管内視鏡でENPDチューブを抜去し,穿孔部位をクリップで閉鎖した.その後,経口摂取可能となったが,以後はBSCとなり,治療開始約8ヶ月後に原病死された.

  • 菅井 隆広, 虻江 誠, 岩井 渉, 宮崎 武文, 涌井 祐太, 相澤 宏樹, 及川 智之, 内海 潔, 鈴木 眞一, 伊藤 しげみ, 佐藤 ...
    2019 年 34 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は62歳,男性.健康診断の腹部超音波検査にて膵頭部に嚢胞性病変を指摘され,精査目的に当センターを受診した.CT,MRI検査で病変内部に漸増性の造影効果を認め,充実性の膵腫瘤性病変と考えられたが,画像での診断は困難であったため超音波内視鏡下穿刺吸引生検を施行した.病理学的には,束状に増殖した多数の紡錘形細胞を認め,免疫染色で,c-kit陰性,CD34陰性,α-SMA陰性,S-100蛋白陽性の結果より,最終的に膵神経鞘腫と診断した.Mib-1 indexは1~2%と増殖能は低く,他に悪性所見が乏しいことから,現在経過観察中である.

  • 山根 佳, 穴澤 貴行, 増井 俊彦, 長井 和之, 多田 誠一郎, 井ノ口 健太, 仲野 健三, 内田 雄一郎, 余語 覚匡, 高折 恭一 ...
    2019 年 34 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2019/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は35歳女性.腹部造影CTにて膵頭部に造影効果を有する最大径89mmの充実性腫瘍を認め,当初膵頭部のsolid pseudopapillary neoplasmと診断されたが,急速な増大傾向を示したため当院へ紹介された.各種画像所見と超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)により膵腺房細胞癌(acinar cell carcinoma:ACC),膵神経内分泌腫瘍(NET)の鑑別が問題となったが,腫瘍細胞がびまん性にBCL10陽性を示したためACCと診断した.門脈から上腸間膜静脈(SMV)にかけて腫瘍栓を認めたが,膵頭十二指腸切除術・門脈合併切除にて根治切除しえた.術前のEUS-FNA検体では僅少検体で評価が難しく,特に稀な腫瘍では確定診断に躊躇する場合も多い.BCL10染色は近年,ACCに対する信頼度の高い免疫染色検査であるとされており,適切な治療方針設定のために診断困難な膵腫瘍症例では有用である検査と思われた.

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