膵臓
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37 巻, 6 号
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学会報告
  • 高折 恭一
    2022 年 37 巻 6 号 p. 281-286
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    第53回日本膵臓学会大会を第26回国際膵臓学会(IAP President:竹山宜典理事長)との合同大会として,2022年7月7~9日の3日間,国立京都国際会館を会場として開催した.「一期一会~膵臓学の新たな地平を目指して~」をテーマに,国内外の膵臓学者の“Reunion”を目指して,現地開催とした.海外演者についてはオンライン参加も可能とし,一部はハイブリッド形式とした.国内外から1,386人の参加登録があり,867名の方に現地参加をいただいた.計7コマの国際コンセンサス会議,23コマのシンポジウム,8コマのパネルディスカッション,5コマのワークショップをはじめとして,国際色豊かなプログラムで,活発なディスカッションが行われた.アメリカ膵臓学会(APA),ヨーロッパ膵臓学会(EPC),アジア・オセアニア膵臓学会(AOPA)など,多くの学会や研究グループとの共同企画セッションを実施した.下瀬川徹名誉理事長がIAP Lifetime Achievement Awardを受賞され,受賞に至った業績について講演されたことは,日本膵臓学会にとって大変光栄なことであった.さらに,膵臓学における日本の国際的貢献を記念して,“Ryoichi Tsuchiya Memorial Lecture”“Tadashi Takeuchi State―of―the―Art Lecture”“Seiki Matsuno State―of―the―Art Lecture”“Daniel S. Longnecker State―of―the―Art Lecture”を行った.一方,ウクライナのDr. Gubergrits Natalyaからは,ビデオで特別講演をいただいた.コロナ禍の中で,国際学会として本大会を主催することには多くの課題があったが,無事に開催を終えることができた.ここにその経緯をご報告するとともに,皆様のご協力に心から感謝申し上げたい.

原著
  • ―人間ドックでの膵臓検診の取り組みと受検者の臨床的特徴―
    佐々木 綾香, 佐貫 毅, 家本 孝雄, 大瀨 貴之
    2022 年 37 巻 6 号 p. 287-294
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    当院の人間ドックに,膵臓に特化した膵臓検診を導入した.検診内容は,問診,内科的診察,腹部超音波検査(US),MRCP,超音波内視鏡検査(EUS),血液検査とした.膵に形態学的な異常を認めた症例は50.5%と高率であり,膵嚢胞を38%,EUSで早期慢性膵炎に特徴的な所見13%および膵管癒合不全を1.8%で認め,膵嚢胞の指摘が高率であった.現在まで早期膵癌の発見はないが,今後も膵癌の早期診断に努め,膵嚢胞など膵癌の高リスク症例を拾い上げ,外来での経過観察に誘導していくことが重要と考える.消化器病の患者のみならず広くハイリスク群を絞り込み,今後のサーベイランス構築に向けて,検討を続ける.

症例報告
  • 飛田 浩輔, 鈴木 理之, 大島 由佳, 白井 雄史, 深澤 麻希, 今泉 俊秀, 藤村 彰, 村山 晶俊, 西原 亜紀子, 眞田 和賢, ...
    2022 年 37 巻 6 号 p. 295-304
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は,79歳女性.膵頭部・膵尾部に分枝型膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN)と診断され,手術かつインスリン自己注射導入回避を希望された.造影CTによる膵ボリューメトリーを施行,約26%(12.7cm3)の膵体積温存をシミュレーションし,脾臓動静脈温存中央区域温存膵切除を施行,病変根治切除並びに糖尿病発症を回避できた症例である.複数の膵病変が発見された際,中央区域温存膵切除は,膵機能温存のための有用な術式選択肢となりうる.文献的考察を加えて報告する.

  • 田村 圭, 坂元 克考, 岩田 みく, 伊藤 千尋, 坂本 明優, 浦岡 未央, 永岡 智之, 船水 尚武, 小川 晃平, 高田 泰次
    2022 年 37 巻 6 号 p. 305-310
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    慢性膵炎は膵癌発症の危険因子の一つであるが,慢性膵炎に対する外科治療は膵癌発生を減少させると報告されており,そのためか慢性膵炎に対する外科的治療後の膵癌の報告は少ない.患者は71歳,女性.40歳時に慢性膵炎に対して膵空腸側々吻合術を施行された.55歳時に糖尿病を診断され,以後定期通院中であった.71歳時にCEAの軽度上昇を指摘され,CT検査を施行.膵尾部に20mmの乏血性腫瘤を認め,精査の結果,膵尾部癌cT3N0M0,Stage IIAと診断された.術前化学療法後に膵体尾部切除術を施行.膵空腸側々吻合は膵体部から尾部にかけて施行されており,門脈直上に設定した膵切離ラインにはかかっていなかったため,膵空腸側々吻合部を含めて挙上空腸も切離した.切除病理結果で,吻合部浸潤を伴う膵癌の診断であった.慢性膵炎に対する根治治療後であっても,膵癌の発生に留意して長期的な経過観察が必要な可能性がある.

  • 伊藤 千尋, 坂元 克考, 岩田 みく, 坂本 明優, 松井 貴司, 西 悠介, 新恵 幹也, 浦岡 未央, 永岡 智之, 宇都宮 健, 田 ...
    2022 年 37 巻 6 号 p. 311-317
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.胃後壁および脾動静脈浸潤を伴う3.5×3cmの切除可能膵尾部癌で当科紹介された.審査腹腔鏡で胃後壁浸潤を認めたが,明らかな遠隔転移や播種性病変を認めなかった.術前化学療法としてゲムシタビン+nab-パクリタキセル療法を開始した.新型コロナウイルス感染症による手術枠制限の影響があり,3コース終了後に手術の予定としていたが,3コース目開始5日後に吐血し近医へ救急搬送された.近医入院後に出血性ショックとなり,当院へ転院した.腹部ダイナミックCTで,胃後壁に浸潤した腫瘍内への脾動脈瘤破裂による消化管出血と診断した.輸血にてバイタルサインを安定させ,経カテーテル脾動脈塞栓術で止血した.入院約1ヶ月後に独歩退院したが,退院前のCTで肺転移を認め,非切除となった.

    脾動脈と胃壁浸潤を伴う膵体尾部癌症例に対する術前化学療法では慎重な対応が必要である.

  • 宮原 貢一, 樋髙 秀憲, 窪津 祥仁, 貞島 健人, 井上 須磨, 藤邑 勇太朗, 江口 紘平, 荻野 祐也, 明石 道昭, 野田 隆博
    2022 年 37 巻 6 号 p. 318-324
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は60代,男性.左頸部にしこりが出現し,上腹部痛も出現するようになり受診.初診時,左耳下腺と顎下腺が腫脹しており,血液検査にてAMY 525IU/lと上昇し,肝胆道系酵素の上昇も認めた.またIgG 4,023mg/dl,IgG4 3,120mg/dlと上昇を認めた.腹部超音波・造影CT・MRI検査にて,膵腫大と膵周囲の被膜様構造,大小多数の膵嚢胞を認めた.膵以外では,下部胆管狭窄と中枢側胆管の拡張,多発する腎結節,左頸部には多房性嚢胞性腫瘤を認めた.EUS-FNABによる病理組織検査にて,膵実質のまだら状の線維化,花筵状線維化,閉塞性静脈炎,形質細胞浸潤を認め,1型自己免疫性膵炎確診例(びまん型)と診断した.プレドニゾロン投与を開始し,12週後には膵嚢胞がほぼ消失していることを確認した.

    ステロイドが著効した多数の膵嚢胞を合併した自己免疫性膵炎であり,稀な症例と思われたため報告する.

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