膵臓
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特集 脂肪膵・肥満関連膵疾患を考える
  • 丹藤 雄介, 内田 一茂
    2026 年41 巻4 号 p. 103
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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  • 蘆田 玲子
    2026 年41 巻4 号 p. 104-110
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
    ジャーナル 認証あり

    脂肪膵(fatty pancreas)は,膵実質への異所性脂肪沈着を特徴とする病態であり,近年の肥満・メタボリックシンドローム流行に伴い,その臨床的重要性が急速に高まっている.有病率は診断方法や対象集団によって異なるが,MRIを用いた住民コホート研究では約16%,超音波検査を用いた日本人健診研究では約47%と報告されている.病態形成には,異所性脂肪蓄積による脂肪毒性,膵星細胞の活性化,慢性炎症,酸化ストレス,遊離脂肪酸を介したインスリン分泌障害など複数のメカニズムが関与し,2型糖尿病,膵外分泌機能不全,膵炎,さらには膵癌との関連も示唆されている.本稿では,脂肪膵の疫学・診断・病態機序・合併症に関する現在の知見を概説し,今後の課題と展望について考察する.

  • 大塚 康生, 瀬海 郁衣, 三長 孝輔, 渡邉 智裕
    2026 年41 巻4 号 p. 111-118
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
    ジャーナル 認証あり

    肥満は過剰栄養に伴う慢性炎症状態として理解され,マクロファージを中心とする免疫細胞の活性化と炎症性サイトカイン反応を介し,肝臓をはじめとする臓器の代謝異常や線維化に関与する.消化器領域では肝臓での知見が先行してきた.膵臓は糖尿病の責任臓器であるにもかかわらず,肥満に伴う膵免疫環境の変化は十分に理解されていない.本総説では,膵脂肪沈着と局所炎症の関連,膵島におけるマクロファージ増加と機能的変容,脂肪酸と腸内細菌由来成分による自然免疫活性化について概説する.さらに我々が報告した高脂肪食が形質細胞様樹状細胞とI型インターフェロン応答を介して1型自己免疫性膵炎を悪化させる機序を紹介する.肥満と膵臓免疫の知見は膵島中心の解析に偏っており膵腺房領域における免疫恒常性破綻の機序は未解明である.肥満関連膵疾患の病態解明には「高脂肪食―腸内細菌叢―疾患感受性遺伝子―免疫反応のクロストーク」の理解が必要である.

  • 山崎 大
    2026 年41 巻4 号 p. 119-126
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    画像情報と臨床情報を統合した画像疫学の進展により,画像由来表現型(imaging-derived phenotype)が疾患リスクとなり得ることが明らかになってきた.膵内脂肪沈着(IPFD)はその代表例であり,超音波検査,CT,MRIにより評価可能である.過剰なIPFD,すなわち脂肪膵は一般住民において高頻度に認められ,約5人に1人が脂肪膵を有すると報告されている.またIPFDは生活習慣介入などにより改善可能であることも示されており,可逆的な疾患リスク因子として注目されている.近年,CTやMRIなどの医療画像を用いた大規模疫学研究により,IPFDが糖尿病,膵炎,膵癌のリスクと関連することが報告されている.さらに,遺伝情報を活用したメンデルランダム化研究により,IPFDと膵疾患との因果関係も検証されている.2026年には脂肪膵に関する国際コンセンサスが発表され,その臨床的意義が整理された.

  • 小島 柊, 鎌田 健太郎, 金子 麗奈, 岡本 真, 関根 匡成, 眞嶋 浩聡
    2026 年41 巻4 号 p. 127-133
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    脂肪膵は頻度の高い所見である.術後膵液瘻,糖代謝異常,急性膵炎,膵臓癌との関連を示唆する報告の集積で,その臨床的意義が明らかとなりつつある.定義・診断基準は統一されておらず,生検困難性や膵臓自体の不均一性などから非侵襲的な画像診断が中心となる.US/EUSはスクリーニングに有用だが定性的評価に留まり,CTはCT値や膵脾比などによる半定量評価が可能だが,撮像条件,ROI設定,参照臓器の選択が結果に影響する.MRIではDixon法に基づくproton density fat fractionにより膵脂肪が定量可能であり,有望な非侵襲的評価法の一つだが,膵特異的カットオフや標準化は未確立である.バイオマーカーも探索され,候補はあるものの臓器特異性から補助的情報に留まる.画像診断を軸に,測定法の標準化,画像所見と病理・代謝指標・転帰を統合した前向き研究による非侵襲的診断体系構築が今後の課題である.

  • 大塚 奈央, 中林 良太, 白田 龍之介, 石垣 賀子, 高山 敬子, 中井 陽介
    2026 年41 巻4 号 p. 134-140
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    膵癌,とくに膵管癌は依然として予後不良であり,高リスク群の同定と早期診断体制の確立が重要である.近年,膵内脂肪沈着(intrapancreatic fat deposition:IPFD),いわゆる脂肪膵が膵発癌との関連で注目されている.観察研究では脂肪膵と膵癌リスク上昇との関連が報告されているが,因果関係は確立していない.基礎的研究からは脂肪関連炎症や微小環境変化が腫瘍進展に関与する可能性が示唆されているものの,その臨床的意義は十分に整理されていない.

    脂肪膵は肥満や代謝異常と関連し,CTやMRIで評価可能であることから,将来的なリスク層別化の指標となり得る可能性がある.一方で,脂肪膵の改善が膵癌発生抑制につながることを示す前向き研究は存在しない.本稿では,臨床医の視点から脂肪膵と膵癌の関連を整理し,リスク評価への応用の可能性と今後の課題を概説する.

  • 柳町 幸, 中村 遼馬, 山一 真彦, 松本 敦史, 丹藤 雄介, 中村 光男
    2026 年41 巻4 号 p. 141-145
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    肥満に伴う膵脂肪蓄積は,単なる形態学的変化ではなく,動的な病態として認識されつつある.この状態は,慢性炎症や脂肪毒性といった機序を介して,膵の内分泌および外分泌機能の双方に影響を及ぼす.本稿では,脂肪膵が急性膵炎,慢性膵炎,膵癌,および2型糖尿病の発症および進展に関与することを示す最新のエビデンスを概説する.これらの疾患は,炎症,線維化,膵微小環境の変化といった共通の基盤を有する連続的な病態として理解されるべきである.脂肪膵は,代謝関連膵疾患の中心的な病理学的基盤として機能しうるとともに,肥満関連膵疾患に対する新たな治療標的となる可能性がある.

  • 濱田 晋, 菊田 和宏, 松本 諒太郎, 滝川 哲也, 田中 裕, 林 秀大, 阿部 敏明, 関野 泰幹, 正宗 淳
    2026 年41 巻4 号 p. 146-152
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    肥満は様々な疾患のリスク因子であり,膵疾患も例外ではない.膵炎の重症化や膵発癌リスクの増加は明らかであり,肥満に伴う代謝異常や臓器障害,微小環境中での炎症の持続がその要因と考えられる.高トリグリセライド血症による急性膵炎では治療介入による再発抑制効果が確認されている.肥満及び糖尿病治療薬は膵炎及び膵発癌リスクが予測されていたが,大規模なメタ解析により懸念は低下している.治療選択肢の増加により肥満症例の増加抑制が期待される.適正体重の維持が長期的な膵疾患の発症・重症化リスクを低減しうるか,今後の検証が待たれる.

  • ―とくに糖尿病改善効果―
    谷 眞至, 山口 剛, 前平 博充, 貝田 佐知子
    2026 年41 巻4 号 p. 153-158
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/11
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    減量・代謝改善手術の治療目標は,単に肥満患者の体重を正常範囲まで減少させることではなく,肥満に起因する健康障害(合併症)を軽減,進行停止,あるいは予防することにある.手術は,短期間での急速な体重減少と長期的な維持,そして2型糖尿病の高い寛解率を特徴としている.手術は,単なるエネルギー摂取制限だけでなくさまざまな要因が関与するが,膵臓や消化管ホルモンに及ぼす影響については依然として不明な点が多く,メカニズムの解明にはさらなる研究が必要と考えられる.肥満者においては,アディポネクチンやレプチンといったアディポカインの分泌状態が非肥満者とは著しく異なり,免疫機能への悪影響が示唆されているが,膵がんとの関連性については,今後の研究課題である.現在はGLP-1受容体作動薬などの新薬の開発も進んでおり,薬物療法と外科的療法を組み合わせた,いわゆる「集学的治療」のさらなる進展が期待される.

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