(1) 炭酸カルシウムスケールの析出は重炭酸カルシウムの分解によるもので次式で示される.
Ca (HCO
3)
2 (液) →CaCO
3 (固) +CO
2 (気) +H
2O (液) ……… (2)
析出速度はカルシウム濃度に大体1次, 重炭酸濃度に2次である.カルシウム濃度と, 重炭酸の分解による炭酸濃度の増加は炭酸カルシウムの過飽和濃度をあげ, その析出速度を大きくする.
(2) 水酸化マグネシウムスケールの析出は炭酸イオン (あるいは炭酸カルシウムの分解で生ずる炭酸イオン) の分解で増加する水酸イオンの作用による.つぎの反応式が成り立つ.
CaCO
3 (固) +MgSO
4 (液) +H
2O (液) →Mg (OH)
2 (固) +CaSO
4 (液) +CO
2 (気)(3)
析出速度はマグネシウム成分濃度が増加すると, またカルシウム成分濃度が減少すると大きくなる.溶液中のカルシウムイオン濃度が減ると炭酸イオン濃度が増加し (炭酸カルシウムの溶解積を一定と仮定), その分解による水酸イオンは増加するだろう.マグネシウムイオン濃度と水酸イオン濃度の増加は水酸化マグネシウムの過飽和濃度を高め, その析出速度は大きくなる.
(3)(3) 式の逆反応を用いて海水に正炭酸マグネセウム (水酸化マグネシウムと炭酸ガスとの代りに) を反応させカルシウム成分を炭酸カルンウムとして除去できる.この反応では過程は二段であつて, 6水炭酸カルシウム (?), 1水炭酸カルシウム, アラゴナイト, カルサイトが析出するが, その関係は複雑である.これは反応温度, pH, マグネシウムイオンどなの影響にあるらしいが, 加える正炭酸マグネシウム, また海水の不純物も無視できないかもしれない.
種結晶の添加は炭酸カルシウムの析出速度を大きくし, 一段過程の反応にする.これは当然である.その添加効果は1水炭酸カルシウム>アラゴナイト>カルサイトの順序である.これは種結晶の表面構造や表面積の差異から起るものであろう.なお以上について後で報告をする積りである.
抄録全体を表示