日本海水学会誌
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24 巻, 5 号
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  • 室谷 寛, 後藤 忠俊, 雨宮 礼子, 小川 和夫, 服部 暁聖, 城野 勝博
    1971 年 24 巻 5 号 p. 183-189
    発行日: 1971年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    (1) 炭酸カルシウムスケールの析出は重炭酸カルシウムの分解によるもので次式で示される.
    Ca (HCO3) 2 (液) →CaCO3 (固) +CO2 (気) +H2O (液) ……… (2)
    析出速度はカルシウム濃度に大体1次, 重炭酸濃度に2次である.カルシウム濃度と, 重炭酸の分解による炭酸濃度の増加は炭酸カルシウムの過飽和濃度をあげ, その析出速度を大きくする.
    (2) 水酸化マグネシウムスケールの析出は炭酸イオン (あるいは炭酸カルシウムの分解で生ずる炭酸イオン) の分解で増加する水酸イオンの作用による.つぎの反応式が成り立つ.
    CaCO3 (固) +MgSO4 (液) +H2O (液) →Mg (OH) 2 (固) +CaSO4 (液) +CO2 (気)(3)
    析出速度はマグネシウム成分濃度が増加すると, またカルシウム成分濃度が減少すると大きくなる.溶液中のカルシウムイオン濃度が減ると炭酸イオン濃度が増加し (炭酸カルシウムの溶解積を一定と仮定), その分解による水酸イオンは増加するだろう.マグネシウムイオン濃度と水酸イオン濃度の増加は水酸化マグネシウムの過飽和濃度を高め, その析出速度は大きくなる.
    (3)(3) 式の逆反応を用いて海水に正炭酸マグネセウム (水酸化マグネシウムと炭酸ガスとの代りに) を反応させカルシウム成分を炭酸カルンウムとして除去できる.この反応では過程は二段であつて, 6水炭酸カルシウム (?), 1水炭酸カルシウム, アラゴナイト, カルサイトが析出するが, その関係は複雑である.これは反応温度, pH, マグネシウムイオンどなの影響にあるらしいが, 加える正炭酸マグネシウム, また海水の不純物も無視できないかもしれない.
    種結晶の添加は炭酸カルシウムの析出速度を大きくし, 一段過程の反応にする.これは当然である.その添加効果は1水炭酸カルシウム>アラゴナイト>カルサイトの順序である.これは種結晶の表面構造や表面積の差異から起るものであろう.なお以上について後で報告をする積りである.
  • 本山 正夫, 門田 稔, 岡 俊平
    1971 年 24 巻 5 号 p. 189-196
    発行日: 1971年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海洋塩に関係のある多相平衡のうち, 塩化ナトリウムを含む系, 即ちNa, Mg Cl, SO4-H2O系, Na, K Cl, SO4-H2O系およびNa, K, Mg CL-H2O系の3個の4成分系とNa, K, Mg Cl, SO4-H2O系の1個の5成分系とに関する文献を主としてChemical Abstra-ctsにより調査し, そのうち塩化ナトリウムの飽和した1変系の溶液組成と液底体の種類とについて整理して表にまとめた. D'Ansの図表をもとに, 得られた文献のデータから50°~110℃の温度範囲の多温平衡状態図を作成した.液底体としてNaCl, Low., Lang.およびKies.が共存する点Yは110℃においても安定に存在し, その溶液組成は水1000mol当りNa2Cl223, 9, K2Cl211.1MgCl232.0およびMgSO411.5molであることを推定した.
  • 尾方 昇
    1971 年 24 巻 5 号 p. 197-212
    発行日: 1971年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水中のウランの分離および定量法について種々の改良を行ない, 次に海水ウラン採取の種々な方法を検討し, その中でもつとも効果的な方法の一つとしてチタン酸を用いる吸着法を中心にして研究した.海水中のウランの化学種を, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, Cl-, SO42-, F-, PO43, HPO42-, CO32-, OH-およびUO22+の安定度定数から求め, その大部分はであることを見出した.チタン酸による吸着機構は陰イオン吸着反応であると予測された.チタン酸によるウランの吸着は, チタン酸の種類, 海水温度, 接触海水量, 海水中のウラン濃度によつてほぼ決定される.チタン酸の調製には, 均一な酸性溶液中で調製されたチタン酸では吸着量が大きい.高温海水ではウラン吸着量は著しく増加するので, 原料海水は暖い海水が望ましい。最大吸着容量は分布係数とウラン濃度の積で求められる.実験的に得たチタン酸中のウラン吸着量の最高値はU/Ti=1550μg/gであり, 最高の吸着容量推定値はU/Ti=4200μg/gであつた.チタン酸からウランの脱着には塩酸を用いる方法がもつとも欠点がないと考えられる.最後に今後の課題を若干提起した.
  • 武本 長昭
    1971 年 24 巻 5 号 p. 213-216
    発行日: 1971年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    イオン交換膜法による海水濃縮 (かん水製造) において, 各陽イオンの選択透過率 [Ti; {かん水中のiイオン (N) /かん水中の全陽イオン (N)} / {海水中のiイオン (N) /海水中の全陽イオン (N)}] は, 膜, 装置, 透析条件に関係なくかん水の当量純塩率 [PNa;Na (N) /全陽イオン (N)] とそれぞれ直線関係にあることを明らかにした.したがつてかん水中の陽イオンの組成比 [Pi;iイオン (N) /全陽イオン (N)] は次式で示される.
    PMg=-0.8337
    PNa+0.8057PCa=-0.1795PNa+0.1797
    PK=0.01321PNa+0.01462この規則性は, 選択透過の機構に関する暗示に富み, たとえば膜内でのイオン移動は単にStokesの法則により説明できる可能性がある.なお一般にもちいられている3種のかん水純塩率をそれぞれ当量純塩率 [PNa;上記], 重量純塩率 [PNaCl;NaCl (g/l) /全塩分 (g/l)] および簡易純塩率 [P°; {Cl-(Mg+Ca)} (N) /Cl (N)] と名付けると, 相互の関係はおおむね次式で示される.
    PNa=0.989P°-0.015
    PNaCl=0.87lP°+0.095
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