前報で製法および基礎的性質を報告した, 非晶質のリン酸ジルコニウム, 縮合リン酸ジルコニウムおよびヘテロポリ酸のジルコニウム塩などについて, 海水, かん水を使用した場合の陽イオン交換反応におけるイオン選択吸着性を検討した.
1) 吸着反応時のpHが高いほど吸着量が増加する. しかしそのpHが4以上になると2価イオンの吸着量が急激に増加する.
2) 交換体の乾燥温度を60゜から200℃まで順次上げると, 2価イオンの選択吸着性が減少し, 吸着反応時の温度を上げた場合, 逆に2価イオンの選択吸着性が増大する. また結晶化度の進んだ交換体ほど温度変化に対する吸着量および選択性の変化が大きく, 非晶質な交換体ほど温度の影響が小さい.
3) 交換体相へのカリウムイオンの吸着速度は, 他のイオンに比べて最も早く, かつすみやかに吸着平衡に達する. それに対し, マグネシウム, カルシウムの吸着速度は, 反応液のpH, あるいは流下最などが増加するとそれに伴なつて急速に増加する.
4) 試験に用いた交換体試料のイオン選択吸着性は原料液の組成や塩類濃度および操作条件に関係なく, いずれもカリウムイオンの選択吸着性が最も大きい. またカリウムイオンの吸着量はピロリン酸ジルコニウムにイオン交換膜かん水を450m
l/g・交換体流下した場合に, 最高値を示し, 25mg/g・交換体に達する.
5) イオン選択吸着性は吸着条件, および原料液の濃度や組成などによつて変化するが, 基本的なK
+, Na
+, Mg
2+, Ca
2+など各イオンの選択性の大小の順序では, それぞれ個々の交換体に固有な一定の傾向を示し, それらは交換体の結晶化の程度や架橋度などによつてきまると考えられる.
6) イオン選択性を支配する要困として, 交換体の見かけ容積があり, その値が1cm
3/g以下であれば, 交換体相の吸着成分のうちナトリウムイオンがが, 1.1cm
3/g以上であればカリウムイオンが, それぞれ大きく, 見かけ容積によつてイオン選択吸着性を分類することができる.
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