海水中の有用溶存資源の採取技術の確立を目的として研究を進めている. その一環としてMo, Vの吸着採取について検討しており, 今回は両性のイオン交換性を示し, かつ海水中で安定である含水酸化チタンを吸着剤として用いた. その調製条件と物性および吸着性との関係ならびに両元素の吸着性の違いなどについて明らかにした. その結果を次のように要約する.
1) 含水酸化チタンを中和法で調製する場合, 調製pHが低いときはアナターゼ形, 調製pH9以上では無定形のものが得られた. アナターゼ形が無定形のものに比べて高い吸着性を示した. とくにMoの吸着量と結晶化度とは, ほぼ比例することが認められた.
2) 両元素のpH依存性は, Moの場合酸性領域で高い吸着率を示したが, pH6以上では急激に低下した.一方, VはpH5~9では高い吸着率を示した.これは両元素の溶存形態の相違によるものと考えられる.
3) 海水からの吸着機構を推定した結果, 10g
KdとpHとの関係ならびにエンタルピー変化から, Moはアニオン交換吸着であり, また, Vはイオン交換にょる吸着でないと考えられる.
4) 海水濃度での平衡吸着量は, Mo-40μg g
-1, V-240μg g
-1と算定された. 含水酸化チタンはVに対して有効な吸着剤である.
抄録全体を表示