供試した沖縄産のマングローブ4種の植物は, 葉の生育 (老化) とともにナトリウム, マグネシウム, カルシウム, 塩素等の無機イオンおよび有機酸の蓄積が増加した. カリウムは, 植物の生育の上で必須の元素であり, ヤエヤマヒルギ, メヒルギ, マヤプシキは若齢期の若葉中に最も含有量が多く, 生育とともに減少した. このことは, カリウムの必須元素としての特徴を示しているものであり生長の盛んな若い部位に移動してその生理作用を発現していることが推測される. 陽イオンの蓄積量が多いことは, 高塩濃度の環境下で生育する植物が生産する過剰の有機酸類を中和し, 植物細胞内のpH調節を行っているものと思われる. 逆に, 多量の無機陽イオンを取り込んだ結果, 有機酸の生合成を促進し過剰の陽イオンと反応し中性塩を形成し, 細胞内のpH調節を行っていることと思われる.
供試マングローブ葉中のABA量は, 植物種により異なるが葉中における各種イオンのバランスが正常生育における濃度範囲を越えたとき, ABAの生合成を開始するものと思われる.
供試した4種のマングローブ植物は, 根において海水中に溶けている各種イオンの選択的な吸収を行い, 吸収した各種高濃度のイオンを塩類として葉中に蓄積し, 終局はその葉を廃棄することにより高塩濃度の環境下においても生育ができるものと思われる.
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