共沈濃縮法を用いる海水中のニッケルの黒鉛炉原子吸光分析について検討を行い, つぎの結果を得た.
(1) 検水に鉄 (II) 共沈剤1mgを添加した後pHを7に調整し, DDTC沈殿剤0.1gを加えて30分間攪拌今れば100~1,000mlの検水中に溶存する微量のニッケルは定量的に共沈する.
(2) 共沈濃縮して得られた沈殿を硝酸 (1+12) 30mlを用いて30分間加熱攪拌することにより, ニッケルは完全に溶出し, この溶液を蒸発乾固したとち, 硝酸(1+25) 10mlを加えて再溶解するこのにより, GFAAS用の検液として使用できる.
(3) 50倍濃縮を行った場合の検出限界および定量下限はそれぞれ0.5と1.6μg/
lであった.
(4) 本法は海水中の共存物質による妨害を受けることなく微量のニッケルを共沈捕集できる.
(5) 数回の繰返し実験を行い, その平均値から検量線式にしたがって求めると海水中の1~2μg/
l程度のニッケルも検量線法で十分定量できる.
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