2種の酢酸セルロース膜について, 最大加圧圧力 (Max-ΔP) の増加に伴う膜内の自由水と結合水の性質および輸送係数 (L
p, L
pπ, σ, およびP) の変化を調べた. 膜の有する自由水量, および結合水量は示差走査熱量計 (DSC) を用いて求めた. 膜の圧密化に起因する輸送係数と膜含有水の変化との関係を考察した. 2種の酢酸セルロース膜 (F-30膜およびF-50膜) は, それぞれ塩排除率90%以上, および50%以下の性能をもつものである. 実験はMax-ΔP 20, 30, 40, 50, 60, 80, および100kg/cm
2の各圧力において行われた.
F-30膜およびF-50膜の膜含有水量の変化は同様な傾向を示した.自由水量はMax-ΔPの増加に従って順次減少した. 結合水量の変化は自由水量と比較して小さくMax-ΔP 60kg/cm
2までほば一定値を示し, 60kg/cm
2以上で減少した.
Max-ΔPが増加するに従って膜内の自由水の融点が低下することが認められた. 膜の圧密化によって膜の細孔の半径が減少し, かつ, 水と膜材質との相互作用が生じるために自由水の性質が変化 したものと考えられる.
膜の圧密化に伴うF-30膜およびF-50膜の輸送係数の変化を調べることによって, Max-ΔP 60kg/cm
2で加圧処理した膜が, 最も溶質選択性が良いことが確認された.
60kg/cm
2以上では膜が緻密になり, 濾過係数L
pが減少しているにもかかわらず, 溶質透過係数.Pが大きくなり, 膜の溶質選択性は低下することが認められた. 膜の弾性限界を越える加圧処理に伴う結合水量の減少によって, 膜性能が低下するものと思われる.
圧密化に伴う高い溶質選択性を示すF-30膜のL
pおよびL
pπの変化は膜内の結合水量の変化と関係があることが認められた. 一方, 低C11い溶質選択性を有するF-50膜のL
pの変化は全含水量の変化と関係があり, L
pπの変化は結合水の変化 と同様な傾向を示した.
Max-ΔPの増加に伴うF-30膜 のσの変化は結合水の性質が変化するためであろう. F-50膜のσの値は全含水量に対する結合水量の割合が最大になるMax-ΔP 60kg/cm
2において最大値を示した.
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