イオンクロマトグラフィーを塩分析に適用するため, 測定条件および精度について検討し, 以下の結果が得られた.
1) 試料50μlで塩化ナトリウム濃度0.2% (塩化物イオン0.0605mg) まで適用可能であり, 塩中の臭化物イオン, 硫酸イオンの同時定量に適用できた.
2) 塩中の臭化物イオン定量では, UV検出を行うことにより, 塩化物イオンの影響の除去, また感度の上昇がはかられ, 電気伝導度検出より正確性, 繰返し精度においてすぐれていた.
3) 高塩分濃度, 高感度でのデータ処理はピーク面積よりピーク高さで行うほうが繰返し精度は良好であった.
4) 特級塩化ナトリウム試薬中の臭化物イオン定量に応用した結果, 臭化物含量は29~70mg/kgであった.標準試薬は13mg/kg含まれていた.
5) 本法とKolthoff-Yutzy法 (臭化物イオン), クロム酸バリウム法, メチレンブルー法 (硫酸イオン) によって海塩試料の分析を行い, それぞれの定量値はほぼ一致した.
これらの結果からイオンクロマトグラフィーは塩分析に適用できることは明らかである.これによって従来法のような煩雑な前処理操作を行わず, 簡単な希釈操作だけで数種のイオンが定量できるため分析時間の短縮, 有効活用が行えること, また, データ情報の増加がはかられる等のメリットが得られた.
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