日本海水学会誌
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47 巻, 1 号
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  • イオン交換膜電気透析における赤潮の動態 (第1報)
    小暮 誠, 佐藤 利夫, 田中 龍夫, 田中 良修, 鈴木 喬
    1993 年 47 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    典型的な植物プランクトンであChattonella antiquaを破砕し, その内容物を懸濁した食塩水溶液を脱塩室に供給する系において電気透析を行い, 赤潮内容物が電流密度に与える影響を検討した. また, 脱塩室から流出する透析液のpH, 限界電流密度およびイオン交換膜面上に付着した内容物を分析することにより, 陽膜, 陰膜に優先的に付着する内容物の特定とそれが限界電流密度に与える影響を検討した. その結果, 陰イオン交換膜の面付着物はおもにクロロフィルα-タンパク質複合体とフェオフィチンα-タンパク質複合体であり, この複合体により限界電流密度が著明に減少することが明らかとなった. しかし, 陽イオン交換膜の限界電流密度に対する赤潮の寄与は非常に小さく, 付着はほとんど認められなかった.
  • チーズホエーの脱塩に関する考察
    平岡 康伸, 袴家 淳雄, 大矢 晴彦
    1993 年 47 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究を要約すると, 以下のようになる.
    1)イオン交換膜による同符号イオンの選択透過係数は, 脱塩処理の前後における各イオンの濃度比の対数の比で表すことができた.
    2)チーズホエーを, 還流付電気透析法によって脱塩する場合のコンピュータシミュレーションを行った. 脱塩液の導電率に比例した電流を通電する方法での電流値設定用比例係数α=1.3×102A・S-1・m-1で脱塩した場合, 選択透過係数TNaK=2.78, TNaCa=2.27, TNaMg=1.69は一定であると仮定した. ナトリウムイオンのモル分率は, 脱塩の進行とともに上昇し, カリウムイオン, カルシウムイオン, マグネシウムイオンのモル分率は減少した. 育児用ミルク製造に適する灰分含量まで脱塩処理を行うと, 望ましい灰分組成と比べ, ナトリウムイオンは多いが, カリウムイオン, カルシウムイオン, マグネシウムイオンは少なくなりすぎた. これは, 各イオンはナトリウムイオンより透過しやすいため, 脱塩が進むにつれ各イオンが先に透過するためである. この変化は, 通常の電気透析装置よりも還流付電気透析装置のほうが, 還流付電気透析装置の中では室教の多いほど, また等しい室数の場合クロス型よりもストレート型のほうが, 大きくなった. これは, イオン交換膜をイオンが透過する回数が多くなるほど選択的な透過がより多く行われるためである.
    3)14室還流付電気透析装置を使用して, 育児用ミルクの製造に適した灰分組成を有する脱塩ホエーを得るためには, クロス型の場合, 使用するイオン交換膜の選択透過係教は, TNaK=0.89, TNaCa=0.79, TNaMg=0.59, ストレート型の場合, TNaK=0.91, TNaCa=0.82, TNaMg=0.63でなくてはならないことがわかった.
  • 牛久保 明邦, 竹島 征二, 高井 康雄
    1993 年 47 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    地球環境問題の一つである地球温暖化に寄与する温室ガスは, 二酸化炭素, メタン, 亜酸化窒素などである. その寄与割合は, 49%が炭酸ガス, 17%がメタンとされている. メタンは, 近年大気中の濃度が年間1.1%以上という急速な割合で増加し, また温室効果に対するポテンシャルが二酸化炭素の32倍で, 生物作用の寄与が大きいメタンは, 温暖化の原因物質として最近急に注目を浴びつつある.
    ICPP (気候変化の政府間パネル) の報告によると水田, 湖沼, 沼沢地および沿岸域などの湿地帯がメタン発生源の45%を占めていると計算されている. 高井の研究 (1960) では, 湛水下のメタン発酵は, 硝酸還元, マンガン還元, 鉄還元, 硫酸還元などが行われた後に生起する点を明らかにしている. この点から推測すると海水・汽水の影響を受けている沿岸域では, 有機物が供給された場合還元状態下で硫酸イオンを微生物の受容体とする硫酸還元が卓越することが予想される6).
    このことを証明するために, 本研究においては, 河川水から有機物が供給されるとともに, 河口から海水が供給されて淡水と混合する汽水域を対象として硫酸還元菌とメタン生成細菌の相互作用について検討した. 干潟から採取した堆積物と各種濃度に海水を薄めた溶液をいれた注射筒を30℃で72日間インキュベートした. その結果, 硫化物生成量の大小は, 海水区>海水1/2区>海水1/4区>脱イオン水区の順で, 硫酸イオンを多量に含む海水区で硫化物の生成がもっとも急速に多量に起こった. メタン生成量は, 硫酸イオン含量と対応し, 硫酸イオンが多いと硫酸還元が盛んとなリメタン生成量が減少する逆比例の関係を明らかにした.
    汽水域で海水が淡水で希釈された場合の化学組成の変化についても検討した. 淡水として, 河川水および脱イオン水を用いた. いずれの希釈においても海水中の硫酸イオンは希釈倍率に比例して低下する傾向を示した. また, Na+,K+,およびCa2+イオンにおいては希釈効果が認められ, 高希釈倍率ほどその濃度低下は顕著であった.
    なお, この研究は, ソルト・サイエンス研究財団1990, 1991年度の研究助成を受けた記して謝意を表する.
  • 二次イオン質量分析法による食塩中の微量成分に関する研究(第1報)
    党 弘之, 新野 靖, 有田 正俊
    1993 年 47 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    SIMSを食塩中の微量成分の分析に応用することを目的に一次イオンにO-を用いて正の二次イオンを検出する方法の検討を行い, 次の結果を得た.
    1)溶融法および凍結乾燥法によって三次元的に均一な標準試料を調製することができた.
    2)塩化ナトリウムマトリックスおよび海塩成分の二次イオン種とその相対イオン強度を明らかにした.
    3)アルカリ金属, アルカリ土類金属およびアルミニウムの相対イオン強度が大きかった.
    4)検出限界は相対イオン強度の大きい元素が低く, 特にリチウムでは4×10
    -1
    ppbを示した.
    5)リチウム, カリウム, マグネシウムおよびカルシウムの定量分析を検量線法で行った結果, SIMSの分析値は従来法と大きな差はなく, リチウムでは従来法で検出不可能であった濃度においても測定することができた.
  • 二次イオン質量分析法による食塩中の微量成分に関する研究(第2報)
    党 弘之, 有田 正俊
    1993 年 47 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    SIMSを食塩中の微量成分の分析に応用することを目的に, 一次イオンにCs+を用いて負の二次イオンを検出する方法を検討し, 次の結果を得た.
    1)塩化ナトリウムマトリックスおよび海塩成分の二次イオン種とその相対イオン強度を明らかにした.
    2)相対二次イオン強度はハロゲン元素, 炭素, 酸素, リンおよびイオウが大きかった.
    3)検出限界は相対イオン強度の大きい元素が低い値を示した.
    4)フッ素, 臭素, ヨウ素およびリンの定量分析を検量線法で行った結果, SIMSの分析値は従来法と大きな差はなく, フッ素, ヨウ素およびリンはイオンクロマトグラフ法で検出不可能であった濃度においても測定することができた.
  • 樅山 巌
    1993 年 47 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 滝 千博
    1993 年 47 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    純チタンは, 耐食性が高く製塩プラント環境では隙間腐食を除き完璧な耐食性を示す. また, 隙間腐食に関しても耐食性チタン合金 (TICOREX 等) を用いることにより完全に防ぐことができる. コスト面でも, 熱交換器1台当たりの単価は, 銅合金やステンレス鋼で製作した場合と, チタンで製作した場合とであまり差がなくなってきており, 今後, 製塩プラントにチタンが盛んに使用されてゆくものと考える.
    近年, 人件費等の高騰もあり, 保守点検をなくすメンテナンスフリーがプラント機器において重要な要因となりつつある. 製塩プラントにチタンを採用することは, まさにこのメンテナンスフリーに近づくことである. 実用例のところで述べたステンレス鋼の腐食問題を, 今後, 材料メーカ, プラントメーカ, 製塩メーカの3社が協力して乗り越えてゆくことにより, オールチタン製製塩プラントが将来できるものと確信する.
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