省資源・省エネルギー海水総合利用システムのサブシステムであるスケール成分除去システムの研究を行った. スケール成分としては海水に含まれるアルカリ土類のうちCa
2+, Mg
2+を対象とし, その濃度をそれぞれ400ppmから150ppm, 1350ppmから500ppmまで低下させる手段としてイオン交換樹脂吸着法を採用した. また省資源・省エネルギー海水総合利用システムでは, 高効率化のために有用成分を回収した後の廃水 (高濃度の食塩水となることが予想される.) を捨てることなく, 吸着剤の再生に用いることが想定されている. そこで本システムに適用可能な有機吸着剤として, Na型スチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂, Na型アクリル系カルボン酸性弱酸性陽イオン交換樹脂を合成し, それぞれの樹脂についてバッチ法, カラム法でCa
2+, Mg
2+吸着・脱着特性等を検討し, 次の結果を得た.
(a) モノマーとしてスチレン (St), メタクリル酸メチル (MMA), アクリル酸メチル (MA), アクリル酸エチル (EA), アクリロニトリル (AN) を用い, 懸濁重合法により粒径0.3mm-0.6mmのイオン交換樹脂を得た. イオン交換容量は架橋度8%のSt-DVB, EA-DVB樹脂で, それぞれ1.1, 1.4[meq/ml-Resin] であった.
(b) 濃縮 (NaCl) 模擬海水を用いてスケール成分吸着後の樹脂の再生実験を行い, 上記イオン交換樹脂よりNa型スチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂, Na型アクリル系カルボン酸型弱酸性陽イオン交換樹脂を選別した.
(c) 本実験で合成した樹脂がNa
+-Ca
2+系においてCa
2+選択吸着性を持ち, 海水濃度付近ではEA-DVB樹脂が最も高い吸着性能を持つことが分かった. 一方, St-DVB樹脂はCa
2+の脱着性能に優れていることが分かった.
(d) 吸着・脱着の長期的な繰り返し使用が可能であることが確認された.
(e) カラム法での破過流量はEA-DVB樹脂が最も多く, カラム法での吸着特性に優れていることが分かった. St-DVB樹脂は脱着速度が大きく, カラム法での脱着特性に優れていることが分かった.
本システムで実際に用いる場合, カラム法が想定される. カラム法での結果より吸着性能はEA-DVB樹脂が優れているが, 脱着性能はSt-DVB樹脂が優れており特に架橋度2%のものが最も優れている. 最適樹脂を選定する際には, 本システムの特徴から考えると吸着性能もさることながら脱着性能が重要である. しかし, 吸着性能を重視するためにSt-DVR樹脂の架橋度を2%まで下げていったが, 2%のものでは吸着量が少なくなりすぎてしまい4%以下に架橋度を下げることの有意性はみられなかった. そこで, 総合的に判断すると架橋度4%のスチレン系スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂が本システムにおいての最適樹脂であると考察される.
抄録全体を表示