海岸生態系に影響を与える陸域生態系から河川に流入した物質の河口域における挙動を明らかにするために, 泥炭, リター, 水田土壌および厩肥の水懸濁液を用いて有機物や各種元素の海水との混合に伴う量的および質的変化を室内実験により調べた.
(1) 同重量あたりの不溶性および水溶性有機物 (沈殿しにくいコロイドを含む) の河川への流入量は, 泥炭および厩肥でそれぞれ高く, 水田土壌で小さいと推察された.有機物の海水との混合に伴う沈殿は, 泥炭ではいずれも90%以上と高く, 一方, 厩肥ではわずか7%未満であった.
(2) Pは主に有機物結合態として検出され, 厩肥で多く, 水田土壌以外では海水との混合に伴い急激に減少した.
(3) 粘土粒子結合態の割合が大きかったFeの濃度は泥炭や水田土壌で高かったが, その多くは海水濃度5%で沈殿除去された.
(4) MnやZnは海水濃度0%時に遊離態の占める割合が他の元素よりも高く, 複数の試料で海水濃度の増大に伴い, 不溶性有機物結合態粘土粒子結合態の減少と遊離態, 水溶性有機物結合態の増加が検出された.これらの結果は沈殿した物質から海水により抽出が起こったことを示唆した.
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