本研究では, 飼育水中の細菌相の変化が二枚貝幼生の生残および成長に与える影響について検討するため, イタヤガイ幼生を対象に, 換水方法を変えた場合の飼育水中の全生菌数と細菌の属組成を調査した.
浮遊幼生の飼育は, 500L円形水槽を用い, 連続微流水換水飼育系 (流水系) と止水換水飼育系 (止水系) の2つの換水方法により行った.
海洋細菌の分離および計数にはZobell-2216E平板培地を用い, グラム染色試験, 運動性試験, O-F (Oxidation-Fermenntation) 試験, 塩類要求性試験, DNA分解性試験, 発光性試験, オキシダーゼ試験および寒天分解性試験の計8項目の試験により属の同定を行った.
幼生の生残, 成長とも, 止水系は流水系より高かった.飼育水中の全生菌数は, 両系ともほぼ類似した変動傾向を示したが, 属組成では, 全飼育期間を通して, 流水系は止水系に比べて, 各属の占有率が大きく変動する, 安定性の低い状態にあった.
このことから, 水中の全生菌数よりも細菌の属組成の変化が幼生の生残および成長に大きな影響を与えること, および, 幼生に良好な影響を及ぼす属組成は, 複数の属を含む安定性の高いものであることが推測された.
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