日本海水学会誌
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56 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 松永 勝彦
    2002 年 56 巻 6 号 p. 425-431
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    私達の体内に酸素を運んでいるヘモグロビンの中心元素は鉄である. 私達が鉄なしで生られないと同様, 他の生き物も鉄なしでは生られない. 無機鉄の化学形態は粒子状であるが, 森林の腐植土から溶出するフルポ酸はカルボキシル基等多くの基を有していることから, 鉄を錯化し溶存形に変える. 沿岸海域の光合成生物, たとえばコンブや植物プランクトンの生育・増殖等には, 河川から流入するフルポ酸鉄が極めて重要である. また, 熱帯や亜熱帯ではマングローブが食物網の炭素源として極めて重要であり, 海の生物を増やすには, 陸と海の森林がともに重要であることを明かにした.
  • 貧酸素マーカーとしてのエリスロポエチン
    角田 出
    2002 年 56 巻 6 号 p. 432-439
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水の貧酸素化がマコガレイの生理機能に及ぼす影響を調べる (実験I) と共に, その生理指標を用いて海域の貧酸素状況を捉える方法を検討した (実験II).
    実験Iでは, 窒素曝気によって水中の溶存酸素濃度 (DO) を6, 4および2mg/Lに低下させた.また, 4mg/LDO群では, 7日間の低酸素負荷後, DOを通常レベルに回復させた.その結果, 6mg/LDO群では測定項目に有意な変化は認められなかったが, 4mg/LDO群では, 赤血球数が2, 12時間, 7日目に, 血漿コルチゾル濃度は2, 12時間目に, 腎臓EPO濃度は1日目以降に, それぞれ対照群に比べて, 有意に高い値となった.7日目には, 肝臓ATP含量が減少し, AMP含量は増加したため, 肝臓のアデノシンリン酸エネルギー値{AEC値: (ATP+1/2ADP)/(ATP+ADP+AMP)}は有意に低下した.DOを通常レベルに回復させた場合, 赤血球数および肝臓のArpとAMP含量が1日目に, 腎臓のEPO濃度は3日目に, それぞれ, 対照群の値に戻った.コルチゾル濃度は, 2時間目にのみ, 対照群に比べ有意に高い値を示した.
    2mg/LDO群では, 7日間の実験期間中に約11%の魚が死亡した.赤血球数は2, 12時間, 1, 7日目に, コルチゾル濃度は2, 12時間, 7日目に, 腎臓EPO濃度は12時間以降に, それぞれ, 有意に高い値となった.コルチゾル濃度と腎臓EPO濃度は4mg/LDO群よりも高くなった.肝臓ATP含量は1日目から減少し, AMP含量は3日目に増加したため, 同AEC値は3日目から有意に低くなった)
    実験IIでは, 2001年の7~8月 (夏季) と12月 (冬季) に東京湾と気仙沼湾の奥部および仙台湾東部海域で捕獲したマコガレイの腎臓EPO濃度を調べた.その結果, 冬季には上記3ヵ所で捕獲した魚の値に差はなかったが, 夏季では, 東京湾および気仙沼湾の魚に, 仙台湾に比べ有意に高い値が認められた.
    以上の結果は次のことを示唆する: (i) マコガレイ腎臓のEPO濃度は4mg/L以下のDOに, 半日から1日間, 曝されれば有意に上昇する.当該変化は海域の貧酸素化の程度を反映する.海水の貧酸素化は魚に強いストレス反応を誘起すると共に, 体内のエネルギー量を著しく減少させる.(ii) 腎臓Epo濃度は, 魚が一旦貧酸素環境に曝されるとDOが回復しても2, 3日間は高い状態にあり, 捕獲ストレスや汚染等による影響も受けにくいと考えられるため, 海水の貧酸素化を捉える指標として有望である.(iii) 東京湾や気仙沼湾の奥部で夏季に捕獲されたマコガレイは, 少なくとも半日から1日, DOが4mg/L以下の貧酸素環境に曝されていた可能性が高い.
  • 石川 匡子, 熊谷 昌則, 陳 介余, 張 菌, 松永 隆司
    2002 年 56 巻 6 号 p. 440-447
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    秋田県男鹿半島沿岸5地点, 大分県鶴御崎間越海岸の計6地点において周年に渡り繰り返し採取した海水のそれぞれについて, 主要無機成分濃度, 味覚センサ応答値を測定した. その結果, 主要無機成分濃度はいくつかの地点を除き, 場所間並びに採水時期による変動が認められた. 無機成分濃度と味覚センサ応答値との間には相関関係が認められ, 海水成分による呈味変化を評価する上で, 味覚センサは有効な手段であると確認できた.
  • 須藤 雅夫, 市川 祥久, 岡島 敬一, 鈴木 款
    2002 年 56 巻 6 号 p. 448-456
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    近年, 大気中の二酸化炭素 (CO2) による地球温暖化が注目されている) このCO2循環を明らかにするためには, CO2移動の推進力としてのpCO2 (CO2分圧) を空間時間的に高密摩で測定する必要がある. ブイや小型船舶での測定が有効であることから, 簡便な操作で小型設備でのpCO2測定が望まれている. このセンサーは, 光ファイバー, 蛍光pH指示薬 (Hprs) 溶液, 気体透過膜の中空糸から構成されている.
    本論文では, 流通型センサーの応答速度と感度などの応答性能を実験し, プローブ型センサの既報の結果と比較した. 流通型センサの応答特性は, 中空糸内の指示薬の滞留時間の影響を受けた. 内径0.5mmのシリコーン中空糸SIRAで, 指示薬の流速が0.26ml/minの場合, 水中のpCO2が200-600ppmvを測定するのに6m以上必要だった. 水中のCO2が膜を通して指示薬溶液中に拡散するための滞留時間は, 4.5min以上必要だった. 膜の長さが8mの時, 蛍光強度は8.5minで飽和した. 蒸留水と海水でのセンサー応答の差はなかった. 蛍光強度は, 温度の低下に対して減少した. 環境中のpCO2を中空糸を用いる流通型センサーで数日間連続的に計測し, NDIRで測定されたpCO2の結果と比較し, 温度補正により良い相関が得られた.
  • 永井 紀彦
    2002 年 56 巻 6 号 p. 457-470
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    This paper introduces characteristics of waves and tides as physical phenomena, and coastal observation system of waves and tides in Japan. Although waves and tides are both periodical sea-surface motion, as their periods are different, different methods are applied for their observation.
    NOWPHAS (Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS), Japanese coastal wave observation system, are mainly consist of the sea-bed installed type wave gauges. Due to the development of the Doppler-type Wave Directional Meter (DWDM) and continuous tsunami and infra-gravity wave observation and analysis system, and due to the establishment of the Coastal Wave Center (Coastal Wave Information Department of the Coastal Development Institute of Technology), NOWPAHS made remarkable changes during the last decade.
    Tidal observation has been conducted mainly by using the Float-type Tide Gauges all over the Japanese coasts with installation of tide wells. Recently new simple tide observation methods without necessity of tide well construction are studied and developed such as the On-air-type acoustic tide gauge.
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