日本海水学会誌
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56 巻, 1 号
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  • DNA傷害防護と修復機構
    寺東 宏明
    2002 年 56 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 豊崎 俊幸, 坂根 康秀
    2002 年 56 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    油脂の過酸化におけるNaClの関与についての報告はほとんどない. そこで本研究は水系, エマルション系および酵素系における脂質過酸化反応において, NaClの存在がどのような影響を与えているものかを, 抗酸化効果を主眼において検討し, 併せてNaCIが脂質過酸化反応に対してどのような機構で作用しているものかを追跡した. その結果, 水系, エマルション系および酵素系のいずれの系もNaCIが脂質過酸化に対して抗酸化効果を有することを確認した. また, NaClの抗酸化作用については以下の機構が考えられた.
    LH+NaCl+O2→LOO・+HCl+Na+
    LOO・+LH→LOOH+L・
    LOOH+HCl→LO・+H2O+Cl-
    酸素存在下において脂質 (LH) から水素が引き抜かれペルオキシラジカル (LOO・) となる. 同時にNaClは解離し, Na+とCl-となり, Cl-は脂質から水素を引く抜きHClとなる. ペルオキシラジカルは新たに脂質から水素を引き抜きヒドロペルオキシ ド (LOOH) とな り連鎖反応が開始される. その反応によりヒドロペルオキシドが蓄積されるが, 同時に生成されたHClがヒドロペルオキシドを分解することで, 生成されるラジカルの生成を抑制し連鎖反応が阻止される. このことから, NaCIが存在する水系, エマルション系および酵素系のいずれの系においても抗酸化効果のあることが確認された.
  • I.初期有機物濃度依存性
    大西 由香, 藤井 実, 村重 慎一郎, 湯沢 篤, 宮坂 均, 鈴木 款
    2002 年 56 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海水中での有機物分解過程に対する初期有機物濃度の影響を調べるため, 室内実験系において植物プランクトン (珪藻Skeletonema costatum) を用いた有機物分解実験を行った. 実験では培養した植物プランクトンと天然海水中の分解・捕食者を混合し, 光合成の起こらない暗条件・恒温 (20℃) 下に数週間置いて, 有機物分解の経時変化を観察した. 初期有機物濃度は, 培養した植物プランクトンを実験海水に加え, 全有機炭素濃度 (Total organic carbon: TOC) として4.1mg-C/L, 9.8mg-C/L, 26mg-C/L, 73mg-C/Lを設定した。 環境条件の指標として水温, 塩分, 溶存酸素, pHを測定し, 有機物分解過程の解析のために全菌数, 粒子状有機炭素 (Particulateorganic carbon: POC) と粒子状有機窒素 (Particulate organic nitrogen: PON), 溶存態有機炭素 (Dissolved organic carbon: DOC) 濃度について測定を行った. POCの分解過程は, 分解速度定数および回転時間の違いにより, 分解開始から20日目までと20日目以降に分けることができた. 分解開始から20日目までと20日目以降の分解における回転時間は各々9~11日, 29~88日となり, それぞれ易分解性と準難分解性有機物に相当した. このことから準難分解性のPOMが存在することや, POMの分解過程における分解速度定数及び回転時間は濃度依存性がないことが明らかとなった. 初期有機物濃度の違いによらず, 初期TOC濃度に対して約10%が, 準難分解性のPOCとして残存した. よって, 珪藻 (Skeletonema costatum) を構成している有機物のうち, 約10%が準難分解性の粒子状有機物 (Particulate organic matter: POM) である可能性が示唆された.POMのC/N比の経時変化や生成される準難分解性POMのC/N比は, 濃度依存性がなかった. DOCの変動パターンも濃度依存性がなかった. また, 分解の進行に伴いPOMからDOM画分への移行が確認されたが, その大部分が蓄積することなくバクテリアによって無機化されることや, DOMの一部が無機化されることなく準難分解性有機物として残存する可能性が示唆された.
  • 大石 修治, 飯田 大輔, 鈴木 孝臣, 宍戸 統悦
    2002 年 56 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    塩化ナトリウムをフラックスとした高温溶液 (900℃) を徐冷 (5℃/h) して, 無色透明なモリブデン酸カルシウム結晶を育成した.生成した結晶の形態は, 八面体状あるいは針状であった.八面体状結晶の大きさは最大3mm, 針状結晶は最長5.2mmに達していた.結晶の大きさは溶質濃度に依存し, 結晶育成に最適の溶質濃度は3mol%であった.塩化ナトリウムに対するモリブデン酸カルシウムの溶解度も測定した.塩化ナトリウムは, 環境にやさしくモリブデン酸カルシウム結晶を育成するのに適したフラックスである.
  • 沢村 正義, Anas Khairul FAZIAN, 受田 浩之
    2002 年 56 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    海洋深層水の食品化学的特性を明らかにするために, 寒天ゲルレオロジーに及ぼす深層水および他の水媒体 (表層水, 食塩水, 深層水の脱塩水および超純水) の影響を調べた. また, 糖としてグルコース, フルクトースおよびスクロースの0, 20, 30, 40%溶液について検討した. ゲル組成のあらゆる組み合わせについてゲルの硬さおよび強度について測定し, 統計処理をした. 深層水では表層水に比べてほとんどの場合, ゲル特性が有意に高かった. しかしこれらのゲルの硬さと強度については糖の種類と濃度により違いがみられた. 深層水ゲルの硬さと強度が有意に高かったのは、20%グルコース、20%と30%フルクトース、および30%スクロースのゲルであった。これらのレオロジー特性に及ぼす要因として, pHおよびリン酸濃度の違いが示唆された.
  • 福田 高士, 山内 昭
    2002 年 56 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    膜内に2種類の異なる荷電基をもつ荷電モザイク膜において優先的な電解質輸送特性が明らかにされてきたが (負の反射係数), 本研究では更に異なる条件下での物質輸送を調べた. 即ち, 対象とする膜の一方にKCl, もう一方にスクロースを加えた系で, 両相の溶質の当量濃度を等しくし, みかけ上両相問に浸透圧が発生しない系を設定した. その系の体積流束および塩流束をKCl濃度の関数として測定し, 更に膜の溶媒/溶質透過性を示す反射係数を求め, KCl/水系と比較した. その結果, KCl/水系に比べてKCl/スクロース系の体積流束は大きく, 塩流束は小さく現れた. これは溶質の膜を介した拡散に伴う水の移動と生じた溶質濃度差による浸透平衡のずれを補償するための水移動が体積流束の増加となって現れたものと推測された. そのため, KCl/水系に比べて小さな塩流束もスクロース側に大量に移動した溶媒である水の希釈効果が現れたものと思われる. 一方膜物性を反映する膜パラメーターである反射係数は両系でほぼ同じ値を得た. 全体として脱塩効果はKCl/水系に比べて弱まる結果となった.
  • 山口 善敬, 中口 譲, 秦野 善行, 荒木 祥子, 今中麻 幸代, 高柳 和史, 坂見 知子, 紀本 岳志, 平木 敬三
    2002 年 56 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    内湾における溶存有機物質の起源を解明する事を目的とし, 1999年11月および2000年6月に三重県五ヶ所湾において採取した試料中の栄養塩, 溶存有機炭素, 溶存単糖の定量および三次元励起・蛍光スペクトルの測定を行った. 2000年6月には湾内の栄養塩濃度が1999年11月と比較して極めて低く, 両採水時期において湾内の植物プランクトンの活動に明確な違いが認められた. さらに, 溶存有機炭素濃度や溶存単糖濃度も同様に2000年6月の方が高濃度であった, また, 3次元励起・蛍光スペクトルの調査により五ヶ所湾試料水中にはPeak A (励起波長/蛍光波長=305~325/400~420nm), Peak B (励起波長/蛍光波長冨345~365/450~470nm) およびPeak C (励起波長/蛍光波長=275~280/345~355nm) の三ヶ所に蛍光極大ピークが認められた. 各ピークの起源を調査した結果, Peak AおよびPeak Bは陸水起源でありPeak Cは湾内で生産された生物起源粒子を起源としているものと推定した.
  • 宮井 良孝, 梅野 彩, 加納 博文, Ramesh CHITRAKAR, 坂根 幸治, 大井 健太
    2002 年 56 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    リチウムの吸着速度を向上させるために多孔性粒状吸着剤の調製法について検討した.即ち, 多孔化剤として塩化ナトリウムを用いて粒状吸着剤に微細孔を形成させた.
    多孔化粒状吸着剤は以下のような処理により調製した.先ず, 前駆体 (Li1.33Mn1.67O4) と粉末状塩化ナトリウムをミキサーを用いて30分間処理して均質な混合物を得た.次に, PVC (バインダー) をDMFに溶解し, これに混合物を加えて混練した.この混練物を試作造粒装置に入れ, 液中硬化法で造粒した.得られた粒状前駆体を水洗して塩化ナトリウムを溶出除去して微細孔を生成させた.次いで, 0.5M HCl溶液中に3日間保ってリチウムを溶出し, H型の多孔性粒状吸着剤を調製した.
    海水からのリチウムの吸着速度を求めた結果, 多孔化剤の添加率は3%以上の場合に吸着速度が向上し, 有効性が認められた.
    リチウムの吸着速度に及ぼす粒径の影響は大きく, 吸着時間31日でのリチウム吸着量は粒径0.50-0'71mmの場合20mg/g, 粒径0.71-1.00mmの場合18mg/g, 粒径1.00-1.40mmの場合16mg/gであった.多孔化吸着剤は無処理吸着剤に比べて1.2倍程度の吸着速度の向上が認められた.
    吸着時間比とコスト比との関係を概算で求めた結果, 吸着速度が2倍に向上するとコストは58%に低減でき, 吸着速度が1.2倍の場合, 80%程度に低減できると予測された.
  • 全反射赤外減衰法による自動組成測定システムを用いるかん水組成測定工程試験
    眞壁 優美, 吉川 直人, 永谷 剛, 久田 知之, 石橋 照也
    2002 年 56 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    製塩工程の自動化, 省力化を目的として全反射赤外減衰法による組成測定法を用いるかん水の自動測定システムを構築し, 赤穂海水 (株) においてかん水組成測定の工程試験を実施した. その結果, ナトリウムイオン, 塩化物および硫酸イオンについては分析値と比較して測定値の変動は同程度であり, 安定的で高精度な測定が可能であった. マグネシウムイオンについては分析値と比較して測定値の変動は大きく, 精度の良い測定は困難であった. また, 26時間トラブルなしの連続自動測定を実現し, 本測定システムの信頼性を確保することができた.
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