平距離60mに相当する潮位 (実験1) と, 模型が完全に水没し水面が河口に至る潮位 (実験II) の2通りである.この2通りの潮位について4通りの実験を行った.それは (1) 模型を置かない,(2) 水平水路にマングローブ植栽平坦面を1段配置する,(3) 植栽平坦面を2段配置する,(4) 2段の平坦面にマングローブを想定する粗度を与える, の4通りである.波や流れは与えていない.供給する基底流量, 赤土懸濁水濃度及び供給時間は全て同一条件となるよう努めたが, 実験毎に若干の差異を生じた・
測定は条件に関する水槽水温, 塩分濃度, 供給開始前の赤土懸濁濃度及び拡散状況を把握するために水槽の底に配置した49枚のシャーレに沈殿した赤土の乾燥重量, 模型の水平水路・第1段平坦面・第2段平坦面に沈殿した赤土の乾燥重量である: また, 水槽内の赤土の流動・拡散状況を固定カメラで定時に, 移動カメラで適宜撮影した.
濁水流入量や水槽内の流動条件が同一であれば, 49枚のシャーレに沈澱する量の各実験の平均値は実験1でもIIでも,(1)≧(2)≧(3)≧(4) の順に多いと予想される.しかし結果は, 実験1では (1)≧(2)≧(4)≧(3) の順に, 実験Hでは (3)≧(4)≧(1)≧(2) の順になった.実験1の (1) の平均値は格段に大きく,(4) と (3) との逆転も数値の差は小さい事から, 水平水路及びマングローブ植栽平坦面の効果は明らかに示されている.模型が完全に水没する実験IIでは, 流入する濁水は直接塩水中に拡散するので, 水平水路及びマングローブ植栽平坦面の効果が不明瞭である.
水平水路及びマングローブ植栽平坦面の模型の各部位に沈澱・捕捉された赤土の総量と単位面積当りの量及び計算で求めた赤土流入量に対する百分率は, ほぼ (4)≧(3)≧(2) の順になっており, 実験I条件下で効果は大きく, いずれの条件下でも植栽平坦面を増やしマングローブに相当する粗度が加わる方が効果的な事は明確に示された.
抄録全体を表示