人口爆発による食糧危機の回避するためには, 四方を海に囲まれた我が国では沿岸・浅海域の資源環境保全と水産増殖機能を強化することが不可欠である.この観点から著者らは, 沿岸・浅海域の資源環境を劣化させている石炭灰 (Fly ash;EA), 石炭殻 (Clinker ash;CL) の投棄の問題, 浅海域からの骨材資源の採取の問題, さらに産業副産物の問題をリンケージさせて解決するとともに, これらの問題を引き起こしている廃棄物を利用した藻礁用コンクリートブロックを開発し, 逆に沿岸・浅海域の資源環境保全と水産増殖機能を強化する研究を行っている.
前報では, セメント, FA, CL, 鋳物廃砂, ゼオライト等の配合材料および配合比を種々変えた薄片供試体, 中型角柱供試体を試作し, 強度試験, 溶出安全性試験, 生物易付着性試験を行った基礎的検討結果を報告した.本報は前報の結果を踏まえて作成した3種の配合材料が異なる大型供試体を試作し, 実際に海域に沈設して経年的に藻類現存量を測定し, 藻礁基盤としての有用性を実証的に検討した結果について述べる.
Plain (普通のコンクリート), FA & CL (EAとCLを骨材として配合したコンクリート), FA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂 (FA.とCLの他にセオライト, Fe含有鋳物廃砂を配合したコンクリート) の3種類のコンクリートブロック供試体を作製し, 各供試体5個を一群とし水深5mの試験海域に平積み2段にして沈設し, 沈設1年9ヶ月後まで計4回の潜水調査を行った.藻類現存量はコドラート法, 生物蝟集特性はライントランセクト法により調査・測定した.
その結果, EA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂ブロックの現存量は, Plain, FA & CLと同等かそれよりも高く良好な藻類着生・成長性を示した.さらに隣接の自然石投石による藻場造成域と比較しても現存量は高く, EA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂ブロックは藻場造成を促進させる良好な藻類基盤iになることが明らかとなった.
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