食塩粉末の固結過程のモデルとして,NaCl単結晶の間を食塩水溶液で橋架けし,それが固体に変わる様子を光学顕微鏡で観察した.室温で水分が蒸発すると溶液が過飽和になるが,低湿度で蒸発が速いと溶液表面で生成した小さな結晶がつながって固体架橋に至ることもある.通常は結晶基板/溶液/空気の接する三相の境界部から基板面の成長が起こり,上下から溶液表面に沿って筒状に伸びた結晶が接合して橋が架かる.このとき筒の内部は溶液で満たされており,長時間放置すると接合部から溶液が滲みだして食塩の開花成長が起こる.-10℃の低温で同様の実験を行うと,溶液中で二水塩結晶(NaCl·2H
2O)の生成が見られた.この結晶の成長に伴う体積変化を考慮し,食塩の低温固結のメカニズムを提案した.固結防止剤であるK
4[Fe(CN)
6]を加えて常温での架橋実験を行ったところ,架橋壁には無添加の場合と比較して多くの孔ができた.媒晶効果により架橋先端面が平坦にならず,欠陥の多い構造になると考えられる.固結防止剤のうち水分保持効果を持つCaCl
2は,結晶粒子の接触部で水を液体状態に保持し固体架橋を防ぐこと,被覆効果を持つ塩基性炭酸マグネシウムは,粒子同士の接触を防いで毛管凝縮を防ぐことを確認した.
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