日本海水学会誌
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63 巻, 4 号
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第60年会を終えて
巻頭言
特集:「海水の科学の多様性-分子から大洋まで-」
解説
総合論文
  • 柘植 秀樹
    2009 年 63 巻 4 号 p. 237-246
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    温暖化ガスと見なされている炭酸ガスの固定化は日本の緊急の課題である.著者らは炭酸ガスの固定化法として,工場などからの煙道ガス中に含まれる炭酸ガスを,海水中の溶存資源と反応させ炭酸塩として固定化する方法について検討した.
    本論文では海水中の溶存塩類のうち,マグネシウム並びにリチウムと炭酸ガスの反応晶析実験について述べる.炭酸マグネシウムは食塩の固結防止剤,炭酸リチウムはリチウムイオン電池などの原料として需要は大きい.
    まず,水酸化マグネシウムと炭酸ガスの反応晶析による塩基性炭酸マグネシウムの生成過程を検討した.さらに,反応温度と水酸化マグネシウムの初濃度の塩基性炭酸マグネシウム粒子の性質に及ぼす影響,固結防止剤としての性能について明らかにした.
    次に,海水から得られるリチウム濃縮液と二酸化炭素より炭酸リチウムを定常法で反応晶析させた.反応晶析にはMSMPR型晶析装置を用い,水酸化リチウム初濃度,反応温度,攪拌回転数などの操作因子が晶析特性に及ぼす影響について検討した.
    今後こうしたプロセスの実用化を行うためには,生成物のフィージビリティ・スタディと,ニーズの更なる開発が必要である.また,温室効果ガスである炭酸ガスの固定化などの環境問題への取り組みが,企業の社会への貢献(CSR)として注目されており,少しでも本研究がこの点で貢献できればと思っている.
報文
  • 藪谷 智紀, 山岡 徹, 福田 晃規, 中村 斎, 林 由佳子, 本仲 純子
    2009 年 63 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    本研究ではマグネシウムコロイドの凝集と限外ろ過法を利用した超微量金属イオンの濃縮を試みた.河川水自身に含まれるレベルのマグネシウム1.5mg dm–3の条件下で,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Y,Cd,希土類元素に関して90%以上の回収率を得た.コロイド熟成時間はアルカリ添加後10分で十分な回収率を与えることが分かった.
    本法を河川水標準物質SLRS-4(カナダ国立研究所頒布)試料に適用した.この河川水標準物質中のマグネシウム由来のコロイドにより微量元素を回収し,ICP-MSで定量した結果,推奨値および参考値とほぼ一致した.実試料として,吉野川(徳島県)河川水に応用したところ,共沈剤を加えることなく23元素の定量が可能であった.
  • 中口 譲, 藤田 昭紀
    2009 年 63 巻 4 号 p. 253-268
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    本研究は生体活性微量金属の全海洋分布を解明するGEOTRACESプログラムの一環として行われた.海水試料は最新のクリーンサンプリング技術を用いて日本海より採取した.生体活性微量金属の分析は高精度機器分析技術を用いて行われた.市販キレート樹脂固相抽出/ICP-MS法による海水中の生体活性微量金属定量法を確立した.濃縮操作途中の汚染をチェックした.標準海水試料NASS-5を用いて新分析法の精度をチェックした.分析値は公定値とよく一致した.日本海海水試料中のFe, Cd, Cu, Zn, NiそしてCoを測定した.Fe, Cd, Niは栄養塩型分布を示した.2つの測定点において2000m以深のFeの平均値は他の試料採取や北太平洋深層水よりも著しく高い濃度であった.この原因は大陸からの大気由来のFeフラックスの違いによるものと考えられた.Cdと栄養塩の間に高い正の相関性が認められた.Cdとケイ酸との相関係数rはCdとリン酸のそれよりわずかに高い.この結果は溶存Cdは有機質物質と骨格物質双方の分解によりもたらされていることを示唆した.Niの分布および挙動はCdと類似していた.
  • 岩元 和敏
    2009 年 63 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/06/14
    ジャーナル フリー
    Na形陽イオン交換樹脂を白金電極間に充填し,高純度水を循環させながらインピーダンス測定を行った.加える交流の実効電圧を一定に保ち周波数を1MHzから20Hzへ変えながらインピーダンスを測定し,複素平面上に図示したところ,高周波数領域で傾き45°の直線になることが示された.周波数が60Hzくらいまで下がると45°より大きな傾きをもつ第二の直線上に突然移動し,それに沿って変化するようになる.一方,20Hzを出発点として周波数を上げながら測定すると,インピーダンスは第二の直線にそって150Hzまで変化し,そこを超えると第一の直線にジャンプした.すなわち,ヒステレシスが観察された.加える交流の実効電圧Eeffを10mVから800mVの範囲で変化させながら,インピーダンスに対する電圧の効果を調べた結果,正のフィードバック機構は第二の道筋と関連していることが示唆された.
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