温暖化ガスと見なされている炭酸ガスの固定化は日本の緊急の課題である.著者らは炭酸ガスの固定化法として,工場などからの煙道ガス中に含まれる炭酸ガスを,海水中の溶存資源と反応させ炭酸塩として固定化する方法について検討した.
本論文では海水中の溶存塩類のうち,マグネシウム並びにリチウムと炭酸ガスの反応晶析実験について述べる.炭酸マグネシウムは食塩の固結防止剤,炭酸リチウムはリチウムイオン電池などの原料として需要は大きい.
まず,水酸化マグネシウムと炭酸ガスの反応晶析による塩基性炭酸マグネシウムの生成過程を検討した.さらに,反応温度と水酸化マグネシウムの初濃度の塩基性炭酸マグネシウム粒子の性質に及ぼす影響,固結防止剤としての性能について明らかにした.
次に,海水から得られるリチウム濃縮液と二酸化炭素より炭酸リチウムを定常法で反応晶析させた.反応晶析にはMSMPR型晶析装置を用い,水酸化リチウム初濃度,反応温度,攪拌回転数などの操作因子が晶析特性に及ぼす影響について検討した.
今後こうしたプロセスの実用化を行うためには,生成物のフィージビリティ・スタディと,ニーズの更なる開発が必要である.また,温室効果ガスである炭酸ガスの固定化などの環境問題への取り組みが,企業の社会への貢献(CSR)として注目されており,少しでも本研究がこの点で貢献できればと思っている.
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