Synthesiology
Online ISSN : 1882-7365
Print ISSN : 1882-6229
ISSN-L : 1882-6229
2 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
研究論文
  • - 境界領域「地震考古学」の開拓 -
    寒川 旭
    2009 年 2 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    考古学の遺跡発掘調査で地震の痕跡が見つかることが多いが、従来は調査の対象とされずに見逃されていた。筆者は、1988年に「地震考古学」を提唱し、遺跡の地震痕跡を用いた研究方法を広く普及させた。これによって、考古学と地震関連分野との境界領域が開拓されて様々な成果が得られた。南海トラフで発生する巨大地震について過去2千年間の発生年代がわかり、次の発生を考える基礎資料となった。内陸の活断層による地震痕跡も数多く見出されており、京阪神・淡路地域では1596年慶長伏見地震での地盤災害が詳しくわかった。液状化現象についても、遺跡での観察結果から新しい知見が得られた。また、地震痕跡は一般市民にも理解しやすいことと、マスメディアにも取り上げられる機会も多いことなどにより、地震災害軽減のための活動へ大きく寄与している。
  • - 計量トレーサビリティ体系の構築と標準化 -
    大澤 尊光, 高辻 利之, 佐藤 理
    2009 年 2 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    近年、製造業では効率的なものづくりを行うため、設計、製造、評価の全過程で一貫したデジタルデータによる作業が行われている。製品の形状の評価に多用される三次元測定機は製品の質を確保するための重要な要素の1つであるので、形状測定の信頼性を向上させるため、長さの国家標準にトレーサブルな校正体系を我が国に構築し、あわせて校正方法の標準化を行った。この中で産総研は高精度の国家計量標準を開発するだけでなく、三次元測定機の校正事業者のための技術基準を作成し、また地域の公設研究所に技術支援を行って我が国全体の三次元測定の信頼性を向上させた。これらの活動は、我が国産業界における三次元測定の精度を世界トップレベルとすることに貢献している。
  • - 全方向ステレオカメラを搭載したインテリジェント電動車いす -
    佐藤 雄隆, 坂上 勝彦
    2009 年 2 巻 2 号 p. 113-126
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    全方向のカラー画像と三次元情報を同時かつリアルタイムで取得する能力を持つ「全方向ステレオカメラ」を電動車いすに搭載することにより、高齢者や障害者はもちろん、全ての人が安心で安全に、しかも最小限のエネルギー消費かつ低公害で、歩行者とも共存しながら移動可能とすることを目指した新しい知的モビリティーを提案する。
  • - 難燃性マグネシウムの研究開発 -
    坂本 満, 上野 英俊
    2009 年 2 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    輸送機器の分野では、省エネルギーと二酸化炭素排出量の低減に直結する技術革新が喫緊の課題となっている。この要求に対して機器の軽量化は直接的な効果をもたらすことから、軽量で高機能の構造材料が求められている。マグネシウム合金は、その有力な候補として長らく期待されてきた材料であるが、容易に発火するという致命的な問題を有していた。難燃性マグネシウム合金は、発火性を抑制して金属材料としての実用性を飛躍的に高めた材料である。これを低環境負荷の基幹材料として育成することは、輸送機器の軽量化のための技術革新に大きく貢献する。本稿では、実用化に関わるさまざまな技術課題の解決を通じて、新素材の産業化のための1つの方法論を述べる。
  • - 新規バインダー技術の開発 -
    渡利 広司, 長岡 孝明, 佐藤 公泰, 堀田 裕司
    2009 年 2 巻 2 号 p. 137-146
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    地球環境保全の観点から、セラミックス産業においても製造プロセスにおける投入エネルギーの削減が強く望まれている。本研究では、現在稼動しているセラミックスの製造プロセスを対象にした省エネプロセスについて検討を行った。研究開発にあたっては、既存プロセスへの適用、既存装置の利用、低コスト化、機能・特性の維持等の条件を設定した。適用可能なプロセス技術の検討および抽出により、セラミックスの製造プロセスの省エネ化には有機バインダー量の低減化もしくはゼロ化が極めて有効であり、その結果新規バインダー技術の開発を進めた。得られた知見は民間企業との共同研究を通じて既存生産ラインへ適用され、投入エネルギー量の大幅な削減に生かされている。
  • - 高度な診断・診療のためのバイオ分子検出技術の開発 -
    藤巻 真, 粟津 浩一
    2009 年 2 巻 2 号 p. 147-158
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    特定の物質の存在を高感度で検出するセンサーは、医療や創薬、環境などの分野でその高機能化が切望されている。我々は、診断、診療のための高性能なセンサーを目指し、基本技術として導波モードを用いた高感度分子センサーの開発を行った。本センサー開発において、我々は、ナノ穴形成技術の適用、光学シミュレーションと実験結果のフィードバック、検出板作製工程の見直しを経て、センサーの高感度化、安定化に成功した。本稿では、これらの研究シナリオ及びシナリオ実現に用いた要素技術、各要素技術の構成方法とそれにより達成したセンサー技術の特性に関して述べる。また、ブレイクスルーによって得られた飛躍的な検出性能の向上についても報告する。
  • - 励振モデル;研究者の活動とマネージメントの相乗効果 -
    中村 治, 大花 継頼, 田澤 真人, 横田 慎二, 篠田 渉, 中村 修, 伊藤 順司
    2009 年 2 巻 2 号 p. 159-169
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    公的機関の研究成果が社会に認知され、大きな影響を与え、産業変革につながっていった「PAN系炭素繊維」を取り上げ、この顕著なイノベーションの過程の中で、その核心にある旧大阪工業技術試験所および研究者の行動を中心に、(1)研究者の意識、(2)研究テーマ設定に係る研究者と研究管理者(マネージメント)の意識、(3)研究成果の発信と受け手の態勢、(4)研究成果活用のための人的及び情報ネットワーク、の観点から、その実相を検証した。さらに、一連のプロセスの構造化を図ることにより、イノベーションモデルとして『励振モデル』を提案する。
インタビュー
座談会
  • 赤松 幹之, 居村 史人, 加藤 大, 岡崎 敬, 菅沼 直俊, 松廣 健二郎, 大橋 昇, 長田 英也, 河合 信次, 大木 康太郎, 遠 ...
    2009 年 2 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    産総研では、所内のポスドクをイノベーション人材として育成する「産総研イノベーションスクール」を2008年7月31日に開講しました。本座談会は、最終講義の一つとして2009年3月に実施したものです。スクールの受講生に、これまで刊行されたSynthesiologyの中から興味を持った論文を選んで読んでいただきました。自分の研究に関係あるテーマを選んだ人もいますし、全く違う分野のテーマを選んだ人もいますが、ユーザーの視点や、製造するためのコスト、安全性、環境負荷等々の広い観点から、自分の研究を見る手がかりになっています。ここでは、なぜその論文を選んだのか、論文のポイントは何か、普段読んでいる学術論文とどう違うのか、Synthesiologyから何を読み取ることができたか、価値ある点はどこか、今後、Synthesiologyに何を期待するかについて討論しました。
編集委員会
feedback
Top