日本原子力学会和文論文誌
Online ISSN : 2186-2931
Print ISSN : 1347-2879
ISSN-L : 1347-2879
3 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 改良界面追跡法を用いた二相流直接数値解析手法の開発
    吉田 啓之, 永吉 拓至, 小瀬 裕男, 高瀬 和之, 秋本 肇
    2004 年 3 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    Although subchannel codes are used for the thermal-hydraulic analysis of fuel bundles in nuclear reactors from the former, many composition and empirical equations based on experimental results are needed to predict the two-phase flow behavior. When there are no experimental data such as the reduced-moderation water reactor (RMWR), therefore, it is very difficult to obtain highly precise predictions. The RMWR core adopts a hexagonal tight lattice arrangement with about 1mm gap between adjacent fuel rods. In the core, there is no sufficient information about the effects of the gap spacing and grid spacer configuration on the flow characteristics. Thus, we start to develop a predictable technology for thermal-hydraulic performance of RMWR core using advanced numerical simulation technology. As part of this technology development, we are developing advanced interface tracking method to improve conservation of volume of fluid. In this paper, we describe a newly developed interface tracking method and examples of the numerical results. In the present results, the error of volume conservation in the bubbly flow is within 0.6%.
  • 永井 崇之, 小林 雄一, 田中 仁
    2004 年 3 巻 3 号 p. 242-248
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    現在,高速増殖炉(FBR)サイクル実用化戦略調査研究をはじめ,NaCl-2CsCl溶融塩を用いた酸化物電解法による乾式再処理プロセスの研究開発が行われている。酸化物電解法プロセスは,U, Puを酸化物(UO2, PuO2)として回収するロシア原子炉科学研究所(RIAR)で開発された技術であり,その後,核拡散抵抗性の観点から,PuO2単独回収を避けるため,RIARでの混合酸化物(MOX)燃料製造技術であるMOX共析電解技術を適用したプロセスに改良された。
    酸化物電解法プロセスでは,NaCl-2CsCl中に溶存するU, Puの酸化物イオン(UO22+, PuO22+)を酸化物(UO2,MOX)として電解析出させることから,NaCl-2CsCl中に酸素イオン(O2-)が共存する。また,MOX共析工程では,NaCl-2CsCl中へ酸素ガスを吹き込み,酸素イオン濃度を高めることにより,NaCl-2CsCl中のPuをPuO22+に安定させた状態でMOXを析出させることから,NaCl-2CsCl中に酸素ガスが溶存する。このため,酸化物電解法プロセスのNaCl-2CsCl中に溶存する核分裂生成物(FP)イオン等は,酸素イオンや溶存酸素による影響を受けると考えられる。なお,金属電解法乾式再処理プロセスで用いられるLiCl-KCl溶融塩については,酸素イオンが共存する場合,溶存する希土類元素イオンはオキシ塩化物を形成して沈殿することが報告されている。
    また,乾式再処理プラントを想定した場合,建設および運転コストを削減するため,酸化物電解法プロセスでは乾燥空気雰囲気の適用が期待できる。しかし,従来の研究開発は,水分や酸素の濃度を大幅に低く抑えた乾燥Arガス雰囲気で実施されており,乾燥空気雰囲気における溶融塩中の溶存イオンの挙動は明らかにされていない。特に,雰囲気中の水分が溶融塩中へ混入した場合,水分が酸素イオンの供給源になるため,乾燥空気雰囲気を適用するには,雰囲気中の水分濃度による影響を確認しておく必要がある。
    そこで,筆者らは,乾燥空気雰囲気でSmCl3を添加したNaCl-2CsCl中へ乾燥空気を吹き込み,吸収スペクトル測定および電気化学測定によりSm3+濃度の変化を評価した。また,空気吹込みによって生成した析出物を回収し,X線回折(XRD)により析出物の同定を行った。なお,SmCl3は,酸化物電解法プロセスのNaCl-2CsCl中にFPとして含まれており,筆者は,溶存イオン濃度のその場測定手法の研究開発として,ディファレンシャルパルスボルタンメトリー(DPV)によるNaCl-2CsCl中のSm3+濃度測定の可能性を評価している。
  • 黒澤 進, 茨木 希, 上田 真三, 油井 三和, 吉川 英樹
    2004 年 3 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    放射性廃棄物の地層処分システムの安全性を検討する際,核種移行評価の観点からは,ベントナイト系緩衝材の浸食等に起因して生成するコロイドや,地下水中に天然に存在するコロイドの影響評価は重要な検討項目の一つである。実験室やフィールドにおける研究では,核種がコロイドに収着して擬似コロイドを形成した場合,核種の移行はイオンの場合の移行特性と異なり,コロイドの移行特性に伴って促進されることが観測された例もある。したがって,地層中における物質移行には,地下水中のコロイドの存在が大きく関与すると考えられ,核種移行評価に関しては,核種―コロイド―岩盤間の分配係数を設定した核種移行解析モデルが提案されている。また,核種―コロイド―岩盤間の収着はそれら3相の性質に大きく依存して反応速度が異なることが報告され,核種移行解析モデルにおいてはその収着プロセスの記述に関して速度論を考慮することなどが提案されている。
    そこで,本研究では,前報に続き,核種―コロイド―岩盤間の分配係数を設定した核種移行解析モデルの適用性に関する検討を目的とし,核種移行挙動に及ぼす核種の収着反応速度の影響について実験と解析を通じて評価を行ったので報告する。
  • 片西 昌司, 國富 一彦, 辻 延昌, 前川 勇
    2004 年 3 巻 3 号 p. 257-267
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    A design study program on the Gas Turbine High Temperature Reactor (GTHTR300) is being carried out in Japan Atomic Energy Research Institute (JAERI). Design of structures, systems and components which have fundamental engineering safety functions, such as shutdown of reactor, maintaining the coolability of reactor, prevention of the release of radioactivity, has progressed in this program. Coolability must be maintained even when a depressurization accident occurs which is the most severe event with loss of cooling function. The passive cooling system by using natural circulation of air was chosen because of simplicity of the system and its low cost. Cooling panels consisting of rectangular ducts were adopted after detail investigation on the capability of heat removal and on the structural integrity under high pressure condition during depressurization accident. This is an original design which is different from cooling panels in High Temperature Engineering Test Reactor (HTTR) of JAERI. Results of design study on performance of heat removal and structural integrity of passive cooling system of the GTHTR300 are described in this paper.
  • 遠田 正見, 矢板 由美, 酒井 仁志, 蜂須賀 仁
    2004 年 3 巻 3 号 p. 268-278
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    In blasting decontamination, alumina or steel grit has been used as conventional blast material. The problem with such existing materials is the decreasing of blasting performance during the repeated use due to their diminishing hard- ness. Consequently, a lot of waste grit is generated as secondary waste.
    In order to solve this problem, airconia has been selected because of its high strength and spherical shape. A repeating test in which blasting is executed 300 times and a decontamination test were performed using actual waste materials to confirm the applicability of zirconia grit.
    More than 90% of zirconia grit kept the initial performance after being used 300 times. Zirconia exhibited durability superior to that of alumina which was broken in the course pf several repetitions of use. Moreover, the decontamination performance of zirconia grit has been confirmed to be equivalent to that of alumina grit.
    From the results, zirconia grit is expected to be applied to the decontamination of metal wastes.
  • 中塩 信行, 中島 幹雄, 平林 孝圀
    2004 年 3 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    原子力施設で発生する多種多様な低レベル放射性固体状廃棄物(以下,雑固体廃棄物)は施設の敷地内等に保管され,その保管量は2001年3月末では200リットルドラム缶換算で約91万本に達している。今後は,老朽化した原子力施設の廃止措置に伴う廃棄物も大量に発生することから,最終的な処分に対応できる効果的な廃棄物の減容処理方法の確立が必要である。
    雑固体廃棄物の溶融処理は,減容比が大きいこと,放射性核種を固化体内部に閉じ込めて安定化できること,放射能分布の均一化ができること等により,有望な減容安定化処理方法として注目されている。国内外で様々な溶融処理技術が開発されているが,加熱手段としては高周波加熱を用いる方法とプラズマ加熱を用いる方法の2つに大別される。これまでに,国内の原子力発電所では,導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式と回転炉床式のプラズマ溶融加熱方式が導入されている。日本原子力研究所東海研究所(原研)では,2003年2月に高周波誘導加熱方式の金属溶融設備とプラズマ溶融加熱方式の焼却溶融設備によって構成される高減容処理施設が完成した。
    将来的な放射性廃棄物処分のためには,廃棄体に含まれる放射性核種濃度を正確に検認する必要がある。発電所で発生した廃棄体の放射性核種検認に当たっては,スケーリングファクタ法等の簡易法が適用されるが,様々な研究機関における研究開発で発生した放射性廃棄物は,様々な放射性核種が含まれていること,廃棄物の性状,含まれる放射性核種の濃度も一様ではないことなどの特徴を有することから,発電所廃棄物と同様の簡易法は必ずしも適用できない可能性がある。したがって,溶融処理により放射能分布の均一な固化体を製作することは,放射能検認分析を容易にするうえで極めて重要である。
    本研究では,均一な溶融固化体の製作手法に資することを目的とし,高周波誘導加熱とプラズマ加熱を併用するハイブリッド加熱方式および導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式の2つの溶融方式によって50L規模の溶融固化体を製作した。ハイブリッド加熱方式は,導電性の金属廃棄物を高周波誘導加熱で,非導電性の非金属廃棄物をプラズマ加熱で効率的に溶融するために用いた。
    製作した8体(各方式4体)の固化体のうちの6体は,別に報告されている浸出試験に供された。浸出試験に供されなかった2体と浸出試験に用いた6体のうちの2体について,固化体性能評価を行うために解体し,固化体のモルタル充填状況や放射性核種の分布状態および固化体性状の変化を調べた。
  • 石山 新太郎
    2004 年 3 巻 3 号 p. 288-297
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    現在,日本原子力研究所(以下,原研と称する)では,将来の4GW級核融合動力炉(A-SSTR II: AdvancedSteady State Tokamak Reactor II)の概念検討を進めている。この原子炉の特徴は,炉内ブランケット加熱部で1,073~1,173Kに加熱した冷却ヘリウムガスによるガスタービン発電システムにより50%の高効率発電を目指している点であり,このシステムにおけるブランケット圧力容器や壁の設計に耐熱性低放射材である炭化ケイ素材料(SiC)を採用している。
    一方,現在稼働中の軽水炉型原子炉の将来における廃炉処理作業中に発生する放射化材料の処理処分問題は,今後,原子力を取り囲む大きな問題となる。そのため,動力炉への低放射化材料の積極的導入を図ることを目途に材料開発を進めることは極めて重要な研究開発課題の一つであり,このことは核融合動力炉についても例外ではない。
    そのため,核融合動力炉の設計においては上記ブランケット構造のほかにも,現在,真空容器などの大型構造体用の高マンガン鋼やチタン合金などの低放射化材の研究開発などが積極的に進められている。また,さらにダイバータ構造体では,高温プラズマと直接接触することから炉内構造物で最も過酷な使用条件に晒されることから,上述の大型構造体中最も高い頻度で交換を要する機器である。2002年に工学設計を終了した国際核熱融合実験炉におけるダイバータ構造設計では,プラズマと直接接触する部位(ダイバータプレートと称す)は,2~15MW/mm2の高熱負荷を受けるため,高熱伝導性C/Cコンポジット製アーマータイル(炉心プラズマと直接接触するタイルで,熱伝導率≧60W/m・K(中性子照射による劣化を考慮)および強度≧500MPa)と,冷却チャンネルを有する銅合金製冷却基板をこのタイル受熱部裏側でろう接した構造となっているが,将来このダイバータプレートをすべてSiC化することができれば,低放射化とともにダイバータ構造体を軽量化することができ,この部位の補修/交換ならびにその保管が非常に容易になることが予想される。
    しかしながら,そのためにまずアーマータイル部材料としては,高エネルギーイオン粒子照射によって生じる帯電による絶縁破壊や熱衝撃破壊に対する耐性が必要であることから,この部位には電気伝導性のほかに高温における強度・靭性に優れ,さらに熱伝導率の高いSiC材料が要求される。
    次に,ターゲットプレートの冷却基板については,除熱のため冷却基板中に高圧冷却水を流すので高強度/高密度で,かつ銅合金なみの熱伝導性能を有する材料であることが要求される。
    一方,ケイ素系材料の開発においては現在,次世代SST (Super Sonic Transport;超音速旅客機)やHST(Hyper Sonic Transport)の開発において従来のNi基超合金に変わり,比強度および耐熱性のさらに優れたMo-SiやNb-Siなどのシリサイドの研究開発が進められているが,比重差および融点差の問題から均一溶解の問題やケイ素の共有結合や結合力の異方性に起因した靭性の欠如が問題となっている。
    そこで本研究では,炭化ケイ素ナノ粉末を添加した多結晶ケイ素マトリックス材Si/xSiC-MMC (Metal MatrixComposite)をアーマータイルとし,さらにこのタイルを高熱伝導性BeO添加SiC製の冷却基板にろう接して,試作したダイバータプレートに実機相当の高熱流束を負荷した場合のこの試作体の健全性および除熱性能に関して検討を行うことを目的とした。
  • 立地地域と都市地域における比較
    高橋 玲子, 中込 良廣
    2004 年 3 巻 3 号 p. 298-306
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    現代社会は「飽電の時代」にあるといわれているように,電力の消費地(都市地域)においては,人々は日常生活のなかで無意識のうちに豊富なエネルギーの恩恵に浴している。一方,遠隔の原子力発電所の所在地(立地地域)においては,交付金支給や雇用誘導などの利益がもたらされているが「迷惑施設」に対するNIMBY (Not In My BackYard)感情も発生している。結果として,電力の生産地である立地地域と消費地である都市地域の間には一種の「産消問題」が誘発され,これがわが国の原子力の推進計画にも少なからず影響を与えている。また,立地地域と都市地域の間には,原子力技術に対するリスク認知や原子力事業主体に対する信頼感に,さらに立地地域相互の間においても安全性などに対する認識に,それぞれ相違のあることが確認されている。
    本稿では,このような地域における人々の意識の違いを解明するための一助として,複数の立地地域と都市地域を調査対象に選び,地域住民の意見を多面的な視点から比較した。これまで著者らは,新エネルギー(太陽光や風力など)に対する選好イメージ,政策への意見反映の考え,生活における価値観など心情的な要因が原子力利用に関する人々の意識に影響することを明らかにしている。今回の調査では,アンケート調査により上述の観点から個々の地域における意見の特徴を把握したうえで,これらの意見の背景をより明確にするために直接回答者に面接を行う訪問調査を実施し,これら2つの調査を通じてそれぞれの住民の持つ意識について分析を試みた。
  • 乾式再処理から発生する塩廃棄物の処理への適用
    佐藤 史紀, 明珍 宗孝, 照沼 仁, 新井 修
    2004 年 3 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    核燃料サイクル開発機構(JNC)では,高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化候補概念の構築を目的に,関係機関の参画を得ながら,FBRサイクルの実用化戦略調査研究(FS)を進めている。JNCでは,このFSにおける再処理技術の候補として,溶融塩を用いた乾式再処理法に関する研究開発を実施している。
feedback
Top