太平洋セメント研究報告
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2003 巻, 144 号
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巻頭言
論文
  • 細川 佳史, 平尾 宙, ハッサン ジバラ, 山田 一夫, 杉山 隆文
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 3-12
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     浸せき法や電気泳動法により求められる拡散係数を用いて塩化物イオン浸透予測をする上で必要な,これらの相関関係を明らかにすることを目的として,理論的背景の整理および実験により求めた拡散係数の理論的考察を試みた.その結果,塩化物イオン吸着平衡が線形あるいは非線形かで,それぞれ浸透予測方法が異なり,線形の場合は塩化物イオンの固定化を考慮した拡散方式の解析解として,通常使われる誤差関数で表わされた式が使用可能であるが,非線型の場合は拡散方程式を数値的に解く必要があることを理論的に示した.また塩化物イオン吸着平衡が線形という条件下にて実験結果を理論に基づき検討し,各測定方法によって求めた拡散係数から,高炉セメントの塩化物イオン固定化能が高く低熱セメントの塩化物イオン固定化能が低いことを明らかにした.さらに塩化物イオン固定化能と電気泳動の拡散係数による塩化物イオン浸透予測の可能性について示した.
  • 芳賀 和子, 豊原 尚実, 須藤 俊吉, 金子 昌章, 小林 康利, 小澤 孝
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 13-24
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     セメントの長期間にわたる高アルカリ性維持機能に関する研究は数多く報告されているが,固相の変化を評価した研究は少なく,溶解過程の詳細は明確になっていない.筆者らはセメントの水和物の溶解現象を明確にするために,遠心力を利用した浸透試験技術を用いて通水変質試験を実施し,液相組成の変化とともに固相組成の変化の解析を実施した.水和物相はNa2OとK2O,Ca(OH)2,C-S-Hの順で溶解しており,これは他の溶解試験で確認されている溶解プロセスと一致したことから,通水液は水和物と平衡を保ちながら試料中を通水したものと考えた.また,水和物の溶解に伴い空隙量の増加と空隙構造の大きな変化が確認された.通水液量と液相関係の関係を移流と化学平衡を組み合わせたモデルで計算した結果,CaとSi濃度は計算値と実験値が比較的よく一致していた.したがって,本モデルはセメント水和物の溶解挙動の評価に有用であると考えた.
報告・ノート
  • 小畠 明, 梶尾 聡, 中村 秀三
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 25-33
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     1988年12月に太平洋セメント㈱藤原工場構内において施工された石灰石砕石を使用した転圧コンクリート舗装版について,供用14年後の追跡調査を実施した.施工箇所の交通量は14年間ほぼ変わらず,総重量17tダンプトラックが一方向あたり3500台/月程度走行している.調査の結果,コア供試体による圧縮強度の低下などは認められず,舗装版は概ね健全であることが確認された.しかし,石灰石砕石を用いたコンクリートは,砂岩系砕石のものと比較すると平坦性の経年変化およびわだち掘れ量が若干大きい傾向が見られた.また,局部的には版厚不足の影響もあり,塗装版表面に縦ひび割れおよびポットホールが発生している箇所があった.さらに,石灰石砕石を用いた場合,線膨張係数は砂岩系砕石の約60%となり,塗装版に発生する温度応力低減に効果が期待できると考えられる.本調査で得られたコンクリートの各物性を用いて計算を行なったところ,石灰石砕石を使用することにより塗装版の耐久性向上が期待できることが明らかとなった.
  • 林 浩志, 石森 正樹
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 34-45
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     4種類のセメント(普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,2種類のビーライト系セメント),混和材(石灰石粉,シリカフューム)および混和剤(膨張材,収縮低減剤,発泡剤)を用いたセメントペーストについて,配合条件が収縮に及ぼす影響を調査した.結果を以下に示す.
    (1)セメントペーストの収縮は2段階の水和収縮(一次水和収縮,二次水和収縮)と乾燥収縮の3種類に大別され,初期の一次水和収縮は他の2つの収縮に比べて大きい.
    (2)ビーライト系セメントの使用は二次水和収縮と乾燥収縮の低減に有効である.しかし,ビーライト系セメントを使用すると一次水和収縮は増大する.
    (3)膨張材と収縮低減剤の併用は水粉体比が極めて低い領域での二次水和収縮の低減に有効な手段である.
    (4)重回帰分析の結果より,セメントペーストの収縮量は構成材料の種類と配合条件を基に予測可能である.
    (5)収縮低減のために配合の最適化を行なったところ,水和収縮と乾燥収縮は大幅に改善された.
  • 内山 康広, 長井 純
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 46-55
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     セメント工場でのリサイクル資源受入れに適した新たなリスクアセスメント手法を確立することを目的に,リサイクル資源に関わるリスクを点数化する手法を提案した.有害化学物質,酸欠,爆発性ガス,鋭利なものによる怪我など,被害に関わる因子(有害さの程度,濃度,作業環境,作業方法)が異なる場合にも比較が可能な評価を下せるようにするため,「ダミー点数」の概念を取り入れた.また,被害の大きさを数値化してリスク評価点と比較することにより,リスク評価点と取るべき対策レベルとの対応関係を示した.
  • 片岡 昌子, 井口 真仁, 梅津 基宏, 中村 浩章, 石井 守, 和田 千春, 酒巻 誠, 菊地 真哉
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 56-60
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     室温(296K)で熱膨張係数がゼロとなる高弾性率セラミックスを得ることを目的とした開発を行なった.負の熱膨張係数を有する材料と正の熱膨張係数を有する材料の複合体を作成し,配合比を変えることで熱膨張係数を制御した.負の熱膨張係数を有する材料としてはリチウムアルミノシリケート(LAS)を,正の熱膨張係数を有する材料としては窒化けい素を選定した.複合体は,LASと窒化けい素を混合して窒素雰囲気で焼成して作製した.X線回折より,焼成体はLASと窒化けい素の複合体であることを確認した.熱膨張挙動は,レーザー干渉式熱膨張計で調べた.試料の長さ変化率は,温度に対して下に凸の曲線を描き,極点では熱膨張係数がゼロとなった.熱膨張係数がゼロとなる温度は,窒化けい素の配合比が増すにしたがって低くなり,窒化けい素が40wt%のときに296Kとなった.また,この配合での複合体のヤング率は168GPaであり,高弾性を示した.
解説
  • 西片 英夫, 寺上 健一郎
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 61-71
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     世界規模で地球温暖化を発端とした省エネ機運が高まる中,平成9年12月第3回気候変動枠組条約会議(COP3)京都議定書が批准された.国内においても今後,産業・運輸・民生各部門でのさらなるCO2削減が要求されることとなるが,中でも運輸部門と並んで遅れている民生部門のエネルギー削減課題に対し,有効な解決策となるであろう鉄筋コンクリート造の外断熱工法をここに取り上げ,躯体コンクリートの耐久性向上や健康被害の劇的な減少効果等,住環境・地球環境の両面において優れている特長について論じる.本論文は先に行なった断熱先進国のスウェーデン,ドイツの省エネルギー事情視察結果も踏まえ,日本の風土,風習および気象状況などを勘案しつつ同工法の優位性と今後の展望について紹介するものである.
資料
  • 江里口 玲, 小川 洋二, 大森 啓至, 早野 博幸, 大竹 淳一郎, 河野 克哉
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 72-79
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     近年,構造物の設計・施工技術の向上とともに,コンクリート技術に対する要求が多様化している.土木学会コンクリート標準示方書では,従来の仕様規定型から性能照査型へと全面的に改訂された.この移行に伴い,材料供給メーカーはユーザーに対して,構造物の要求性能を明確に照査した技術提案を行なう必要が生じている.建設業界も通信技術を利用した技術情報の提供を要求しつつあり,供給者にとっては,適切な情報を迅速に配信する仕組みが不可欠となってきた.
     こうしたニーズに応えるべく,新しい技術提案の手段として「コンクリートソリューションシステム」を構築した.コンクリートソリューションシステムは,IT(情報技術)を利用した,顧客へのコンクリート技術提案手法に関する,新しいビジネスモデルである.
  • 羽原 俊祐, 江里口 玲, 松井 淳
    2003 年 2003 巻 144 号 p. 80-87
    発行日: 2003/06/30
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     研究所ナレッジサポートは,太平洋セメント中央研究所が太平洋セメントグループ各社の事業活動をサポートすることを目的とした取り組みである.
     この取り組みの一貫として,太平洋セメント中央研究所は独自に運営するデータベースシステムであるRDKP(Research & Development Knowledge Portal)を2003年に公開した.RDKPはセメント・コンクリート,環境技術,総合情報に関する10以上のデータベースを保有しており,その機能の中心となっているのはテクニカルヘルプデスク(THD:Technical Help Desk) である.テクニカルヘルプデスクは社内および太平洋セメントグループ会社からの技術的問い合わせを回答(事例を参照)するとともに,RDKPの運用をサポートする代表的なシステムであり,太平洋セメントグループ各社との技術交流の役割も担っている.
     本報告ではRDKPの概要,保有するデータベース,テクニカルヘルプデスクシステムおよびその運用方法を紹介した.
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