太平洋セメント研究報告
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2007 巻, 153 号
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巻頭言
論文
  • 山田 一夫, ウォルフ K., 平尾 宙, ホワイトホール T., 山下 弘樹, 野崎 隆人
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 3-10
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     特定の材料の組み合わせを持ったコンクリートの硬化遅延に関する相性現象を作用機構の観点から検討し, 対策を提示した. ASTMのクラスCのフライアッシュを高置換率とし強い遅延効果を持つ化学混和剤を用いると, 数日から数十日の著しい硬化遅延が認められた. いったん強度発現が始まると,強度増進は通常と変わりなかった. XRDと熱分析によると, 遅延の機構はC3Aの異常水和に伴うC3Sの水和の遅延とわかった. この問題のフライアッシュのひとつの特徴は9mass%にもなるC3Aであり, 液相からCaイオンの取り去る効果を持つ化学混和剤の効果の影響下で, 十分な硫酸イオンとCaイオンの供給がないためC3Aが硬化遅延を引き起こした. 対策としては,遅延作用を持つ化学混和剤の使用制限, セメント中の硫酸カルシウムの増量, 石灰石粉末の添加がある. 硬化遅延の可能性を検出するには, クラスCフライアッシュを多量に用いたコンクリートでは, 事前のカロリメトリーによる発熱測定が有効な方法である.
  • 長浜 剛, 山崎 剛, 渡辺 智, 丸田 俊久, 森田 昌敏
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 11-21
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     廃棄物処理施設を対象にしたダイオキシン類迅速分析方法について検討した. 本方法は, 廃棄物焼却施設から発生する排出ガス, ばいじん, 燃え殻(焼却灰)をはじめ, 廃棄物を扱うセメント原材料, セメントキルン排ガスにおいて, 試料からの抽出操作と精製操作を合理化し, 定量対象異性体を選択測定するもので, 公定法との相関性が高いことが明らかとなった.
     本法は, 迅速さと低廉性, 所要の精確さを兼ね備えており, 廃棄物焼却施設およびセメントキルンにおけるスクリーニング的活用やダイオキシン類削減対策の効果的推進に貢献できる可能性がある.
報告・ノート
  • 石田 聡, 松本 健一, 谷村 充
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 22-35
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     設計基準強度100~120N/mm2級の超高強度コンクリート向けのセメントとして, シリカフュームをプレミックスしたセメント(以下, シリカフュームプレミックスセメントまたはSFPC)を開発した. 本報告では, SFPCを用いた超高強度コンクリートの基本性状として, フレッシュ性状, 強度性状, 耐久性状に関する各種の試験結果を示す. また, 生コン工場においてSFPCを用いた超高強度コンクリートの実機試験を行い, コンクリートの流動性および模擬柱部材より採取したコア供試体の強度(構造体コンクリート強度)を確認した結果を示す.
  • 鶴田 昌宏, 橋本 真幸, 石川 雄康, 藤田 仁, 久我 比呂氏, 小林 久美子
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 36-48
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     超速硬繊維補強コンクリートは可使時間を設定しやすく, 初期強度の発現が優れたコンクリートであるが, 極初期に急激な水和発熱や自己収縮が確認される場合もあり, それに起因したひび割れ発生の可能性も否定はできない. 本研究は, 自己収縮を抑制するために早強性膨張材(石灰系)を混和した膨張性超速硬繊維補強コンクリートの実用化について検討を行ったものである. 膨張材を混和した場合の超速硬繊維補強コンクリートの諸物性について把握し, 基準配合を構築するとともに, その製造方法について言及した. また, 冬期等の低温下では給熱養生を実施し, 夏期等の高温下では凝結遅延剤の選定によって, 当該コンクリートの有する性能を十分に発揮できるものが製造可能となることが明らかとなった.
  • 中村 朋道, 田村 典敏, 前川 修一, 鈴木 貴彦
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 49-56
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     太平洋セメント(株)では, 高塩素含有廃棄物をリサイクル資源としてセメント原料に活用するための技術開発を行った. 先ず, 「塩素バイパスシステム」において, 抽気ガス冷却方式の変更により, 小型で高い塩素除去能力を有するプローブの開発に成功した. また, 塩素バイパスシステムから回収された高塩素含有ダスト(Kパウダー)を廃棄物とすることなく, 工業塩(KCl)として回収することに成功した. この結果, 1kgのクリンカを製造するために必要な原料に, その塩素濃度が500mgとなるまでリサイクル資源を使用しても, 安全に普通セメントを製造することのできる技術を確立した.
     本報告は, 2002年度より4年間NEDO助成事業として取り組んできた『高塩素含有リサイクル資源対応のセメント製造技術開発』の結果について述べたものである.
  • 松山 祐介, 鶴田 昌宏, 守屋 政彦, 檜垣 徹
    2007 年 2007 巻 153 号 p. 57-63
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2025/03/22
    研究報告書・技術報告書 フリー
     セメント系材料は経済性に優れ, 汚染物質を不溶化するとともに1)2)3)セメント水和物による強度発現によって固化強度を付与することも可能とする. しかし, 優れた不溶化機構を有しているものの, セメント由来の高いアルカリ性の影響によって, 鉛のような両性金属に対しては必要とされる溶出量を満足できないケースや, 関東ロームに代表される火山灰質粘性土に使用した場合, 粘土鉱物の水和阻害作用によりセメント中の六価クロムが溶出するケースもある4) . そこで, これらの事項を補完する材料として, セメント系材料よりpHが低く, 六価クロムを含有しない(六価クロム含有量:定量下限値以下)新規不溶化材(商品名:デナイト)を開発し, 各種元素に対する不溶化性能について検討を実施した. その結果, デナイトによる不溶化は, セメント系材料で懸念される鉛, 六価クロムおよびフッ素などの元素に対して有効であり, かつデナイトを用いた固化処理土については, 酸およびアルカリなどの外的要因に対して安定性を有していることを確認した.
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