太平洋セメント研究報告
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2008 巻, 155 号
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巻頭言
論文
  • 細川 佳史, 山田 一夫, ヨハンネソン B., ニルソン L-O.
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 5-14
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     硬化セメントペースト中の物質移動による空隙水と固相の組成の時間変化を予測するマルチスピーシーズ物質移動モデルを開発した. これまでに開発されてきた多くのマルチスピーシーズモデルは, ポアソン-ネルンスト-プランク理論に基づいたものであり, 化学変化については考慮していなかったため, 熱力学的相平衡モデルとの融合を試みた. この融合により, マルチスピーシーズモデルは以下に示すような硬化セメントペースト中の多くの異なる現象をシミュレートできると考えられる. (ⅰ)種類の異なるセメントを用いた際の固相組成の変化, (ⅱ)空隙水中の塩化物イオンと水酸化物イオンのモル比[Cl-]/[OH-]を計算することによる鋼材発錆の物理化学的評価, (ⅲ)海洋や活性化学種を含む地盤環境への暴露によるイオン浸透により引き起こされる固相組成の複雑な変化. この新しい方法論の応用例として, 普通ポルトランドもしくは高炉セメントを用いたコンクリートを海洋暴露した際の海洋環境における相組成変化を予測し, 電子プローブ微小分析の結果と比較した.
  • 藤田 英樹, 倉内 英敏, 半井 健一郎, 辻 幸和
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 15-26
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     アーウィン-ビーライト系クリンカを主体とする低アルカリ性セメントを試製し, それを用いたモルタルおよびコンクリートのフレッシュ性状および硬化特性を調べた. 強度発現は概して良好であったが, 凝結遅延剤の添加量が多いと初期強度の低下が認められた. また材齢7日以降の圧縮強度とセメント水比は, 通常知られている直線関係にならないことが明らかとなった. また, セメントにフライアッシュや石灰石微粉末を内割で混和した場合, 強度が低下するものの実用的に十分な強度は確保することができ, 断熱温度上昇量の低下や流動性の改善の効果があった. 自己収縮・膨張特性は測定開始直後に収縮が見られるものの, その後は材齢10~30日まで膨張した. 材齢1年における長さ変化は, 標準粒度のセメントを使用したコンクリートでほぼゼロ, 細粒のセメントを用いた場合で100~150×10-6程度の収縮となった.
報告
  • 兵頭 彦次, 藤田 仁, 谷村 充
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 27-40
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本報告は, 日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」に示される特級仕様(乾燥収縮ひずみ500×10-6以下)相当の収縮抑制コンクリートを, 実際のレディーミクストコンクリート工場で製造し, フレッシュ, 圧縮強度および長さ変化性状について評価した結果を示すものである. 収縮抑制コンクリートは, 収縮低減剤, 膨張材, 石灰石粗骨材を併用した水結合材比35.1%~55.6%を対象とし, 標準期, 夏期, 冬期に2工場で製造した. フレッシュ性状は, 3期を通して, 混和剤の添加量を調整することで目標性能を満足できた. 圧縮強度については, 広範なデータを収集することで, 強度設計に必要となるB/W-強度関係および平均気温に応じた強度の補正値を得た. 長さ変化性状は, いずれの条件においても特級の性能を満足できることを確認した. 本検討結果によって, 実用的に収縮抑制コンクリートを提供できることが確認できた.
  • 北條 泰秀, 福田 一見, 下倉 政志
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 41-51
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
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     水産系廃棄物としてホタテ貝殻が大量に発生し, その処理が問題となっている. 細粉砕したホタテ貝殻をコンクリート用の混和材料として活用するため, 貝殻混入によるコンクリート性状への影響を抑制しながら, コンクリートの単位容積あたりの貝殻使用量を増やす検討を実施した. 実験では, 粗粒率の異なる貝殻粉砕物をコンクリートに混入した場合の性状を評価し,貝殻粉砕時の製造効率や経済性とコンクリート性状への影響を把握しながら, 適正な貝殻粉砕物の粗粒率の範囲を見い出した. さらに貝殻粉砕物を400kg/m3使用した場合のコンクリートの強度特性や耐久性について, 貝殻未使用の場合と比較した結果, 概ね同等の性能を有することが確認できた.
  • 江里口 玲, 小川 彰一, 長岡 真二, 前田 豊
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 52-61
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
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     圧電素子による発電は, 機械的な変形を直接電力に変換するものであり, 自然界からの電力回収の一つの手段として注目されている. 圧電素子は, 高い出力電圧が得られるものの電流が小さいという特性のため, 圧電トランスや加速度センサーなどの高電圧出力や高速応答性を目的としたデバイスとして実用化されているが, 自然エネルギーを利用して発電し, 機器類の電源として使用した事例は極めて少ない.
     本報告では, 圧電素子による発電電力を無線送信機の電源とすることで, 商用電源の供給を必要とせずに地域の風速を監視する防災センサーネットワークを構築することを目的として,その構築に必要な各要素技術の検討を行った. 圧電素子については, 発電体としての基本的な特性の把握と素子の改良を行い, 風力を利用した圧電による発電機構を考案した. この機構を用いた圧電素子による発電は, 風速6.5m/sの環境において, 通信距離が1km確保できる無線モジュールを数秒ごとに駆動させる電力を供給できることがわかった.
資料
  • 梶尾 聡, 石川 雄康
    2008 年 2008 巻 155 号 p. 62-69
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2025/02/19
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     太平洋セメントでは, グループの将来において活力の源泉となることを目指した「グループ研究開発戦略」を策定した.この展開として, グループ研究開発体制強化へのアクションプログラムを設け, 中央研究所ではグループ各社と技術力を共有する取組み「研究所ナレッジサポート」を開始した. さらに, この活動の一環として太平洋セメントグループのコンクリート技術を効率的に提案する技術提案方法「コンクリートソリューション」を構築した.
     本報告では, 上記活動のなかで取り組んでいる「太平洋セメントグループ テクノフォーラム」と称した技術講演会について紹介する. 本フォーラムの目的は, コンクリートソリューション活動を推進するために, 太平洋セメントグループが保有する技術をユーザーへ積極的に提案すると共に, グループ会社の関係強化を図り, 市場のニーズに合った商品・技術の開発につなげることである.
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