大気環境学会誌
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30 巻, 3 号
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  • 古澤 貢治, 川勝 雄一, 大久保 洋一, 土屋 順一, 阿久津 好明, 新井 充, 田村 昌三
    1995 年 30 巻 3 号 p. 149-156
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    可燃物の燃焼スモークから高反応性で長寿命の気相らじかるが生成することが明らかとなっている。この気相らじかるの生成を抑制する方法についての基礎的な知見を得るため, あみん含有化合物およびはろげん含有化合物の添加効果について検討した。その結果あみん含有化合物およびはろげん含有化合物はその燃焼すもーくから気相らじかるを生成せず, またこれらをぽりめたくりる酸めちるに添加して燃焼させた場合, 気相らじかるの生成を著しく抑制することが分かった。この抑制効果は, あみん含有化合物およびはろげん含有化合物の燃焼すもーく成分であるしあん化水素およびはろげん化水素が, 気相らじかるの生成源となる準安定物質であるとりおきしどの生成を抑制するためであると考えられる。
  • ナスルツラフ ニザール, 立本 英機, 三沢 彰
    1995 年 30 巻 3 号 p. 157-168
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    自動車走行に伴って発生する粉塵が道路構造の違いや沿道植栽の有無によってどのような挙動を示すかを明らかにするために, 常磐自動車道および国道16号線に接した半地下構造, トンネル付近, 平坦構造, 盛土構造, 堀割構造, 高架構造および切土構造を選んで, それらの場所の土壌中重金属含有量の変化を調べた。
    その結果, 次のことが明かになった。
    1) 全体的な傾向として, 沿道土壌中の重金属含有量の変化は, 道路からの距離が離れるにしたがって金属含有量の減少がみられた。道路端又は遮音壁から7m以上および16m以下でみると, Zn, Pb, Cuおよび酸可溶性Feの含有量はトンネル付近, 半地下, 堀割, 高架, 盛土および切土構造の場合よりも平坦構造の場合の方が高い値を示した。酸可溶性Ca含有量は盛土構造で, Mn含有量は切土構造で最も高い値を示した。
    2) 沿道植栽の効果については, 樹林地中のPb含有量は無林地中のそれより多かった。また, Znおよび酸可溶性Ca含有量は, 無林地の方が多かった。酸可溶性CaおよびZnの道路からの距離による含有量の変化をみると, 樹林地の方が急激に減少した。特に酸可溶性Caは道路から3mまではその傾向が著しかった。
    3) Zn, Pbおよび酸可溶性Caは自動車走行により影響を受ける可能性がある。一方, Cu, Mnおよび酸可溶性Feは変化が少なく, むしろ, 地域に固有な土壌特性を反映しているといえる。
    4) 道路構造の違い, 道路の向き, 樹林の有無および風向等によって, 自動車走行に伴う重金属の拡散および沈着の度合が大きく異なり, 更に基礎データの積み重ねが必要であると思われる。
  • 下原 孝章, 大石 興弘, 村野 健太郎
    1995 年 30 巻 3 号 p. 169-179
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    福岡県南部郊外の標高約310mの森林地域 (山頂約310m) において, 乾性沈着現象を調査した。調査対象地域の標高約100m以上の斜面ではスギの先枯れ現象が観察されている。この森林の標高約40m, 180m, 230m地点に, 透過型電子顕微鏡用のメッシュ上にニトロン薄膜, カーボン薄膜 (曝露後, BaCl2を蒸着), カーボン薄膜 (曝露後, AgNO3を蒸着), 銅薄膜を蒸着した薄膜類および銅を蒸着したガラス板 (銅ガラス板) を1日間毎に曝露した。また, 標高約230m地点で, 大気をフィルターに吸引することにより粒子状物質とガスの測定を実施した。
    その結果, 以下のことが明らかになった。山頂付近に曝露した銅ガラス板は硝酸性粒子の沈着により強く腐食された。電子顕微鏡下の詳細な観察から, 銅薄膜上には強い腐食スポットが観察された。一方, 麓に曝露した薄膜上にも硝酸性粒子の沈着は認められたが, 銅ガラス板上の腐食は弱く, 電子顕微鏡下の銅薄膜上の腐食スポットも弱かった。同様の沈着, 腐食現象は近傍の標高約920mの森林でも観察された。この期間, 特に, 山頂でのNH3濃度は地上と比較し極めて低濃度であった。
    以上の結果から, 森林山頂付近に沈着した硝酸性粒子の化学形態は, 麓付近に沈着した硝酸性粒子のそれとは異なっていることが考えられた。すなわち, 山頂付近に沈着した粒子は, 主に硝酸酸性粒子として安定に存在し, 麓に沈着した粒子はNH4NO3やNaNO3のような中性粒子であることが推定された。これらの現象は, 標高約310m, 920mの両森林で共に観察された。
  • 松村 秀幸, 小林 卓也, 河野 吉久, 伊豆田 猛, 戸塚 績
    1995 年 30 巻 3 号 p. 180-190
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    スギ (Cryptomlma japonica D. Don) の2年生苗, ウラジロモミ (Abies homolepis Sieb. etZucc.) の6年生苗, およびシラカンバ (Betula platyphylla Sukatchev var. jqponica (Miq.) Hara) の1年生苗の乾物成長とガス交換速度に対する人工酸性雨の影響を調べた。1993年4月26日から20週間にわたって, pH4.0, 3.0および2.0の人工酸性雨 (SO42-: NO3-: Cl-=5: 2: 3, 当量比) および純水 (pH5.6) を, 1週間に3回の割合で, 1回につき18~20mmずつ, 各苗に暴露した。
    pH2.0区では, いずれの樹種においても葉に可視障害が発現したが, 他のpH区では可視障害は全く観察されなかった。最終サンプリング時 (9月12日) では, いずれの樹種においても, pH2.0区の個体乾重量はpH5.6区に比べて低下した。ウラジロモミ苗では, 3.0以下のpH区の個体乾重量がpH5.6区に比べて低下した。成長解析を行ったところ, pH2.0区におけるスギおよびシラカンバ苗の個体当りの乾物成長の相対成長率 (RGR) と純同化率 (NAR) は他のpH区のそれらに比べて低下した。これに対して, ウラジロモミ苗のRGRおよびNARはpHの低下に伴って低下した。また, いずれの樹種においても, pH2.0区の暗呼吸速度はpH5.6区に比べて増加した。更に, pH2.0区におけるシラカンバの純光合成速度は他のpH区に比べて減少した。
    本研究の結果より, スギ, ウラジロモミおよびシラカンバ苗は, pH2.0の人工酸性雨暴露によって成長が低下することが明らかになった。更に, ウラジロモミ苗では, pH3.0の人工酸性雨によって, 可視障害発現を伴わずに乾物成長が低下することが示された。したがって, ウラジロモミは, スギやシラカンバに比べて酸性雨に対する感受性が高い樹種であると考えられた。
  • 河野 吉久, 松村 秀幸, 小林 卓也
    1995 年 30 巻 3 号 p. 191-207
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    スギ, ヒノキ, サワラの3年生挿し木苗を, 黒ボク土を充填した1/2000aワグネルポットに植栽し, 1990年10月-1992年8月までの23ヶ月間にわたって人工酸性雨 (SAR) を暴露して, 生育に及ぼす酸性雨の影響について検討した。SARのpHは, 2.0, 3.0, 4.0および脱イオン水 (pH5.6) の4段階とした。更に, 土壌養分状態の相違並びに生長期に相当する4月-9月の期間の降水量と降雨の酸性度の影響との関係を検討するため, 施肥の有無とSARの降水量を720, 1440および2160mmの3段階に設定した合計24処理区について検討した。
    施肥条件あるいは降水量の多少に係らず, pH2.0のSAR暴露によって, 3樹種の葉が褐変・壊死し, ヒノキとサワラでは落葉が観察された。しかし, スギの場合は, 葉や緑枝の褐変が観察されたものの, 落葉は観察されなかった。一方, pH3.0あるいは4.0のSAR暴露では, いずれの樹種にも可視害の発現は観察されなかった。
    樹高, 幹直径および個体乾物重量は, 無施肥区よりも施肥区の方が大きく, また, 施肥条件によってSARに対する生育反応が異なることが明らかとなった。個体乾物重量を指標とした場合, 3樹種とも施肥区ではpH2.0で乾物重量が減少した。一方, 無施肥区の場合, スギではpH2.0で乾物重量が増加し, ヒノキとサワラでは減少する傾向にあった。なお, pH2.0では降水量が多いほどpH5.6に対する個体乾物重量の減少率が大きくなる傾向にあった。しかし, pH3.0ではSAR暴露による生長抑制は3樹種とも認められなかった。
    pH5.6に対するpH2.0の個体乾物重量の減少率をもとに樹種間差異の程度を検討した結果, スギがもっとも影響を受けにくく, 次いでヒノキ, サワラの順となった。また, 土壌が無施肥状態の場合には, 降雨によってもたらされるSやNが生長促進効果をもたらすと考えられた。
  • 河野 吉久, 梨本 真, 小林 卓也
    1995 年 30 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 1995/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    スギの1年生葉を9地域の123地点から合計364点採取して, 21元素の含有量について高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置 (ICP) により求め, 衰退樹の葉中元素含有量の特徴について検討した。
    葉中元素含有量の特徴を把握するため, 原因不明の衰退がほとんど観察されない健全地域 (4地域) と衰退が観察される衰退地域 (5地域) を選択した。各地域の健全木から採取した233点の試料の元素含有量を検討した結果, 健全地域と衰退地域を明瞭に区分できるような特徴はみられなかった。
    9地域で採取した全試料を衰退度別に4区分して, 元素含有量を比較検討した結果, 衰退程度の進んだ個体から採取した試料の方がP, S, Ni含有量が多かった。衰退が観察された5地域を対照に, 地域毎に衰退度と元素含有量との関係を検討した結果, この3元素の傾向はより明瞭となった。また, AlとFeは衰退した個体から採取した試料で含有量が多くなる傾向にあった。一方, K, Ca, Mg含有量と衰退程度との関係は明らかではなかった。
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