乾いたシャーレおよび水を張ったシャーレを代理表面として用い, それらを1日, 5日, 10日間, 非降水時の環境中に曝露し, 乾性成分の沈着機構を研究した。同時に, フィルター捕集により大気中のガス状物質および粒子状物質中のイオン成分濃度を測定した。これらの調査は, 1994年および1995年の春期に80日間実施した。大気中の乾性成分濃度と, 乾き面および水面での沈着成分の再揮散および化学的変質に伴う乾性成分の沈着率との関係を, 沈着面の性質および曝露期間の差の比較から評価した。
Na
+, Cr
-, Mg
2+およびCa
2+等の主に粗大粒子に含まれる成分では, その大気中の濃度推移と乾き面, 水面への沈着量の推移との間に比較的高い相関が認められた。特に, これら成分の乾き面, 水面への沈着量はほぼ等しく, 乾き面での沈着量の推移と水面での沈着量の推移との間の相関は非常に高かった。これらの結果から, Na
+, Cl
-, Mg
2+およびCa
2+の乾き面, 水面への沈着機構は沈着面の性質によらず同一と考えられた。
NH
4+, NO
3-およびSO
42-の微小粒子では, 大気中の濃度の推移と乾き面への沈着量の推移との間の相関は極めて弱かった。このうち, NH
4+とNO
3-は乾き面に沈着後, その一部が再揮散する現象が認められた。
水面に沈着したNH
4+, NO
3-およびSO
42-成分は, 主に, ガス状NH
3, HNO
3およびSO
2の沈着影響によることが分かった。特に, 水面へはSO
2が沈着しやすく, SO
2からSO
42-への変換によりH
+が生成し, 水面を酸性化することが分かった。大気中のSO
42-濃度の推移は, 乾き面よび水面へのSO
42-の沈着量の推移との間の相関が共に弱かった。
曝露期間が長くなるにつれ, 乾き面上に沈着した炭酸塩粒子は大気中のSO
2との反応により, 極めて緩やかながらも硫酸塩へと変換される現象が推察された。
抄録全体を表示