水耕栽培法によって, アカマツ苗の成長および栄養状態に対するA1とMnの単独および複合影響を調べた。培養液のA1濃度を4段階 (1, 10, 30, 60ppm) に設定し, それぞれのA1処理区においてMn濃度を3段階 (1, 30, 60ppm) 設定し, 合計12処理区で2要因配置デザイン (two-factor design) の実験を行った。Alまたは, Mnを所定の濃度に調整した培養液を満たした1/5000aポットに, アカマツ (
Pinus densiflora Sieb. et Zucc.) の2年生苗を移植し, 1996年5月8日から8月6日までの90日間にわたって温室内で育成した。
アカマツ苗の乾物成長に対するA1とMnの有意な複合影響は認められなかったため, A1とMnは乾物成長に対して相加的に影響したと考えられた。これに対して, アカマツ苗の乾物成長に対するAlとMnの単独影響は認められた。
アカマツ苗の乾物成長を低下させる培養液のA1とMnの濃度は異なり, A1は10PPm以上, Mnは60ppm以上の濃度で乾物成長低下が発現した。したがって, アカマツ苗の乾物成長に対するAlの毒性は, Mnに比べて高いと考えられた。根の暗呼吸速度は, A1の場合は60ppm以上で, Mnの場合は30ppm以上の濃度で低下した。これに対して, 植物体内のCa濃度および純光合成速度とも, それらを有意に低下させるAlとMnの処理濃度には差が認められなかった。また, クロロフィル含量においては, A1の影響は認められなかったが, 60ppmのMn処理によって有意に低下した。
アカマツ苗のRGRとNARは, 培養液のAlとMn濃度の増加に伴って低下した。さらに, 培養液のAlとMn濃度の増加に伴って, 純光合成速度も低下した。したがって, アカマツ苗のRGRやNARの低下は, 光合成阻害が原因であると考えられた。
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