大気環境学会誌
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32 巻, 5 号
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  • 環境大気対策の新しいTarget
    岩井 和郎
    1997 年 32 巻 5 号 p. 323-330
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染対策は主としてSOxやNOxなどのガス成分になされてきたが, 最近の疫学的研究は浮遊粒子状物質ことに超微粒子が人の健康により傷害的であることを報告している。高濃度のPM10に伴って住民ことに慢性閉塞性肺疾患を持つ高齢者での原疾患増悪や心疾患による毎日死亡数が増加し得る。PM10値は慢性咳, 喘鳴などの呼吸器症状の頻度や, 小児の気管支炎・喘息による入院日数と関連し, 肺機能測定によっても, 気流障害が認められている。浮遊粒子状物質は種々の排出源に由来するが, 主に2ミクロン以下の石油燃焼由来の黒煙粒子がこれまで研究者に関心を持たれていた。しかし製鉄工場からの主に鉄を含む粒子でも人の健康に障害を与えることが示され, 粒子であれば程度の差はあれ呼吸器に悪影響を与えうるといえる。大気汚染の長期の影響を調べた研究では最も汚染した都市住民は最も汚染の少ない都市住民に比べて生存率曲線が低いことが計算され, それは粒子と硫酸塩濃度によく比例した。大気汚染対策は, 有害ガス体のみならず粒子成分にも向けられるべきである。
  • 浦野 紘平, 加藤 みか, 木村 ちづの, 田崎 智宏
    1997 年 32 巻 5 号 p. 331-340
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    成層圏のオゾン層を破壊し, 地球温暖化への寄与率も高いフロン類は, 不要となった製品や設備から回収し, 安全, 確実, 経済的に分解処理することが求められている。そこで, 本研究では, 経済的に広く実用できる可能性が高い既存のロータリーキルン式産業廃棄物焼却施設で, CFC-11, 12, 113, HCFC-22の4種類のフロンを約20kg/ hの規模で分解処理する実験を12回行い, フロン分解率と揮発性有機塩素化合物の生成の有無を確認するとともに, 排ガス中の塩素水素やふっ化水素, ダイオキシン類等の濃度を調べた。
    水素および酸素が過剰な条件になっているため, 平均焼却ガス温度約850℃, ガス滞留時間約2秒で, 4種類のフロンはいずれも99.99%以上分解でき, 他の揮発性有機塩素化合物類の生成もないことが確認された。また, フロン類の分解に伴って生成する塩化水素やふっ化水素は, 既存の排ガス処理設備で確実に除去され, ダイオキシン類濃度も低く, 大気環境中濃度に対する寄与率も最大1%程度にしかならないことが確認された。また, フロン類を導入してもキルン内のレンガの著しい劣化や消耗はないと考えられた。
    以上のように, 産業廃棄物焼却施設で各種のフロンを安全・確実に分解処理できることが実証できた。
  • 伊達 新吾, 阿久津 好明, 新井 充, 田村 昌三
    1997 年 32 巻 5 号 p. 341-359
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境大気中に排出直後のNOxのNO→NO2変換挙動を明らかにするため, NOxおよびメタンの酸化が関与する反応モデルを作成した。反応モデルの妥当性を検証するために, 環境温度については光照射実験を行って反応条件を変化させた場合について実験値と計算値の比較を行い, 高温領域については流通系反応実験の文献値と計算値の比較を行った。その結果, 環境温度および高温領域において反応モデルの妥当性が示された。
    次に, 感度計算を行うことによって, 環境温度 (298K) および高温領域 (873K) での高濃度NOxのNO→NO2変換に及ぼす重要な反応機構について検討した結果, 温度298Kにおいては, 反応2NO+O2→2NO2を含めた8つの無機反応が重要であることがわかった。そして, 温度873Kにおいては, NOの酸化には反応2NO+O2→2NO2は関与せず, 主にCH4の酸化過程で素反応NO+HO2→NO2+OHにより進行することがわかった。一方で, CH3の結合反応によって生成するC2H6の酸化が関与する経路は重要でないことがわかった。また, NO2消費反応については, NO2+H→NO+OHだけでなく, NO2+hν→NO+O (3P), NO2+O (3P) →NO+02, NO+OH+M→HNO2+Mも重要であることがわかった。
    最後に, 作成した反応モデルを用いて, 温度一定・体積一定と仮定した場合の反応計算を行い, 短時間内でのNO2濃度の経時変化を計算した結果, 温度領域が500~700℃の範囲内では, 排出ガス中のCH4の存在によりNOが急速に酸化され, 排出口近傍でのNO→NO2変換挙動が無視できないことが示された。
  • 矢野 壽人, 橋本 修左, 米村 惣太郎, 正田 誠
    1997 年 32 巻 5 号 p. 360-370
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    硫黄系悪臭化合物に対する最適な吸着型脱臭剤 (吸着剤) を選定することを目的として, 硫化水素を対象として各種吸着剤について静的吸着法と動的吸着法による性能検定を行った。
    静的吸着法による性能検定においては, 物理吸着剤と化学吸着剤を含む15種類の市販吸着剤について, 硫化水素吸着量を測定した。高い吸着能を有する吸着剤は吸着温度30℃, 平衡圧力50mmHgにおいて0.042~0.043g/gの平衡吸着量を示した。なお, 化学吸着剤が特に平衡吸着量が大きいということはなかった。各吸着剤に対する硫化水素の吸着型はフロインドリッヒ型に適合し, 吸着熱の値から判断すると反復使用ができる可能性を有していた。また, 比表面積, 細孔容積, 平均細孔半径, pHと吸着量の関連性を検討したが, 平均細孔半径との間に若干の相関性が認められた。
    動的吸着法による性能検定においては, 前記15種類の吸着剤の中から4種類を選定し, 除去効率と破過時間を指標として検定を行った。除去効率による検定では, 静的吸着法で求めた平衡吸着量の差が, ほぼ除去効率に反映されていた。しかし, 10%破過時間 (実験条件: 入口ガス濃度100ppm, 吸着剤層高7cm, ガス線速度0.4m/sec, 接触時間0.147sec, ガス温度25℃, 相対湿度50%) による検定では, 静的吸着法で3番目に平衡吸着量が大きかった吸着剤 (平衡吸着量: 0.042g/gat30℃, 50mmHg) の破過時間は34minでしかなく, 平衡吸着量が8番目であった吸着剤 (平衡吸着量: 0.034g/gat30℃, 50mmHg) は202minで, 前者の約6倍であった。したがって, 吸着剤の性能検定においては, 静的吸着法の平衡吸着量による検定だけでは不十分であり, 動的吸着法の破過時間による検定が重要であることが明らかとなった。
  • 李 忠和, 伊豆田 猛, 青木 正敏, 戸塚 績
    1997 年 32 巻 5 号 p. 371-382
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    水耕栽培法によって, アカマツ苗の成長および栄養状態に対するA1とMnの単独および複合影響を調べた。培養液のA1濃度を4段階 (1, 10, 30, 60ppm) に設定し, それぞれのA1処理区においてMn濃度を3段階 (1, 30, 60ppm) 設定し, 合計12処理区で2要因配置デザイン (two-factor design) の実験を行った。Alまたは, Mnを所定の濃度に調整した培養液を満たした1/5000aポットに, アカマツ (Pinus densiflora Sieb. et Zucc.) の2年生苗を移植し, 1996年5月8日から8月6日までの90日間にわたって温室内で育成した。
    アカマツ苗の乾物成長に対するA1とMnの有意な複合影響は認められなかったため, A1とMnは乾物成長に対して相加的に影響したと考えられた。これに対して, アカマツ苗の乾物成長に対するAlとMnの単独影響は認められた。
    アカマツ苗の乾物成長を低下させる培養液のA1とMnの濃度は異なり, A1は10PPm以上, Mnは60ppm以上の濃度で乾物成長低下が発現した。したがって, アカマツ苗の乾物成長に対するAlの毒性は, Mnに比べて高いと考えられた。根の暗呼吸速度は, A1の場合は60ppm以上で, Mnの場合は30ppm以上の濃度で低下した。これに対して, 植物体内のCa濃度および純光合成速度とも, それらを有意に低下させるAlとMnの処理濃度には差が認められなかった。また, クロロフィル含量においては, A1の影響は認められなかったが, 60ppmのMn処理によって有意に低下した。
    アカマツ苗のRGRとNARは, 培養液のAlとMn濃度の増加に伴って低下した。さらに, 培養液のAlとMn濃度の増加に伴って, 純光合成速度も低下した。したがって, アカマツ苗のRGRやNARの低下は, 光合成阻害が原因であると考えられた。
  • 矢野 壽人, 橋本 修左, 米村 惣太郎, 佐藤 弘, 正田 誠
    1997 年 32 巻 5 号 p. 383-391
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    魚肉缶詰工場の臭気対策を計画するにあたり, 臭気調査を行うとともに薬液吸収法と薬液酸化法を組み合わせた吸収法による脱臭実験を行い, 適用の可能性を検討した。臭気の主要発生源は蒸煮 (クッカー), 煮汁除去, 荒仕上げ工程で, 臭気濃度はクッカー蒸気が18,000, 荒仕上げ室内臭気が7, 500を示し, かなり強い煮魚臭であった。クッカー蒸気の主要悪臭成分はトリメチルアミンとメチルメルカプタン, 荒仕上げ室内臭気の主要悪臭成分はトリメチルアミンと推測された。
    また, 脱臭実験の結果, 処理ガスの臭気濃度は70~310となり, 適用が可能であることが判明した。
  • 河野 吉久
    1997 年 32 巻 5 号 p. A65-A71
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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