春季の移動性高気圧通過時の九州地域での二次汚染物質と火山性SO
2の挙動を地上と航空機による特別観測から解析した。その結果, 高気圧性の時計回りの循環に汚染物質がトラップされ, 中国大陸から日本域を含むスケールでの長距離輸送が生じることが示された。九州地域が高気圧の後面に入ると, 桜島からのSO
2プリュームの輸送が観測された。同時に, 高濃度の0
3が観測された。0
3と水蒸気量の逆相関から, 地上での0
3濃度には成層圏起源の0
3寄与が大きいが, 10-20%程度の大気境界層中での光化学反応寄与が見られた。これは地上での硝酸ガスHNO
3, 粒子状硝酸塩NO
3-, アルデヒド等の高濃度からも確認された。
桜島からのSO
2を多く含むプリュームの輸送に伴うSO
2→SO
42-への時間変換率をトラジェクトリー解析と地上でのSO
2, SO
42-濃度比から計算し, 輸送中の平均として時間変換率2.5%/hが得られた。
これらの解析結果から, 春季の移動性高気圧通過時の九州地域では, 中国大陸から日本域を含むスケールでの長距離輸送, 桜島からのSO
2の輸送, 成層圏からのO
3沈降が同時に進行し, 同地域の汚染質濃度の変化を極めて複雑にしていることが明らかにされた。
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