人為的に酸性化させた褐色森林土で育成したスギ苗の乾物生長と土壌pH, 土壌中の水溶性A1濃度および (Ca+Mg+K)/Alモル濃度比との関係を調べた.
火山灰母材, 花崗岩母材および砂岩・粘板岩母材の褐色森林土1Lに, 10, 30, 60および100meqのH
+を硫酸溶液で添加して酸性化させた.また, 硫酸溶液を添加しない各土壌を対照土壌とした.これらの酸性化させた土壌および対照土壌に, スギ (
Ctyptomeria japonica D. Don) の2年生苗を移植し, 1994年6月13日から9月5日までの12週間にわたって温室内で育成した.
土壌への硫酸添加量の増加に伴って, いずれの土壌においても, スギ苗の乾物生長が低下した.これらの乾物生長の低下は, いずれの土壌においても, 土壌pH (H2O) の低下に伴って生じたが, これは土壌中の水溶性A1濃度が増加したためであると考えられた.火山灰母材土では, 土壌中の水溶陛Al濃度が風乾土あたりで10.5μg/gに増加すると, すでにスギ苗の乾物生長が低下したが, 他の土壌では, その濃度が30μg/gより高くなるとスギ-苗の乾物生長が低下した.また火山灰母材土および花歯岩母材土では, 水溶性元素濃度から算出した (Ca+Mg+K)/Alモル濃度比が5より小さくなると, スギ苗の乾物生長が低下し始めた.ごれに対して, 砂岩・粘板岩母材土では, 同比が9.21のとき, すでにスギ苗の乾物生長が低下したが, この処理区の土壌中の水溶性Al濃度は37.8μg/gであった.
以上の結果より, 硫酸溶液を添加して酸性化させた褐色森林土では, 土壌中の水溶性Al濃度が風乾土あたりで30μg/gより高くなると, 共存する塩基の濃度に関係なく, スギ苗の乾物生長が低下するが, その濃度が30μg/gより低い場合, Alの影響は共存する塩基の濃度に依存し,(Ca+Mg+K)/Alモル濃度比が5より小さくなると, スギ苗の乾物生長が低下すると考えられた.
抄録全体を表示