乾性沈着フラックスを評価するために, 1995年5月から1996年4月までの1年間, 代理表面法および大気中のガス・粒子状物質濃度と沈着速度から推定する濃度法により乾性沈着フラックスを測定し, 両者の値について比較検討した。代理表面法による調査は乾き面, 水面のシャーレを用い, 1週間毎に, またガス・粒子状物質調査はフィルターパック法を用い, SO
2, HNO
3, NH
3のガス成分およびSO
42-, NO
3-, NH
4+等の粒子状物質について1週間毎に行った。
代理表面法によるSO
42-S, NO
3--N, NH
4+-Nの乾き面および水面における乾性沈着フラックスはそれぞれ290, 59, 33mgm
-2year
-1および1090, 140, 630mgm
-2year
-1であった。SO
42-, NH
4+は水面での沈着フラックスが多く, ガス成分であるSO
2, NH
3の水面への溶解が考えられた。
大気中のSO
2-S, HNO
3-N, NH
3-Nの年間平均濃度は6.48, 0.47, 3.20μgm
-3, SO
42--S, NO
3-N, NH
4+-Nの年間平均濃度はそれぞれ2.14, 0.72, 1.89μgm
-3であった。これらのガス・粒子状物質濃度から推定した (SO
2+SO
42-)-S,(HNO
3+NO
3-)-N,(NH
3+NH
4+)-Nの乾性沈着フラックスはそれぞれ840mgSm
-2year
-1, 550mgNm
-2year
-1, 1500mgNm
-2year
-1であり, ガス成分の沈着フラックスは, いずれの成分についても粒子状成分の沈着フラックスより多かった。
代理表面法による水面のSO42-の沈着フラックスは濃度法による値と類似した値であったが, NO
3--N, NH
4+-Nの沈着フラックスは濃度法に比べ少ない値であった。海塩土壌由来の粗大粒子中にあるC1
-, Ca
2+, Mg
2+, K
+およびNa+の沈着フラックスは代理表面における水面と乾き面の差も小さく, 濃度法による値との差も比較的小さかった。全沈着フラックス (湿性沈着フラックス+乾性沈着フラックス) に占める濃度法によるSO
42-, NO
3-およびNH
4+乾性沈着フラックスの割合はそれぞれ47%, 62%, 76%であった。
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