大気環境学会誌
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34 巻, 4 号
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  • 須藤 幸藏
    1999 年 34 巻 4 号 p. 261-271
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    積雪寒冷地において, 昭和50年代に, スぱいくたいやの使用に伴う道路粉じんが新たな環境問題として顕在化した。特に北海道, 宮城県, 長野県などの都市部においては環境悪化が箸しく, 都市生活型公害として解決を迫られた。本稿では, やや旧聞になるが宮城県における取組とすぱいくたいや粉じんの発生の防止に関する法律制定に結実するまでの経緯を紹介し, 併せて近年の浮遊粒子状物質対策の動向を概説する。
    なお, 私にはすぱいくたいや粉じんおよび浮遊粒子状物質に関する研究実績はなく, 斉藤潔賞の受賞は地方行政官としての大気環境行政に対するこだわりが評価されたものと理解している。したがって本稿には行政対応事例の紹介が多く, また, 私事にわたる記述も多いことをあらかじめお断わりしておく。
  • 深瀬 治, 荒木 万嘉, 藤原 月美, 後藤 操
    1999 年 34 巻 4 号 p. 272-281
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アスコルビン酸の栄養状態とオゾンの影響との関係を明らかにするため, アスコルビン酸合成不能ラット, ODS-ラットをアスコルビン酸濃度0~10g/Lの飲料水で3週間飼育後1ppm, 4時間のオゾン暴露を行いその影響を検討した。
    1. オゾン暴露による気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中のタンパクの増加はアスコルビン酸投与量に反比例し, アスコルビン酸による防御効果が認められた。一方, オゾン暴露によるBALF中のマクロファージ数の減少傾向にはアスコルビン酸投与の影響は認められなかった。これらの相違には, 肺胞被覆層のアスコルビン酸の防御作用が関与すると考えられた。
    2. 肺のアスコルビン酸はオゾン暴露によって減少し, 減少量はアスコルビン酸投与量に比例した。肺組織よりもBALFのアスコルビン酸の減少の程度が大きく, またBALFでは酸化型アスコルビン酸の比率が増加した。肺胞被覆層におけるアスコルビン酸によるオゾンの還元作用が推察された。
    3. オゾン暴露によって肝のアスコルビン酸が増加し, また副腎のアスコルビン酸が減少した。オゾンのアスコルビン酸への影響は肺に留まらないことが示された。
  • 近藤 隆之, 神保 高之, 奥村 秀一, 大西 勝典
    1999 年 34 巻 4 号 p. 282-288
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    拡散型ポロメータにより観葉植物の気孔コンダクタンスを測定し, 観葉植物のホルムアルデヒド吸収能力を比較するとともに, その室内汚染改善効果について検討を行った。南向きの窓辺に置いた10種類の観葉植物の日中の気孔コンダクタンスは, 0.01 (パキラ) ~0.10molm-2s-1 (シンゴニュウム) の範囲にあり, シンゴニュウム, スパティフィラム, ベンジャミンが気孔コンダクタンスが大きく, ホルムアルデヒド吸収能力の大きい観葉植物といえる。シンゴニュウム, スパティフィラム, ベンジャミンの気孔コンダクタンスの個体差はいずれも比較的小さかった。この3種類の観葉植物の9時から17時までの気孔コンダクタンスの変動パターンは光合成有効放射量の変動ハターンと類似していた。質量収支モデルによる試算から, 喫煙者のいる会議室内にスパティフィラムを1鉢 (総葉面積0.9m2) 置くことにより, 室内ホルムアルデヒド濃度は平均5%低くなると予測され, 観葉植物が室内汚染の改善に寄与することが確認できた。
  • 悪臭現場などでの連続測定結果の評価と問題点について
    房家 正博, 雨谷 敬史, 松下 秀鶴, 相馬 光之
    1999 年 34 巻 4 号 p. 289-298
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    金属酸化物半導体式臭気センサーXP-329Sを用いて, ステンレス製の臭気試験室内で経時的に濃度変化する臭気を測定したとき, および実際の悪臭現場に当該臭気センサーを一週間程度設置して連続測定したときの, 臭気センサー指示値と臭気物質濃度との関係や, 臭気センサーの応答特性などについて検討した。
    その結果, 臭気センサーに対して定期的な感度の確認と正確なゼロ調整を行えば, クラフトパルプ (KP) 工場やし尿処理施設での試験結果から, そこで測定される臭気物質の濃度から臭気センサー指示値を予測することが可能であることを認めた。また, 臭気物質の成分組成が一定しているKP工場においては, そのセンサー指示値から臭気物質濃度を予測することが可能であることを認めた。また, 臭気試験室での試験結果では, 空気清浄機の脱臭フィルターにより生成された二次生成物の存在を臭気センサー指示値と機器分析結果によって実証することができた。このことは, 物質濃度測定を行った成分以外の物質の存在を, 臭気センサーを用いて推察できることを示している。
    更に, センサー感度の経時変化を検討した結果では, 臭気センサー指示値の応答曲線を平行移動したような「ずれ」と高濃度領域での感度の低下とが観察された。高濃度領域での感度の低下は脱着しにくい物質等によるセンサーの被毒によるもの, 応答曲線の「ずれ」はゼロレベルの設定が不十分だったために生じたものと考えられた。
  • DPFの耐久性の検討
    横田 久司, 小谷野 真司, 浅海 靖男, 福岡 三郎
    1999 年 34 巻 4 号 p. 299-309
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大型ディーゼルトラックへのDPFの適用性を検討するため, SiCハニカム・フィルターを使用するフル・フロー・軽油バーナー再生型DPFを装着した試験車を製作し, 路上走行試験を行った。
    試験期間の総走行距離は35, 348km, DPFの総再生回数は903回に達したが, この間, 黒煙の排出は見られなかった。また, 定期的に大型シャシーダイナモメータにおいてPM等の測定を行った結果, PMの捕集効率は約90%を持続した。このことから, SiCフィルターの捕集性能に劣化がなかったと判断できた。また, 期間中, DPFの本質的な不具合は発生せず, 運転性への影響も認められなかった。よって, DPFの基本的な耐久性, 信頼性が確認され, 大型トラックへの適用の可能性が実証された。
    一方, 再生時の燃料使用を主因とする燃費の増加は, 郊外走行で8.4%, 高速走行4.7%, 都内走行8.6%になった。DPFを大型ディーゼルトラックへ適用するためには, 燃費改善が課題の一つであることが明らかになった。
  • 排出ガスへの影響
    横田 久司, 小谷野 真司, 浅海 靖男, 福岡 三郎
    1999 年 34 巻 4 号 p. 310-320
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    耐熱性の高いSiCハニカムを使用したDPFを大型ディーゼルトラックに装着し, 35,000kmの路上走行試験と大型シャシーダイナモメータにおける排出ガス測定等を行い, DPF装着が排出ガスへ与える影響について検討した。その結果, 次の点が明らかになった。
    (1) SiCを使用したDPFの場合, 装着による圧力損失の増加は小さく, 排出ガスおよび燃費には大きな影響は与えない。
    (2) 再生時に,「白煙」状のスモークが目視により観測され, この現象はPM, THC, CO等の排出ガスの増加として確認された。
    (3) この排出ガスの増加分を含めた総括排出量を求めたところ, DPF非装着の排出量と比べて, THCで1.19~1.31倍, COで1.53~1.79倍に増加した。NOxには影響はなかった。一方, PMは, 再生時の増加を考慮することにより捕集効率が83~88%となった。再生時の影響を考慮しない場合では, 捕集効率が約92%であったのに比較してやや低下した。環境への負荷を把握するためにはこのような総括的な評価が必要である。
    また, CO2変換法を用いて, 炭素成分 (Soot) と揮発性成分 (SOF) それぞれの捕集効率と前述の白煙の原因についても検討した。その結果.
    (4) DPFにより, Sootは100%近く捕集されるのに対し, SOFはDPFを約4割が通過することが明らかになった。
    (5) 再生時の白煙は, 炭素成分のうちのSOF成分によることが確認された。THC等も増加していることから, 酸化触媒等による更なる低減を検討する必要が認められた。
  • 米村 正一郎, 川島 茂人, 大嶋 秀雄, 横沢 正幸
    1999 年 34 巻 4 号 p. 321-330
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    簡易に経時的な測定が行える半導体アンモニア臭気センサーの有効性を明らかにした。実験室では基準ガスとの比較等によってアンモニア臭気センサーの特性を調べた。その結果, アンモニア臭気センサーの指示値はアンモニア濃度と同様に水蒸気圧にも正の応答をすることがわかった。
    野外において化学分析手法による測定値との比較を行い, その精度を検証した。アンモニア臭気センサーの指示値と水蒸気圧測定値を組み合わせることで, アンモニア濃度を求めた。野外での濃度湿度条件はアンモニア濃度が100ppbv以下, 水蒸気圧は4~16hPaの条件であり, ほう酸で捕集したサンプルをインドフェノール比色法で分析したアンモニア濃度値と良い相関 (R=0.80, n=57) を示した。酸捕集-比色法で測定したアンモニア濃度が正しいとした場合の, アンモニア臭気センサーによる測定値の推定誤差は, ±9.72ppbvとなり, 農耕地でのバックグラウンド濃度であった10ppbv濃度の低アンモニア濃度の変動を, 野外で検出できることが明らかになった。
  • 加藤 進, 市岡 高男, 山内 徹
    1999 年 34 巻 4 号 p. 331-336
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1997年12月2日から7日まで, フィリピン, ケソンシティーのビサヤス通りに面した環境天然資源省の敷地内でハイボリュームエアーサンプラー (High Volume Air Sampler) とパッシブサンプラー (Passive sampler) を用いてエーロゾル総重量 (TSP) 濃度とその組成およびNO2濃度を求めた。その結果, TSP濃度は平均値で216μg/m3であり国家基準 (230μg/m3) を満足していた。鉛の平均濃度は0.43μg/m3で, 1980年代の値よりも1/2まで濃度が減少し, 無鉛化燃料への転換状況の進行が伺えた。しかしながら, TSP濃度は鉛やNO2と良好な相関関係を示し, 移動発生源の寄与が高いことも伺わせた。重金属分類のうちでは鉄の濃度がもっとも高かった。水溶性イオンの中では硫酸イオン濃度がもっとも高く, ついで塩化物イオン濃度が高かった。測定地点が海岸線から約12km離れているのにもかかわらず, 塩化物イオン濃度は1992年に測定された四日市 (環境科学センター, 海岸線から3km, 国道1号線から約50m) の測定値よりも高く, 海塩粒子以外の発生源の存在が示唆された。また, 硫酸イオン濃度は1.77μg/m3で四日市の年平均値の1/3値であった。また, 石油燃料の寄与度を示すバナジウム濃度は同方法で観測された四日市の値に比較すると高く, NO3-やSO42-との相関も良好であった。
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