シラビソ (
Abies ueitchii Lindl.) の3年生苗の成長, ガス交換速度および栄養状態に及ぼす人工酸性雨の影響を調べた。1995年5月27日から10月13日までの20週間にわたって, pH4.0, 3.0および2.5の人工酸性雨 (SO
42-: NO
3-=2:1, 当量比) およびpH5.6の脱イオン水を, 1週間に3回の割合で, 1回につき11mmずつ, 植物体地上部のみに処理した。
pH3.0およびpH2.5の人工酸性雨処理により, シラビソ苗の葉の乾重量は減少したが, 逆に, 根の乾重量は増加し, 結果として, 個体当たりの乾物成長には処理区間に有意な差異が認められなかった。pH3.0区およびpH2.5区では, シラビソ苗のクロロフイル濃度と窒素濃度が増加し, それに伴って純光合成速度も増加した。pH3.0およびpH2.5の人工酸性雨処理により, シラビソ苗の暗呼吸速度および蒸散速度は増加した。葉のKおよびMg濃度には, 人工酸性雨処理による有意な影響は認められなかった。葉のCa濃度は, 当年葉ではpH3.0区およびpH2.5区で増加したが, 旧年葉ではpH3.0区およびpH2.5区で逆に減少する傾向を示し, 一年生葉では処理区間に差がなかった。また, pH3.0区およびpH2.5区において, 植物体からのCaおよびMgの溶脱が促進された。葉の硫黄濃度は, pH3.0およびpH2.5の人工酸性雨処理により増加した。また, シラビソ苗の冬季における耐凍性は, pH3.0およびpH2.5の人工酸性雨処理により低下する傾向が認められた。
以上の結果から, 3.0以下のpHの人工酸性雨の影響が長期にわたれば, シラビソ苗の水分および養分状態が悪化することが考えられた。
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