横浜市のほぼ中心部に位置する神奈川大学において, 露の発生状況を観測するとともに, 露水を採取し, 溶存成分の定量を行った。1998年の年間の露の発生頻度は22%(観測日348日中に77日発生) で, 冬季に最も多く発生した。また, 最大露水量の総和は7.7m憩で横浜における年間降雨量 (1901mm) の約1/250となった。露の体積加重平均pHは5.08 (3。04から7.82) であり, 総イオン濃度は雨水, 霧水よりも高く, その化学組成は雨水, 霧水と大きく異なっていた。また, 都市部 (横浜), 郊外地域 (町田), 山間部 (丹沢大山) において, 露水を同時採取し溶存成分濃度を比較した。その結果, 露水の化学組成は都市部, 郊外地域, 山間部で大きく異なり, 大気中のガス, エーロゾル濃度を強く反映していることが明らかとなった。
露水に対するガス, エーロゾル成分の乾性降下速度を求るため, 露水内成分濃度に対して, 露水量, 大気中のガス, エーロゾル濃度および露水採取器の設置時間を説明変数として重回帰を行ったところ, 硝酸ガスの乾性沈着速度 (1.28cms
-1) はエーロゾルの硝酸イオン (0.11cms
-1) の約1o倍高く, 硝酸ガスの濃度変動が, 露水中の硝酸イオン濃度に大きく影響することが予想された。この重回帰により求めた乾性沈着速度と大気中のガス, エーロゾル濃度の実測値より算出した露水中硝酸イオン濃度の計算値は実測値の多くとほぼ一致していたことから, 露水中の硝酸濃度は大気中のガス, エーロゾル濃度によりほぼ説明できることが明らかとなった。ただし, 低pHを示した露水の硝酸濃度の実測値は計算値より高く, 五酸化二窒素などが吸収されることにより露水中硝酸イオン濃度が増加している可能性が示唆された。
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