大気環境学会誌
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37 巻, 2 号
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  • 伊豆田 猛
    2002 年 37 巻 2 号 p. 81-95
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    著者は, 1982年以来, 東京農工大学農学部で, 植物に対するガス状大気汚染物質や酸性降下物の影響を研究してきた。この学会賞受賞記念総説では, 著者が20年間にわたって, その恩師, 学生および共同研究者と共に行ってきた日本の農作物と樹木の成長, 光合成などの生理機能および栄養状態などに対するオゾン, 人工酸性雨, 酸性降下物による土壌酸性化, アルミニウム (Al) およびマンガン (Mn) の単独および複合影響に関する実験的研究の成果を概説する。
  • PM2.5導入の意義を考える
    笠原 三紀夫
    2002 年 37 巻 2 号 p. 96-107
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    The importance of global environmental problem such as global warming and acid rain as well as local air pollution problem has been recognized worldwide, especially over the last decade. Atmospheric aerosols, especially smaller particles less than 2.5μm (PM2.5) have a key role in those environmental problems. Information on the characteristics of aerosols is essential to understanding their behavior in the atmosphere and the resulting effect on the environment. In this paper, the present state and future assignments of air pollution by aerosols are reviewed and the meaning of innovation of PM2.5 is discussed.
  • 兼保 直樹, 吉門 洋, 近藤 裕昭
    2002 年 37 巻 2 号 p. 108-121
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    初冬季に出現する広域・高濃度汚染時のSPMの挙動解明と, 今後, 拡散型シミュレーション・モデルを開発するにあたって計算結果の検証に必要となるデータを収集するため, 関東平野内の5地点においてSPMの主要構成成分の経時変化を観測した。各地点ともSPMを捕集用フィルターの交換を2時間毎として高時間分解のデータとするとともに, 同一の吸引速度・分粒器・保存方法を用いることにより質的に揃ったサンプルの採取を行った。炭素系粒子 (元素状炭素, 有機炭素) は高濃度時のSPM重量濃度の約50%占め, これを適切に再現することがSPMモデル構築において重要であることが確認された。主要イオン成分であるCl-, NO3-, およびNH4+はガス-粒子平衡によりNH4ClとNH4NO3の形態をとっているが, 関東平野中・西部の観測地点では前駆ガスであるNH3の供給量がこれらの粒子形成量を規定しており, 一方, 関東平野北東部の観測地点ではNH3は過剰に存在し, HClおよびHNO3の供給量がこれら粒子形成量を規定していると推測された。また, β線吸収式SPM計による測定値とフィルター捕集のSPMの組成分析結果から, 大気汚染常時監視局におけるSPM測定値に対する水分影響の検討を行った。相対湿度上昇による水溶性粒子の潮解・膨潤のモデリングに関して, Winklerの実験式をもとにした膨潤モデルを適用する際, 観測局舎内に引き込まれた外気導入管内の湿度の上限が80~90%の間にあると仮定することで, 観測結果が比較的良好に説明された。
  • 早福 正孝, 辰市 祐久, 古明地 哲人, 岩崎 好陽
    2002 年 37 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    家庭用焼却炉を用いて3種の落ち葉 (ケヤキ, スダジイ, シラカシ) を焼却し, その結果を用いてダイオキシンの生成要因を考察した。
    葉, 焼却排ガス, 焼却灰中のダイオキシン類の濃度は, 葉の種類による大きな違いはなかった。しかしケヤキの排ガス中のダイオキシン類濃度のみは, スダジイ, シラカシに比べると高濃度であった。このケヤキの排ガス中ダイオキシン類の高濃度は, 葉中の塩素含有量に影響を受けているものと思われた。そこで, 都内の公園や街路における14種類の樹葉の塩素含有量を調査した。その結果, ケヤキの葉中の塩素含有量が最も多かった。
    焼却排ガス中のダイオキシン類濃度 (Y: ng-TEQ/m3N) と焼却物の塩素含有率 (X:%) の間に
    Y=308X1.3(R2=0.9485n=12)
    の関係式が得られた。この式から, 塩素含有率が10倍ずつ増加すると, 焼却排ガス中のダイオキシン類濃度は約20倍ずつ増加することになる。
    塩素含有量の多いケヤキの葉の焼却排ガスは, 低塩素化ダイオキシン類を多く生成させた。
  • 久保 隆, 小野 敏路, 浦野 紘平
    2002 年 37 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中に存在する多環芳香族炭化水素類 (PAHs) の濃度の時間的な変動やそれらのPAHsの組成比といった特徴を明らかにし, PAHsの適切な管理に役立つ知見を得るために, WHOで発がん性のユニットリスクが示されており, U.SEPAで測定方法が定められている6種類のPAHsの大気中濃度を道路からの距離を変えて交通量の多い交差点, 住宅地, 山間部の3地点で24時間捕集を行って測定した。
    その結果, 測定した交差点と住宅地での大気中PAHsの24時間捕集濃度が1週間でそれぞれ8-20倍, 20-50倍も変動し, 住宅地での大気中PAHs濃度は年間に60-90倍程度変動したことから, 年に数回の測定ではPAHsによる大気汚染を正確に把握できないことが明らかとなった。また, 夏期よりも冬期の方が高濃度になるが, 6PAHsの組成比はBbF≧IcdP>BaP≧BaA≧BkF>>DahAで季節が変わってもほぼ一定となり, 各PAHの大気中での相対的な濃度低下の程度は年間を通して大きな違いはないことを明らかにした。
    測定した3地点の濃度を比較すると, 交通量の多い交差点に比べて住宅地では1/2-1/4程度, 山間部は1/8-1/30程度となり, 道路や各種の燃焼・焼却施設等からのPAHsが広範に拡散して影響を及ぼしていることを示した。また, これら3地点の6PAHs組成比より, BaAは他のPAHsよりも大気中で分解等の反応が起こりやすいことが示唆された。
    大気中6 PAHsによるリスクに対する寄与は, BaP>>DahA>lcdP≅BbF>BaA>>BkFの順に大きく, BaPの寄与が特に大きいことを明らかにした。また, 測定した交差点や住宅地では, 大気中6 PAHsによる発がんのリスクが10-5を大きく超えるレベルであり, また, 測定した山間部でもそのリスクが10-5レベルである可能性を明らかにした。
    これらにより, 早急に正確かつ効率的な長時間捕集などによるモニタリングを行い, PAHsの環境基準の設定や各種の発生源対策を実施する必要があることを示した。
  • 白形 昌二, 永井 清之, 水本 伸子
    2002 年 37 巻 2 号 p. 141-154
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    プラント周辺の排ガス拡散予測で実施される風洞実験では, トレーサガスの拡がりをPasquill-Meadeなどの拡散幅に合わせることで, 気流条件を設定している。しかし, 現行では大気安定度が中立状態に限定されており, 非中立時の調査は行われていない。特に煙源が低い場合や地形が複雑な場合には, 大気安定度の変化が排ガス拡散に与える影響の評価は重要である。本稿では大型の温度成層風洞を用い, 強不安定から強安定までの6つの安定度に対する, Pasquill-Meadeの鉛直拡散幅再現を試みた。それぞれの安定度における気流の乱れ強さと乱流スケールを計測し, 拡散幅との関連を議論した。風洞内で得られた鉛直拡散幅はリファレンスに良く一致し, その傾向は気流の乱れ強さによって定められることが確認された。主流成分による乱流スケールは野外観測結果に示される値の近辺に分布し, 鉛直成分による乱流スケールは大気安定度に応じて変化した。風速の分散は境界層特性に応じたスケーリングにより, ほぼ一定の関数値に収束し, 本稿で考慮した相似則の範囲内では野外観測の傾向に一致した。これらの結果により, 風洞内でPasqui11-Meadeの安定度を再現することは可能と結論付け, 風洞実験による非中立時大気環境アセスメントへの発展について, 技術的可能1生があることを示した。
  • 桜井 達也, 清野 能弘, 中江 茂, 藤田 慎一
    2002 年 37 巻 2 号 p. 155-165
    発行日: 2002/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    関東地方を対象領域として, 領域内の4地点 (狛江, 神楽坂, 我孫子, 赤城) で, 拡散デニューダーサンプラーを用いたアンモニア濃度の通年観測 (2000年1~12月) を行った。観測データをもとに, アンモニア濃度の季節変化や水平分布を解析し, これらに及ぼす発生源の影響, アンモニウム塩の生成, 広域的な物質輸送の影響について考察した。
    アンモニア (ガス) 濃度は観測地点間の差異が大きく, その濃度は夏季に増加し冬季に減少する傾向を示した。夏季にみられるアンモニア (ガス) 濃度の増加には, 気温上昇に伴うアンモニア発生量の増加が関与しており, 都心に位置する神楽坂の濃度は人為発生源の影響を, また農畜産業が盛んな赤城の濃度は農畜産業発生源の影響を受けているものと考えられた。粒径が2.5μm以上のアンモニウム塩 (粗大粒子) は, 海塩起源のナトリウムや土壌起源のカルシウムと類似した挙動を示すと考えられ, その濃度は冬季に増加し夏季に減少する傾向を示した。粒径が2.5μm以下のアンモニウム塩 (微小粒子) では, アンモニウムイオンの主な結合相手は硫酸イオン (SO42-), 硝酸イオン (NO3-), 塩化物イオン (Cl-) であり, その濃度には明瞭な季節変化がみられなかった。全アンモニアに占めるガスと粒子の割合はほぼ折半しており, 粒子の大半は微小領域に存在した。三宅島の噴火によって放出されたSO2は, 大気中で硫酸 (H2SO4) に変換してアンモニアと反応し, 硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウムの微小粒子を形成して, 関東内陸まで長距離輸送されていることが示唆された。
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