近年, 我が国の大気中からベンゼン等多様な有害物質が検出されており, これらの物質に長期的に曝露されることによる健康影響が懸念されている。このような状況を踏まえ, 有害大気汚染物質対策の推進に関する各種の規定を盛り込んだ 「大気汚染防止法の一部を改正する法律」 が, 平成9年より施行されている。改正法では, 有害大気汚染物質対策として健康被害の未然防止の観点から, 事業者に排出抑制の取り組みを求めるとともに, 行政におけるモニタリング, 有害大気汚染物質による健康への影響の評価や情報の提供等の推進を規定している。中でもベンゼン等の早急な排出抑制を講ずべき物質については, 指定物質抑制基準の設定等により確実な排出抑制対策を講じることとされた。
環境省においては, 法の円滑な施行を図るため, 健康リスクの評価, 排出抑制対策の推進方策等の検討を引き続き行っているところであり, 平成15年には, アクリロニトリル等4物質について, 環境目標値の一つとして, 環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値 (指針値) を設定したところである。
この検討と平行して, 個別の物質についての健康影響評価が必要なことから, 有機塩素系化合物・炭化水素類の健康影響に関する知見の収集整理を図るため, 環境省からの委託により,(財) 日本環境衛生センターに, 健康影響評価検討会有機塩素系化合物・炭化水素類評価作業小委員会 (座長: 櫻井治彦中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長) を設置して, 健康リスクに関する文献等の評価を行った。今回, 同小委貝会において, 1, 3-ブタジエン, 酸化エチレンについての報告が取りまとめられたところである。
本報告のとりまとめにあたっては, 関係各位に多大なご尽力をいただき, 深く感謝を申し上げるとともに, 今後の有害大気汚染物質対策の推進について引き続きご協力をお願い申し上げます。
なお, 環境省内での作業が遅れてしまったことから, 発表が遅れてしまいました。委員の先生をはじめ皆様に御迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
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