自動車からの環境負荷量 (NOx, CO, 燃費等) の推計方法として, 平均車速を指標とする従来の方法に比較して, 時間分解能および空間分解能の高い排出量推計モデルを開発した。モデル作成の概要を以下に示す。
(1) 走行の単位として, 時間的移動を表す一つのアイドリング区間および空間的移動を表す一つの走行区間 (発進から停止まで) の一対をトリップセグメントとして定義した。
(2) シャシーダイナモメータによる自動車排出ガス測定結果を用いて, トリップセグメント単位でアイドリング, 加速, 定速, 減速のモード別に走行特性値 (速度, 加速度等), 環境負荷量 (EI) を求めた。これらの値について回帰分析を行い, 車両毎に環境負荷量を次の式で表した。
EI=
C×
f (走行特性値)
C: 車両固有の係数
(3) 車両固有の係数を車両の諸元値で一般化し, 車速データから環境負荷量を推計する汎用モデルを作成した。
EI=α (諸元値)
β×
f (走行特性値)
α, β: 回帰係数, 諸元値: 車両重量または総排気量
このモデルの特徴は, 走行距離では数メートルから数百メートル, 走行時間では数秒から数百秒の広い範囲で環境負荷量を推計できること, デジタルタコメータ等の走行動態記録から自動車排出ガスの環境負荷量を, シャシーダイナモメータを用いずに, 間接的な手法で推計できることである。特に, 加速度等の走行特性に基づく推計方法であるため, 運転者の運転方法の違いを明確に反映できるモデルになっている。
本報告では, 自動車排出ガス規制の短期規制 (平成6, 7年規制), 長期規制 (平成9, 10, 11年規制) に適合する大型ディーゼル車を対象としたモデル作成および実証結果を示した。
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