メソスケール気象モデルにオイラー型の物質輸送拡散モデルを組み合わせた濃度分布シミュレーション手法を用いて, 従来のプルーム型モデルでは困難な広域性あるいは非保存性の大気汚染物質の長期平均濃度を予測する方法について論じた。作業手順は大略, 以下の3段階になる。(1) 対象地域全体の気象パターンを1日単位で特徴づけ, 対象期間の毎日を気象パターンによりグループ分けするとともに, 各グループの出現頻度を求める。(2) 主要な気象パターンについて, グループのうちで平均に近いパターンの日を代表日として選出し, 濃度分布シミュレーションを行う。(3) 各グループの結果を出現頻度の重み付けで平均する集成計算により, 対象期間の平均濃度分布を推算する。
試験的な運用として, 1994~1996年度の関東地方を予測対象に想定し, 気象パターン分類と代表日選出方法の一試案を実行した。その結果, 主要な14気象パターン各2サブグループ, 計28日を代表日として選定した。これらのパターンに全対象期間の半数の日数が包含される。
この気象パターン分類に基づき, 窒素酸化物 (NOx) を対象として, 既に実績のあるメソスケール気象モデルANEMOS (日本気象協会) を用いて行った輸送拡散シミュレーションの結果から長期平均濃度予測を試験的に運用した。測定局に対応するメッシュ濃度と実測平均濃度の散布図は相関係数0.8を超え, この手法の実用可能性を示した。さらに, NOxとは被害形態の異なる汚染物質である光化学オキシダント (主にオゾン) にこの手法を導入する試みを続報IIで論じる。
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