大気環境学会誌
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42 巻, 1 号
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  • 横田 久司
    2007 年 42 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1980年代の後半, 東京では自動車排出ガスによる大気汚染は深刻な状況にあり, これは, 1973年の石油危機以降急激に増加した, ディーゼル車の交通量増加に起因した。このため使用過程の大型ディーゼル車に着目し, 排出実態把握や低減対策に関する研究を行った。
    車載計測システムによる幹線道路での実走行調査を行い, 渋滞走行ではアイドリングモードの排出寄与率が高く, 一般走行では加速モードの排出比率が高いという排出メカニズムを明らかにした。この結果から'ユーザが取り組める対策として「アイドリング・ストップ」を提案し, NOx排出量や燃費の削減効果があることを確認した。次に, 使用過程車用DPFの開発研究を行い, 後付け装着しても実用可能な性能があり, PMだけでなくHAPS等の低減に有効であることを実証した。
    都市の大気汚染は改善の傾向にあるが, PM2.5, ナノ粒子やHAPS等の未規制物質については課題として残されている。今後のディーゼル車には後処理装置の装着が必須であるが, 規制項目だけでなく排出ガスによる健康へのリスクを低減するという視点が必要である。
  • 渡部 博之, 東野 達, 曹 仁秋
    2007 年 42 巻 1 号 p. 16-27
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    黄砂の飛来が観測された2005年4月1日~5月12日に宇治において高時間分解能分析装置を用い, 粗大, 微小の粒径別硝酸塩, 硫酸塩粒子の質量濃度を連続的に測定し, スペクトル解析により濃度変動の特性を明らかにするとともに発生源の推定を試みた。観測はNOx, SO2, O3濃度, BC粒子濃度, 粒子個数濃度, 気温などの気象データの測定も同時に行った。その結果, 硝酸塩濃度は微小, 粗大粒子とも日及び3.5日周期成分が抽出されたが, 硫酸塩濃度は粗大粒子のみに2.7日周期成分が認められた。また, 1時間平均濃度の全観測期間平均の日変化パターンより, 微小粒子硝酸塩濃度は午前8時頃に明瞭なピーク示し, BCやNOxの日変化パターンと極めてよく一致した。微小粒子硫酸塩濃度は, 午前, 午後にわずかなピークを示した。一方, 粗大粒子の硝酸塩濃度変動のうち3.5日の周期成分を抽出し, 逆フーリエ変換した濃度変動結果と個数濃度との比較から, これらは黄砂粒子の変質成分であることが示唆された。
  • 谷川 昇, 及川 智, 泉川 碩雄
    2007 年 42 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却施設において, 湿りガス濃度を計測する試料非吸引採取方式のレーザー型HCl自動計測器と乾きガス濃度を計測するイオン電極方式HCl自動計測器の測定値を比較した。
    HCl濃度の変化に対して, レーザー型のHCl自動計測器では敏感に応答した値が計測されるが, イオン電極方式のHCl自動計測器では応答に時間遅れがあり, 平均化された値が計測された。また, レーザー型のHCl自動計測器の直読値を同時測定した排ガス中の水分で乾きガス濃度に換算した値は, イオン電極方式のHCl自動計測器の測定値と良く一致した。さらに, 都市ごみ焼却施設の自主管理の一環として排ガス中の濃度を連続監視する場合には, 実測した平均水分を定数とみなして簡単な演算プログラムを組めば, 試料非吸引採取方式のレーザー型の自動計測器によって, 実用上の支障がない乾きガス基準のHCl濃度が得られることが分かった。
  • 芹澤 啓, 中村 晃, 原 宏
    2007 年 42 巻 1 号 p. 34-47
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    湿陛沈着の空間分布を把握するために, 時系列モデルを地球統計学的手法を用いて空間領域化する手法について検討した。解析には, 酸性雨対策調査の硫酸イオンの観測値を用いた。まず, 時系列モデルを観測地点で構築する。そのモデルと残差をそれぞれガウスシミュレーションと単純クリギングによって領域化した。求めた時系列モデルと残差の値を足しあわせて硫酸イオン沈着量の分布図を作成した。
    硫酸イオン沈着量は減少傾向にあること, 夏期に九州から近畿地方にかけて, そして冬期に日本海側で多い傾向にあるという, 地域的特徴を示すことができた。また, 同じ手法を関東地方のデータセットに適用し, 三宅島噴火による沈着量の増加量を見積もった。
  • 貴志 孝洋, 新井 充
    2007 年 42 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    石油火災など大規模産業火災の発生時に主に用いられるフッ素系界面活性剤を含む水成膜泡消火薬剤の燃焼生成物について流通系反応装置を作成し、燃焼実験を行なった。昇温には赤外炉を用い、生成物の分析にはLC-MSおよびGC-MSを用いた。燃焼生成物として粉塵とガスが得られた。粉塵はろ紙フィルターで捕集後、超音波抽出法により蒸留水に抽出し、LC-MS測定を行なった。また生成ガスは蒸留水を通じた後、テドラーパックで捕集し、GC-MS測定を行なった。その結果、粉塵中からは多環芳香族の他にフッ素系界面活性剤の原料であるパーフルオロオクタンスルホン酸 (C8HF17SO3) および関連物質のパーフルオロオクタン酸 (C8HF15O2) などが検出された。現在、パーフルオロオクタンスルホン酸を始めとする過フッ素化化合物の世界的な拡散と蓄積が新しい環境問題 (PFOS問題) として欧米を中心に注目されつつあるが、その環境内運命はまだ充分に明らかにはなっていない。本研究では水成膜泡消火薬剤に含まれるフッ素系界面活性剤がPFOS問題の原因物質のひとつに、そしてその燃焼がPFOS問題の原因のひとつとなり得ることが確認された。また生成ガスからは二酸化硫黄およびフッ化水素が確認された。
  • 友寄 喜貴, 嘉手納 恒, 与儀 和夫
    2007 年 42 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2007/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    沖縄のバックグラウンド地点および沿道におけるベンゼン濃度の季節変動から, 越境および地域的なベンゼンの挙動を検討した。また, 大気中ベンゼンが沖縄県民の発がんに関与するリスクを把握することを目的として, 集団リスクの推定を行った。沖縄のバックグラウンド地点におけるベンゼン濃度の変動について, 後方流跡線解析および軽アルカン濃度の変動と併せて解析した結果, ベンゼンの低濃度時は海洋性気塊の移流がみられ, 高濃度時は大陸性気塊の移流がみられた。ベンゼン濃度の年平均値は0.44μg/m3であった。沿道におけるベンゼン濃度と風速の関係について調べた結果, 沿道におけるベンゼン濃度は風速が強いと低くなる傾向がみられた。また, ベンゼン濃度と風速の関係式を用い, 365日24時間連続測定した場合のベンゼン濃度の年平均値を推定した結果, 年12回 (毎月1回24時間) 試料を採取し年平均値を算出する方法では, 現実的には悪天候を避けてサンプリングを行う場合が多いと想定され, 年平均値が高めに見積もられている可能性が示唆された。大気中ベンゼン暴露による集団リスクについて安全サイドに立った推定を行った結果、沖縄県全体 (135万人) での集団リスクは, 約0.24人/年と推定された。
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