黄砂の飛来が観測された2005年4月1日~5月12日に宇治において高時間分解能分析装置を用い, 粗大, 微小の粒径別硝酸塩, 硫酸塩粒子の質量濃度を連続的に測定し, スペクトル解析により濃度変動の特性を明らかにするとともに発生源の推定を試みた。観測はNOx, SO
2, O
3濃度, BC粒子濃度, 粒子個数濃度, 気温などの気象データの測定も同時に行った。その結果, 硝酸塩濃度は微小, 粗大粒子とも日及び3.5日周期成分が抽出されたが, 硫酸塩濃度は粗大粒子のみに2.7日周期成分が認められた。また, 1時間平均濃度の全観測期間平均の日変化パターンより, 微小粒子硝酸塩濃度は午前8時頃に明瞭なピーク示し, BCやNOxの日変化パターンと極めてよく一致した。微小粒子硫酸塩濃度は, 午前, 午後にわずかなピークを示した。一方, 粗大粒子の硝酸塩濃度変動のうち3.5日の周期成分を抽出し, 逆フーリエ変換した濃度変動結果と個数濃度との比較から, これらは黄砂粒子の変質成分であることが示唆された。
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