大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
42 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 吉門 洋
    2007 年 42 巻 2 号 p. 63-74
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    急速な公害対策が求められた1970年代初頭以降, 大気境界層と地域大気汚染の調査・研究は格段の進歩を遂げた。光化学大気汚染の発生により, 個別発生源ではなく汚染気塊の地域規模での輸送として機構・構造を解明することが課題となり, 地域気象の役割が注目されるようになった。おりから1970年代にメソスケール気象モデルが大きな進歩を始め, 反応モデルとセットで現実との対比も可能なレベルになったことにより, 観測や実測データ解析と数値モデルが相補い合い, 地域気象とそれに結びついた大気汚染が解明されてきた。本稿では地域気象・汚染研究の観測的側面に重点を置いてその経過を回顧するとともに, 現代と今後にわたる課題を拾ってみた。研究対象とされた課題の展開の方向に沿い, 主要トピックとして海風, 大規模局地風系, 都市ヒートアイランド影響, 地域生成オゾン問題, および陸風, 関東の広域よどみと高濃度汚染, 房総局地前線を取り上げた。
    近年は気候変動の影響が地域気象と汚染の挙動にも重なり合っていることに注意して, 今後も状況を追跡していく必要がある。
  • 森 麻美, 大城 由紀, 古川 昭雄
    2007 年 42 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    奈良県東吉野村の森林で土壌からのCO2放出速度の測定を行なった。野外での測定以外に, 現地から採取した土壌からのCO2放出に対する土壌温度と土壌含水比の影響や土壌中の窒素炭素濃度との関係を実験室内で測定した。その結果, 林床での土壌から放出されるCO2は夏に高く冬に低いという季節変動が見られた。また, 実験室においても, 全ての土壌層からのCO2放出は土壌温度の上昇に伴い増加し, 高い相関が得られた。さらに, 土壌温度ほど顕著ではないが, 土壌含水比が増加しても土壌からのCO2放出は増加した。そして, 土壌中の炭素窒素量もA層においてのみ土壌のCO2放出と相関があった。以上の結果から, 土壌から放出されるCO2濃度は, 土壌温度に最も影響を受けると考察された。
  • 藤田 慎一, 中屋 耕, 室崎 将史
    2007 年 42 巻 2 号 p. 84-92
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    山岳地域に到達したオゾンの消滅過程や植物影響を検討するうえで, 森林への沈着フラックスの評価は重要である。オゾン濃度の鉛直分布は, 沈着速度を算定するうえでもっとも基本的な因子の一つである。本報では長野県北佐久郡 (浅間山麓) の落葉広葉樹林を対象に, パッシブサンプラーによる多点測定と紫外線吸収方式による連続測定とを併用して, 林内におけるオゾン濃度の鉛直分布とその季節変化を調べた。
    観測地点の林内 (高度4m) におけるオゾンの年平均濃度は, 約39 ppbであり春季に高く冬季に低かった。濃度の日較差は夏季に大きく冬季に小さかった。オゾン濃度の鉛直分布は, 対数則による減衰特性が異なる林冠内, 中低木, 地表面の三つの部分から構成されていた。枝下部のオゾン濃度には, 林冠下部よりやや増加する傾向がみられた。林内に流入したオゾンの大部分は, これら三つの部分を輸送される過程でほぼ完全に分解され, 地表面のごく近傍ではゼロに近い濃度になった。各部位における濃度減少と林外の平均濃度との比 (減衰率) は, 夏季に林冠内で約50%, 中低木で約10%, 地表面で約40%であり, オゾンの除去過程に占める地表面の役割は大きかった。こうした複雑な濃度分布の形成は, 風によるオゾンの補給と森林や土壌によるオゾンの分解のバランスに支配されていること; 濃度勾配の季節変化には, 林冠の発達 (夏季) と風速の増加 (冬季) の二つが関与していることが示唆された。
  • 風洞実験によるNOx長期平均濃度分布の推定
    上原 清, 林 誠司, 山尾 幸夫, 松本 幸雄, 若松 伸司
    2007 年 42 巻 2 号 p. 93-106
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    自動車排出ガス測定局 (自排局) の大気汚染濃度と、近接する一般環境局における気象観測の結果から沿道大気汚染濃度と気象との関連を調べた。さらに、1/300模型を用いた風洞実験と交通流調査の結果を用いて、自排局を含む交差点一帯のNOx長期平均濃度の時間的空間的な分布状況を調べた。その結果、1) 自排局におけるNOx濃度観測値は、交通量だけでなく時刻または季節に卓越する風向の影響を受けて大きく変化する。2) 風洞実験の結果から推定されたNOx濃度は常時観測値の約1/3.2と過小であったが、推定された自排局NOx濃度の日内変化や年内変化は常時観測値と高い相関を示す。これより各風向条件の風洞実験で得られた濃度分布と実市街地の分布の相似性が、ある程度保たれているものと考えられる、などのことが明らかになった。以上のことに基づいて、3) 常時観測値によって推測値を修正し、交差点周辺市街地の高濃度大気汚染の時間的・空間的な拡がり状況を把握し、自排局における常時観測値の持つ局所性について検討した。
  • 武田 麻由子, 相原 敬次
    2007 年 42 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    丹沢山地の大気中のオゾンがブナ (Fagus crmata) に及ぼす影響を明らかにするため, ブナ林衰退地に近接する西丹沢犬越路燧道脇 (標高920m) において, ブナ苗を用いたオープントップチャンバー法による野外実験を2002~2004年に実施した。活性炭フィルターでオゾンを除去した浄化空気を導入した浄化チャンバー (平均オゾン濃度0.011ppm) 及び現地の環境大気を導入した環境大気チャンバー (平均オゾン濃度0.046ppm) に2年生の丹沢産ブナ苗を移植し, 3成長期間にわたって育成することにより, 葉のクロロフィル含量 (SPAD値), 光化学系IIの最大光量子収率 (Fv/Fm), 樹高, 根元直径, 葉数, 冬芽数, 乾燥重量に対するオゾンの影響を検討した。オゾンにより, SPAD値は2成長期目の秋以降, 3成長期目は全般にわたって有意に低下し, Fv/Fmは3成長期目の秋以降有意に低下した。樹高は3成長期目の秋以降, 根元直径は3成長期目の夏以降有意に減少した。全乾燥重量は, 3年間の累積的なオゾン曝露 (6ヶ月間のAOT40が合計で88.7ppm・h) により浄化チャンバーよりも61.3%低下した。また, オゾンによる早期落葉が観察された。環境大気チャンバー内で育成したブナ苗の冬芽数は3成長期目終了時に有意に減少し, 本実験を継続していれば, 次年度以降にはさらに生長が抑制される可能性が示された。本実験の結果より, 丹沢山地の大気中のオゾンがブナの生長生理に阻害的に働いていることが明らかになった。
  • 箕浦 宏明
    2007 年 42 巻 2 号 p. 118-128
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東京都内の交通環境の異なる沿道を, 交通センサス (2002年発行) より, 交通量, 大型車混入率, 平均車速を基準に選別し, 13箇所で沿道大気中の微小粒子粒径分布を2002年10月に計測した。大型車混入率の高い道路では, 18nmにピークを持つ分布が得られたほか, 都心の交通量の多い道路ではピークが30nmにシフトした結果が得られた。微小粒子の数濃度と幾何平均粒径と, 上記した交通パラメータとで相関を調べたところ, 大型車交通量に応じて数濃度が上昇するとともに, 幾何平均粒径の低下が見られた。さらに, 平均車速増加に伴い数濃度を増やす大型車の多い道路群と数濃度低下を示す群に分かれた結果が得られた。
    沿道大気中の微小粒子の数濃度分布は, 18.2, 34.1, 65.6, 132nmに中心を持つ4つのガウス分布で近似することができ, これらのガウス分布を用いて, 交通環境の異なる沿道での数濃度分布を定量評価することができた。すなわち, 大型車混入率の高い道路で見られた18nmのピークと, ディーゼル車から排出されるすすの代表粒径として用いた65.6nmのガウス分布とは, 強い正相関を示し, 分布の中にすすの寄与が示唆された。都心で見られた30nmのピークを代表する34.1nmのガウス分布は, 特定の交通環境で見られ, その際18nmのピークは負相関を示す点が明らかとなった。
  • 米持 真一, 梅沢 夏実, 松本 利恵
    2007 年 42 巻 2 号 p. 129-142
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    首都圏郊外に位置する, 埼玉県北部の騎西町において, 2000年から5年以上にわたり, PM2.5の質量濃度および主要成分濃度の連続観測を行った。PM2.5の捕集にはPM2.5サンプラー (R & P社, Partisol Plus 2025) を用い, 一週間単位の質量濃度および主要化学組成の分析を行った。PM2.5濃度には明瞭な減少傾向は見られなかった。微小粒子の主成分である, 水溶性無機イオンと炭素成分について分析を行い, その推移を評価した。水溶性無機イオンの90%は, 塩化物イオン (Cl-), 硝酸イオン (NO3-) および硫酸イオン (SO42-) と, これらを中和するアンモニウムイオン (NH4+) で構成されていた。陰イオン3成分濃度は特徴的な季節変動が見られた。Cl-と炭素成分 (TC), 特に, 元素状炭素 (Cel) には明瞭な減少傾向が見られた。また, NO3-にも緩やかな減少傾向が見られた。一方, SO42-には減少傾向は見られず, 2004, 2005年は, 冬期を除く季節で増加していた。
    並行して稼働させたTEOMの観測値とPM2.5サンプラーによるフィルター捕集との比較では, 年平均値では概ね同程度の値であったが, TEOM内部での半揮発性成分の揮散量と, 外気温に依存するPM2.5サンプラーのフィルター上からの揮散量の大小関係により, 両測定値の差には特徴的な季節変動が見られた。
  • 香川 順
    2007 年 42 巻 2 号 p. A1-A13
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    WHOが地域住民の健康保護のために粒子状物質の長期間目標値を最初に発表したのは1972年で、その後、疫学知見の蓄積に伴い、1979年、1987年、1999年、2000年に粒子状物質のガイドラインを公表してきた。粒子状物質の測定も最初はスモーク濃度で表示されていたものが、測定法の進歩に伴い粒径別の指標に変わり、1999年に従来の二酸化硫黄とスモーク濃度の組合せでガイドラインが示されていたのが初めて粒子状物質単独で健康影響を評価し、PM10とPM2.5に係る評価がなされたが、閾値がみいだせないことからガイドラインを示すことが出来なかった。2005年になって初めてPM10とPM2.5のガイドライン値が示され、2006年10月に最終決定がなされその要約が公表された。本稿は、粒子状物質に係る健康保護のための指針の評価の変遷をたどり、今回の新しいガイドラインに至る過程を解説した
  • 稲葉 一人
    2007 年 42 巻 2 号 p. A14-A17
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 耐震強度偽装事件を素材に
    櫻井 敬子
    2007 年 42 巻 2 号 p. A18-A22
    発行日: 2007/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top