大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
42 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 鈴木 攻祐, 中西 幹郎
    2007 年 42 巻 6 号 p. 311-320
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    地上で観測されたデータだけを用いて, 降水による都市大気中の窒素酸化物 (NOx) の除去量を推定した。昼間におけるNOxの時間変動は, 風による水平移流と, 鉛直方向への拡散に関係すると考えられる気温の変動に主に依存することが, 主成分解析の結果より明らかとなった。2001年10月の関東南部における25km四方の正方領域を対象に, これら二つの効果を考慮し, ボックスモデルを用いてNOxの領域内発生・消散量Rを評価したところ, 無降水日の典型的なパターンを取り出すことができた。この変動パターンと, 降水時のNOx変動との比較により得られた降水1mm当りのウォッシュアウト強度は, 1.0-11.0ppbv/mmであった。得られた強度の評価のため, 同時期に採取された降水に含まれる硝酸イオン (NO3-) と, 大気中NOxの減衰量を比較したところ, 両者が等しくなると仮定して算出されるNOx等質大気層の厚さ (Washout depth) は36.7-238mとなった。
  • 小林 賢, 平木 隆年, 石田 廣史
    2007 年 42 巻 6 号 p. 321-326
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中二酸化硫黄 (SO2) の海洋への乾性沈着の実態を明らかにするために, 観測結果をもとにSO2の沈着フラックスおよび沈着速度を評価することを目的とした。2006年9月から2007年6月にかけて和歌山県白浜町沖 (白浜) の観測塔及び, 兵庫県南あわじ市西岸にある突堤先端 (淡路島) で計7日間観測を行った。SO2フラックスは濃度勾配法 (乱流フラックス法) を用いて求めた。白浜でのSO2濃度の平均値は2.9ppbで, 淡路島では2.7ppbであった。測定期間におけるSO2濃度の総平均値は2.8ppbであった。白浜でのSO2フラックスの平均値は-6.7×10-8g/m2sで, 淡路島では-2.8×1010-8g/m2sであった。全てのSO2フラックスの値はマイナスであり, 大気から海洋へのSO2乾性沈着が認められた。そして測定期間における海洋へのSO2フラックスの総平均値は-408×10-8g/m2sであった。白浜での沈着速度の平均値は0.64cm/sで, 淡路島では0.43cm/sであった。測定期間における海洋へのSO2の沈着速度の総平均値は0.53cm/sであった。沈着速度と風速との間には正の比例関係が確認出来た。
  • 足立 幸穂, 木村 富士男, 菅田 誠治, 早崎 将光, 黒崎 泰典, 若松 伸司
    2007 年 42 巻 6 号 p. 327-338
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    2000年4月19-20日にかけてゴビ砂漠において, 中緯度低気圧に伴う寒冷前線の近くでダストと雲量の少ない前線性の雲が衛星によって観測された。この事例はダストストームと前線性の雲の相対的な位置関係をはっきりと示す珍しい事例である。本研究ではこのダストイベントと擾乱の構造について, ラグランジェ的な視点から衛星画像と数値モデルを使って調べた。ダスト粒子は寒冷前線の寒域内で発生し, その後前線面に向かって進む。前線付近では, ダストの流れは前線と平行する大きく2つの流れに分流する。一方のダストは低気圧の中心へ向かい, 残りのダストは中心とは反対の方向に進む。その後一部のダスト粒子は低気圧中心へ到達する。トレーサーの鉛直方向への分布は混合層より上では非断熱加熱の影響が小さいため, 主として混合層内に制限される。海上では, 海上の境界層内の気温がダストを含む空気塊よりも冷たいため, ダストは海上の境界層の上を通過する。本研究のラグランジェ解析により, 寒冷前線に相対的なダスト輸送が明確に示された。
  • 上田 紗也子, 三浦 和彦
    2007 年 42 巻 6 号 p. 339-349
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東京の神楽坂において大気エアロゾル粒子の湿度特性の観測を4季節にわたって行なった。易動度粒径100nmの単分散エアロゾル粒子の湿度に対応した粒径変化を, TDMAを使用して測定した。夏は, 相対湿度65%RH, 70%RHの時に成長した粒子の割合が, それぞれ23%, 28%であったが, 78%RH, 83%RHではそれぞれ50%, 61%であった。夏の典型的な場合では成長粒子割合や成長率の急激な増加が7580%RHで見られ, この湿度は (NH4)2SO4やNaCl, NaNO3の潮解湿度に近い。秋は, 成長粒子割合, 成長率が, ほとんどの場合どの湿度でも他の季節より低かった. 春, 冬の65%RHでの成長粒子割合は, それぞれ41%, 59%であり, 70%RHでも同様に, 夏, 秋に比べて成長粒子割合が高かった。特に, 冬の成長粒子割合と成長率は, どの湿度でも高かった。70%RHの成長粒子割合は, 外気の気温が低い時, または屋外湿度が高いときにより大きく, この結果は, 気体からの二次粒子の生成過程が低い湿度で吸湿成長する粒子の存在に関係していることを示唆している。
  • スタワリー ジーラナット, 加藤 俊吾, 高見 昭憲, 畠山 史郎, 嘉手納 恒, 渡具知 美希子, 友寄 喜貴, 与儀 和夫, ジャッフェ ...
    2007 年 42 巻 6 号 p. 350-361
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中のオゾン (O3), 一酸化炭素 (CO), 揮発性有機化合物 (VOC) を沖縄本島の辺戸岬において2004年の春に観測を行なった。後方流跡線による解析により, C (中国方面), K (韓国方面), J (日本方面), O (太平洋方面) という分類で観測地点まで空気塊が到達する経路ごとに分けた、CおよびK方面からの空気塊でこれらの濃度は高くなり, O3はそれぞれ5a4, 62.2ppbvでCOは240, 209ppbvであった。O3が高濃度だがCOが高くない輸送イベントがあり, それがK方面の方がC方面より月平均03濃度を高-くしていた。最も低濃度は0方面であった。J方面の空気塊は中間の濃度となった。VOCは炭素数が増えると大気中濃度が減少する傾向が見られ, これは時間が経過した空気塊を測定していることを示している。飽和炭化水素についてこのような傾向が見られるのは, 清浄な大気を観測しており近傍の影響を受けないことを示している。VOCの主な除去過程はOH反応や希釈である。観測されたさまざまなVOCの比の変化は, アジアでの国での測定結果と一致している。C方面およびK方面からのイソペンタン/ノルマルペンタンの比はこれらの発生源での組成の変化を示唆している。
  • 栗原 幸大, 王 青躍, 桐生 浩希, 坂本 和彦, 三輪 誠, 内山 巌雄
    2007 年 42 巻 6 号 p. 362-368
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    スギ花粉本体の表面に付着しているユービッシュ小体に局在するスギ花粉アレルゲンCry j 1に着目し, 2005年および2006年に都市部および山間部, 道路端で粒径別にCry j 1濃度を測定することで, Cry j 1含有粒子の飛散挙動を調査した。また, 飛散スギ花粉を捕集し, 花粉表面からのユービッシュ小体の剥離や形態変化を観察した。
    調査期間中において, 都市部および山間部でCry j 1が<11μmの微小粒径範囲に高濃度検出され, 下気道へ侵入可能なCry j 1含有粒子の存在が示唆された。また, 両地点において, 花粉からユービッシュ小体が剥離している様子が観察され, Cry j 1の粒径分布と併せて, 下気道へ侵入することによってスギ花粉喘息が引き起こされる可能性を裏付ける結果となった。また, 道路端において<1.1μmにより高濃度のCry j 1が検出されたため, 自動車走行によって地面に沈降した花粉が微小化し, アレルゲン含有粒子が微小粒径へ移行する可能性も示唆された。したがって, 花粉症や花粉喘息の発症, 大気汚染物質が花粉症の症状に与える影響を評価していくために, アレルゲン含有粒子の飛散挙動を把握していくことが重要である。
  • 工藤 慎治, 関口 和彦
    2007 年 42 巻 6 号 p. 369-376
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    粒径0.1μm以下の超微小粒子 (UFP) は, 質量濃度は小さいが, 個数濃度, 表面積では大気中微小粒子のほとんどを占める。また, 肺への沈着率も大きいことから, 従来の浮遊粒子状物質とは異なる健康影響が懸念されている。また, UFPの主要な発生源である自動車排ガスを対象とした道路近傍での大気観測は盛んに行われているが, 鉛直方向に着目した観測は少ない。本研究は, 都市部の高層ビルにおいて, 高度別, 季節別, 粒径別に微小粒子の大気観測を行い, 炭素成分およびイオン成分濃度, 個数濃度変化から, 都市部高層におけるUFP (PM0.1) の大気挙動についてPM25と比較しながら考察を行った。冬季の元素状炭素 (EC) 濃度は, 大気安定からPM2.5では55階よりも6階の方が高い結果となったが, PM0.1では6階と55階の高度による濃度差はみられず, PM0.1の拡散影響が大きいことが示唆された。また, 上下混合の活発な夏季は, PM0.1, PM2.5ともにEC濃度の高度差はなかったが, 有機炭素 (OC) 濃度はともに6階の方が高く, SO42-顧濃度, 個数濃度変化からも, 日中の高い光化学生成の寄与が確認された。
  • 西岡 秀三
    2007 年 42 巻 6 号 p. A61-A68
    発行日: 2007/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top