大気環境学会誌
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43 巻, 6 号
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  • 高橋 克行, 箕浦 宏明, 國見 均, 坂本 和彦
    2008 年 43 巻 6 号 p. 315-322
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東京都心のビル屋上において1994年度から2004年度に粒子状物質とその成分組成の長期定点観測を行った。粒子状物質はPM21-7 (2.1-7μm) とPM21 (<2.1μm) に分級して捕集した。粒子状物質濃度は1990年代後半には横ばいで推移したが, 2000年代にはいると低下傾向がみられた。また, SPM中のPM21含有率の低下も認められた。炭素成分は熱分離法による分析値を熱分離光学補正法の分析値との一次回帰式で補正した。PMの主要成分である炭素成分のうちECは90%がPM21に存在した。ECは1994年に比べて2004年には半減した。また, PM21に対するECの比は1998年以降, 低下傾向にあり, ディーゼル車の長期規制の導入時期と一致した。イオン成分ではSO42-, Cl-, NO3-に季節変動がみられた。高温期はCl-, NO3-のアンモニウム塩の揮発による損失の影響が大きく, 成分濃度を正しく評価することが困難である。そこで, 低温期の観測直に限定して経年変化のトレンドを再評価した。低温期のみの平均濃度の経年変化をみると, Cl-に低下傾向がみられた。これはダイオキシン嫌のために行った, 廃棄物焼却炉の規制により, Cl-の排出量が低下したためと考えられた。東京のPM濃度の低下はこれらの規制の効果によるものと推察された。
  • 秋山 幸雄, 欅田 尚樹, 加藤 貴彦, 内山 巌雄, 山野 優子, 嵐谷 奎一
    2008 年 43 巻 6 号 p. 323-331
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    特定建築物の環境調査の一環として、美術館・博物館内の化学物質 (揮発性有機化合物 (VOCs), 二酸化窒素, アルデヒド類) 及び物理的因子の計測を実施し、室内空気汚染状況を把握するとともに、従業員の個人曝露濃度の測定を実施した。
    美術館と博物館で測定対象とした化学物質, 物理的因子ともに問題となる値は認められなかった。これは特定建築物においては, 以前から強制換気や定期環境測定が導入されており, また, 化学物質の含有が少ない建材の使用等の結果として良好な環境が維特されているためと考えられた。
  • 沈着速度推計法の更新
    松田 和秀
    2008 年 43 巻 6 号 p. 332-339
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東アジアにおける最近のフィールド研究から得られた知見を基にして, 硫黄および窒素化合物の乾性沈着を推計するための沈着速度 (Vd) 推計法を構築した。推計法を構築するにあたり, 特に, SO2とNH3の湿潤表面への取り込み促進効果, 粒子成分の森林へのVd推計法に留意し改良を行った。さらに, これらの改良に伴い空気力学的抵抗 (Ra) の推計精度がVdの推計精度に与える影響が相対的に大きくなることを考慮して, Ra推計法の精緻化を行った。Raの最も重要な要素である摩擦速度 (u*) の推計法に関し, 超音波風速計による測定から得られた微気象データを用いて検証を行った結果, u*推計法は大気安定度が異なる昼夜間別に推計しても測定値を良く再現することができた。構築した沈着速度推計法の評価のため, 森林および草地に対し, 国内の遠隔域に位置する利尻佐渡関岬, 梼原, 辺戸岬において, 2004年4月1日から2005年3月31日の1年間の沈着速度を推計した。その結果, SO2とNH3の湿潤表面への取り込み促進効果が再現されており, かつ, 森林で推計された粒子成分のVdがより実測直 (文献値) に近いレベルになったことが確認された。Vd年平均値の地点間差とガス状成分間の季節変動の相違を解析した結果, HNO3はRa+Rb, SO2はRa+RbとRc, NH3はRcにそれぞれ大きく依存していることが分かった。
  • インパクタ法の問題点と対策
    小暮 信之, 酒井 茂克, 田森 行男
    2008 年 43 巻 6 号 p. 340-353
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    我が国において大気中微粒子 (PM10/PM2.5) の対策を推進するためには, 様々な固定発生源においてPM10/PM2.5の排出特性について各種の調査を行う必要がある。このため, 適確な発生源PM10/PM2.5測定法を開発し, 早期に標準化を行うことは極めて重要である。本報では, ドラフト段階にあるISO 23210の低濃度測定用に分類されているインパクタ法を取り上げ, PM10/PM2.5測定上の問題点と対策について, 試験粒子により実験的に検証した。
    一連の実験と検討の結果から得られた主な知見は, 以下の通りである。
    1) ISOのインパクタ法では, ストレートノズルの2段式インパクタが前提であるが, 我が国の現場においては一般に測定孔が小さいため挿入することが困難であることを考慮して, 90°ベンドノズルの2段式インパクタについて検討した。ダクト内流速約11.5m/s, 粒子濃度約22mg/m3Nの場合, 内径φ6mmの90°ベンドノズル内には, 全捕集粒子量の約30%の付着粒子が生じた。この付着粒子を無視すると, 濃度測定値は大幅に減少するが, 粒径分布測定結果 (平均径と曲線) にはほとんど影響がなかった。一方, PM10/PM2.5測定値では, ストレートノズルの場合と比較して, いずれも約23%低く評価することが分かった。
    2) 付着粒子の補正が必要な場合, 吸引ノズルを取り外してノズル全体を秤量した後に粒子を回収し, 粒径分布を求めて各測定値の修正を行うことにより, 濃度, 粒径分布及びPM10/PM2.5も補正可能である。また, 本実験に用いた乾燥粒子や付着性が低い粒子の場合, 瞬間的エアパージによる付着粒子の回収は, 極めて容易でかっ有効である。
    3) 一般に, インパクタ法において分級段数が増えれば, 全捕集粒子量は分割される結果、各段で粒子再飛散の量は減少する。実験では, ISO法の2段式インパクタのPM10-2.5分級部からかなり多量の粒子再飛散が生じたが, 中間にPM10-5.0分級部を追加した3段式インパクタでは, 大幅に粒子再飛散が防止できた。また, 捕集板用のろ紙としては, 高温ガス測定や化学分析も可能で, 表面の凹凸が粗い石英繊維製ろ紙が最適である。
    4) PM10-2.5の捕集粒子量の限界値は, PM10-2.5の物性 (特に, 分布幅や個数濃度あるいは付着性) や排ガスの性状などによっても異なるため, ISO法のように一律で限界値を定めることは困難である。したがって, 分級段数を増やして粒子の再飛散を抑えるなどの対応が必要と考えられる。
  • 大気環境学会シンポジウム報告
    横田
    2008 年 43 巻 6 号 p. 354-359
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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