1998年以降の厳しい排出ガス規制に適合したガソリン車10台について,排出ガスに含まれる規制物質(3種)および未規制物質(21種)の排出傾向を考察した。
コールドモード試験について,規制物質であるTHC排出量と未規制物質との関係を見ると,ベンゼンやトルエン,キシレン類において
r ≥ 0.9 (
n = 45,
p ‹ 0.01)の高い相関があった。ホットモード試験では多くの未規制物質が排出されていなかった。ただし,EGR制御を持つ希薄燃焼型の乗用車1台は,S.S. 80 km/hの高速度走行においてベンゼン環を持つ物質の排出量が特異的に高かった。原因として,高速度の定常走行ではEGR率が高くなるために不完全燃焼生成物が多く,触媒では浄化され難いベンゼン環を有する物質の排出量が高かったと推測した。
11モードの排出ガスを1サイクル目,2サイクル目,3+4サイクル目に分割して測定したところ,CO
2とNH
3以外の測定物質は初めの1サイクル目で走行モード全体の74%以上が排出された。従って,始動直後から触媒が活性温度に暖機されるまで,約120秒間の排出ガス低減対策が特に重要である。
ホットスタートの法定試験モードである10・15モードとJC08モードについて,排出量を比較したところ,多くの物質においてJC08モードの排出量が多かった。特に,PAHsは10・15モードでは不検出でもJC08モードでは検出できた。加減速が実走行に近い場合,燃焼制御が難しいために未燃燃料あるいは燃料由来の燃焼反応生成物のような不完全燃焼生成物が多くなると推測した。不完全燃焼生成物のうち,アルデヒド類などは触媒で浄化され易いが,ベンゼンやPAHsは浄化され難いため,不検出になるレベルまで低減できなかったと考える。
本試験のガソリン車から排出された地球温暖化物質のうち,温室効果ガス排出量に占める寄与率が最も高い物質はCO
2(94 ~ 100%,平均99%,SD ± 1.3)で,温室効果ガスの排出を削減するためには燃費改善によるCO
2排出量の低減が最も効果的であることを示した。
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