大気環境学会誌
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44 巻, 3 号
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あおぞら
総説
  • 村野 健太郎
    2009 年 44 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2009/05/10
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    これまで行ってきたエアロゾル、酸性霧、酸性雨、アンモニア、越境大気汚染研究について概説した。吸引流量が大きいテープエアサンプラーとイオンクロマトグラフィーの導入により東京首都圏地域上空で、約5分間の時間分解能で硫酸塩や硝酸塩の分布を測定することが出来た。東京首都圏地域からの大気汚染物質の流入地帯である北関東の赤城山で、酸性霧の研究を開始し、低pH、高硝酸イオン濃度の酸性霧の存在を明らかにした。越境大気汚染問題は大気汚染物質観測、酸性雨長距離輸送モデル、大気汚染物質発生源インベントリーの3者の連携が必須であると考え、3者の研究を連携させて行ってきた。酸性雨自動IC分析装置を開発し、三宅島の噴火に基づく強酸性雨を解析した。アンモニア研究の重要性を指摘し、アンモニアの日本、韓国におけるグリッド別アンモニア発生量マップを作成した。さらに、アンモニアの広域分布に関する研究を進めている。
原著
  • 佐々木 寛介, 木下 輝昭, 石井 康一郎, 坂本 和彦
    2009 年 44 巻 3 号 p. 136-146
    発行日: 2009/05/10
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    関東地方における成分別VOC濃度の測定結果から、季節別のVOC組成の特徴を整理するとともに、CMB (Chemical Mass Balance) 法による発生源別寄与の解析を行った。解析には、2004年から2005年にかけて5地点において季節別にキャニスター法により5サンプルを採取し、63成分のVOCを定量した結果を用いた。関東地方で測定されたVOC成分の総和は、春季および夏季に低く、秋季および冬季に高かった。VOC組成に着目した場合、夏季は炭素数が4-5の脂肪族炭化水素の割合が高く、冬季は炭素数3以下の低級炭化水素の割合が高かった。
    CMB法による発生源別の寄与を解析したところ、春季および夏季はガソリン自動車排ガスの寄与が大きかったほか、夏季については一部地点ではガソリン蒸気の寄与の増大がみられた。冬季については、LPガスの寄与が顕著に増加した。VOCの発生源別寄与を関西地域と比較した場合、関東ではLPガスと塗料の寄与が高いことが特徴であった。前者は関東地域の方が都市ガス普及率が低く、LPガス供給量が多いこと、後者は統計資料等から推定される塗料起源のVOC排出量が関西地域よりも大きいことを反映した結果と考えられた。また、海外の都市における発生源別寄与と比較しところ、東京においては、塗料からの寄与が大きいことが明らかとなった。
  • ― プルーム上昇・拡散モデルの開発 ―
    道岡 武信, 佐藤 歩, 佐田 幸一, 下田 昭郎, 市川 陽一
    2009 年 44 巻 3 号 p. 147-154
    発行日: 2009/05/10
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    機械通風式冷却塔の建屋形状や複数ファンの配列がプルーム上昇および拡散幅に及ぼす影響を風洞実験により検討した。単一のファンを想定した拡散実験により,冷却塔の建屋長さ・高さがプルーム上昇,水平方向および鉛直方向拡散幅に及ぼす影響は非常に小さいことが明らかになった。また,複数ファンを有する冷却塔の拡散実験より,プルーム上昇高さは,冷却塔ファン数および風向に強く依存することがわかった。風向が冷却塔の長手方向に平行の場合,ファン数が増加するほどプルーム上昇高さは大きくなるが,風向が垂直の場合,ファン数とともにプルーム上昇高さはあまり大きくならない。また,鉛直および水平方向拡散幅はプルーム上昇高さとは異なり,ファンの配列よりも冷却塔ファンの個数に強く依存する。
    風洞実験結果を基に機械通風式冷却塔白煙に適用可能なプルーム上昇モデルおよび拡散幅モデルの開発を行った。また,既存モデル(FOGモデル)および開発モデル式の精度を検討するために,風洞実験値と比較した。その結果,既存モデルはファン配置や個数を考慮することができず,上記現象を再現できない。それに対して,ファン配置や個数を考慮できる本開発モデルは,プルーム上昇高さおよび拡散幅の風洞実験値を良好に再現することができた。
技術調査報告
  • 溝口 俊明, 川崎 清人, 清水 厚, 佐竹 洋
    2009 年 44 巻 3 号 p. 155-165
    発行日: 2009/05/10
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    東アジアからの影響を受けやすい地域である富山県において2006年1月から12月までの1年間,4段ろ紙法による1日ごとの連続測定を行った。高濃度SPMが発生した4月の黄砂日は,黄砂の指標の一つである非海塩性カルシウムイオン濃度の上昇が見られ,ライダーのデータから非球形粒子が飛来していることが観測された。また6月の煙霧日はエアロゾルの成分比から硫酸アンモニウム粒子が原因物質と考えられ,ライダーのデータからは球形の粒子が飛来していることが観測された。煙霧日の後退流跡線解析を行った結果,大陸からの影響も示唆されたが一部については国内からの影響を受けている日も存在した。水溶性エアロゾル成分濃度とライダーの消散係数を用いることで,気象台の発表した黄砂日や煙霧日の他にも,黄砂や煙霧の影響を受けている日が存在することがわかった。
  • 石川 紫, 唐牛 聖文, 竹内 庸夫, 蓑毛 康太郎, 大塚 宜寿, 野尻 喜好, 柳沢 幸雄
    2009 年 44 巻 3 号 p. 166-173
    発行日: 2009/05/10
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    砂型鋳造作業場内において,アルデヒド・ケトン類,フェノールを含む82種の揮発性有機化合物(VOC), 4種の硫黄系化合物,16種の多環芳香族炭化水素類(PAH),148種のダイオキシン類の計250化合物の一斉分析を行い,作業場内における化学物質濃度を求めるとともに,作業工程による化学物質組成の変化について考察した.結果として,18~84ppbのアルデヒド類,9.5~25ppbのケトン類,0.59~0.91ppbのフェノール,120~270ppbのその他のVOC,11~35ppbの硫化水素,0.017~0.022ppbのPAHが作業場内空気から検出された.ダイオキシン類の明らかな生成は認められなかった.
    鋳型造型工程,注湯後凝固/冷却工程ならびに型ばらし工程の工程間濃度を比較したところ,概して,注湯後凝固/冷却工程における濃度が最も高く,本工程が化学物質を最も放出する工程であることが示唆された.また,注湯の前後では,空気中に含まれる化学物質の組成に変化が見られ,臭いの強さを表す閾希釈倍数の増加も確認された.また,作業場内臭気は,多数の化合物に因る複合臭ではなく,硫化水素,ならびにアセトアルデヒドなど,数種の限られた物質に大きく因る臭気であることが示唆された.
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