砂型鋳造作業場内において,アルデヒド・ケトン類,フェノールを含む82種の揮発性有機化合物(VOC), 4種の硫黄系化合物,16種の多環芳香族炭化水素類(PAH),148種のダイオキシン類の計250化合物の一斉分析を行い,作業場内における化学物質濃度を求めるとともに,作業工程による化学物質組成の変化について考察した.結果として,18~84ppbのアルデヒド類,9.5~25ppbのケトン類,0.59~0.91ppbのフェノール,120~270ppbのその他のVOC,11~35ppbの硫化水素,0.017~0.022ppbのPAHが作業場内空気から検出された.ダイオキシン類の明らかな生成は認められなかった.
鋳型造型工程,注湯後凝固/冷却工程ならびに型ばらし工程の工程間濃度を比較したところ,概して,注湯後凝固/冷却工程における濃度が最も高く,本工程が化学物質を最も放出する工程であることが示唆された.また,注湯の前後では,空気中に含まれる化学物質の組成に変化が見られ,臭いの強さを表す閾希釈倍数の増加も確認された.また,作業場内臭気は,多数の化合物に因る複合臭ではなく,硫化水素,ならびにアセトアルデヒドなど,数種の限られた物質に大きく因る臭気であることが示唆された.
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